35「シエルとの食事」
もはや月一投稿…。
頑張って投稿ペース上げよう…。
「銀狼族の生き残り…?」
「はい」
銀狼族…何処かで見た事があるぞ…確か母様の書籍で見た本であったな。
銀狼族は高い所を好み、そこを集落にしてるとか…そして、銀狼族の異名が確か『ドラゴンキラー』、その理由が、高い所を好む銀狼族にとって、山などを巣にするドラゴンは一番の好敵手と言える。
それを狩り続けた結果についた異名だとか。
けれど、そんなある日、銀狼族は突然とこの世界から姿を消したんだ。
理由などは一切わからないそうだ…。
「銀狼族って絶滅したんじゃなかったの?」
もっとオブラートに包めれば良かったんだけど、俺には残念ながらそんなスキルは持ち合わせていない、本当すみません。
すると、シエルは顔を下に向き、暗い面持ちになる。
「いいえ…絶滅したんじゃありません、ボク達は…『奴隷』にされたんです…」
「…」
俺の無神経な問いに答えてくれたシエルの顔は、憎悪に満ちていた。
薄々わかってはいた。
そもそも、そんな一族が跡形もなく姿を消した時点で気づくべきなのだ。
銀狼族は絶滅したんじゃない。
奴隷にされたんだと、それもただのって訳じゃないだろう。
銀狼族程レアな亜人はそうそう居ない。
珍しい奴隷を集めてコレクションする、奴隷コレクターと言うのがいるのだ。
きっとそいつらに相当な高値で売り飛ばしているんだろう。
そしてその情報が隠蔽され、絶滅されたとしているんだろう。
酷い話だ…胸くそ悪くなる。
「ボクは…奴隷として買われて…そいつに…殴られ…叩かれ…て…パパも…ママも…」
…なぁ、こんな苦しそうな顔をさせる奴って、どういう顔してるんだろうな?悲しそうな顔してんのか?同情してんのか?違うよな…そいつはきっと、笑ってるよな?
俺はさ、そう言う奴が大っ嫌いなんだよ。
嫌いで嫌いで仕方がない。
人の不幸を笑って、蔑む。
そんな奴が、生きてていいのか?
そいつになにがあろうと…
…もう関係ねぇよ、そいつを、俺がーー
「あの…」
「あ…な、なにかな?」
「えと…その…怖い顔…してたので…」
あ、あぁ…顔に出てたか…いけないいけない!今は優先順位が違うだろ俺!
「ねぇシエル」
「…?」
「お腹、空かない?」
今はシエルを笑わせる事が先だ。
「すき…ます」
「そっか!私の予想だとそろそろーー」
すると、扉が開いた。
「アル、買ってきたぞ!」
ツェルトがうきうきと沢山の食べ物を両手に抱えて入ってきた。
えっと…確か俺のリクエストは、お手軽に食べられる物、だったよな?
「あの…あの人は…?」
「あの人は、まぁ私の旅の仲間かな?
とりあえず、ツェルト、ちょっと聞きたいんですけど」
「なんだ!?」
「その食べ物の量なのですが…」
俺がぷるぷると震えながら指差す。
「これか!?美味しそうだろう!このジューシーそうなお肉!これはな、キングスネークを焼き、じっくりとタレにつけた物だそうだ!あの店主…私の見立てだと相当な腕だろう!他にもーー」
「ストップ!一つ聞きたいんですけど」
「なんだ?」
「それ、全部でいくら?」
「ん?確かーー」
次に放たれた、ツェルトの言葉に…いや正確には金額に俺は思った、 もう、ツェルト一人に買い物はさせまいと。
「ツェルトオオオオオオオオ!!」
俺の怒声が宿屋に響き渡った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄
 ̄
ツェルトへの説教も終わり、皆でご飯にすることにした。
実は、あれからかなり時間が経っており、お腹がペコペコなのである。
「さぁ、ご飯にしましょう、ツェルト、いつまでいじけているのですか?」
俺は部屋の隅でくるまっている英雄様に言う。
本当にあれが英雄と歌われたツェルトなのだろうか…別人の可能性が出てきたぞ。
「べっつに~私は気にしていないが、そこまで怒らなくても…」
「めちゃくちゃ気にしてるじゃないですか…はぁ…私も言い過ぎました、今度ツェルトの好きなものを買いましょう」
「しょうがないなー!」
おい…この英雄様思った以上のチョロインだぞ…だが、チョロインなツェルトはいつもと違う美しさ、ではなく可愛さがあるな。
さて、もう一人ーー
「そこの、もじもじしてるお嬢ちゃん、こっちおいで?」
「ふぁ、ふぁい!」
…緊張しすぎでしょ…まぁ、でもこれまでの生活を考えればそうなるのも仕方ない事かも知れない。
俺は、優しく頬笑みかける。
「こっちでご飯食べよ?」
「で、でも…ボクなんかが…」
不安で仕方ない、そう答えるかの様な声音でシエルは震えていた。
ちゃんと、この子には伝えなきゃ駄目だ。
不安に何かさせちゃいけない。
「シエル、今はそんか事気にしなくていいよ?
ただ私がシエルと一緒に、ご飯を食べたいだけなんだからさ」
ね?と目で訴えると、シエルは目を丸くした後、ゆっくりとこちらに歩み寄り、丸椅子に座った。
「それじゃ、いただきます」
俺が手を合わせてそう言うと、ツェルトはもう既に食べ物に手を伸ばしていた。
俺は、まだ食べずに、シエルを見詰める。
手をゆっくりと動かし、シエルは一つの肉をフォークで刺した。
その手は震えていた。
そして、口に入れ、ゆっくりと、一回一回噛み締めていた。
今は、食べてくれ。
食べて、食べて、そしてまた笑ってくれればいい。
だから…今は、存分にーー
「うっ…ぐす…おい…しい…です…」
泣いていいんだ。
そして、俺もゆっくりと食事を始めたのだった。
今回、ツェルトとの仲直り中の為、プチ劇場が出来ません。
(決して思い付かない訳じゃないです)