31「ギルドマスター」
「ちょ、はい!?な、なにこれ!?」
俺が驚愕していると、周りの人達の視線が刺さった。
するとミシェルさんは「お騒がせしてすみませーん!なんでもありませんので」と言ってフォローを加える。
そして小声になり。
「なんで貴女も驚いているんですか!?」
「いやだって私自身知りませんでしたし…て言うか何ですかこのチート満載のステータス!魔力に関しては桁がおかしいでしょ!?」
つられて俺も小声で今の気持ちを伝える。
いや正直今なにより俺が一番驚いてるからね?
だって父様のレベルを越えている訳だよ?
「私に言われましても…」
あ、そうですね、なんかごめんなさい。
「えっと、アルトリア=シューレルさん、貴女をこのまま返す訳には行かなくなってしまいました」
えぇ…マジデェ…いやこれもテンプレだけどさ!
ステータスを見れるのここだけじゃないですか…テンプレへの備えが難しい訳でして…ステータスを知る手段があれば偽造の一つや二つ…あ、そもそも俺にそんな細かい芸道出来ないか。
はぁ…仕方ない、ここは冷静かつ慎重に言葉を選んで行こう。
「そうですか、では私はどうしたらいいですか?」
「こちらでは対応しかねます、のでギルドマスターに会って頂きます」
なん…だと…?
ふふふ…来たな王道展開、察しのいいアルたんにはお分かりですよ。
ほとんどのギルドマスターの見た目と言うのは、見た目からしてヤバそうなおっさんか見た目若き青年で底知れぬ闇がありそうな人のどっちかだろう。
事前に知っていれば殺気とか怯まずに対応出来そうな気がする。
「わかりました」
「では着いてきてください」
俺は言われるがまま従順なアルたんになりミシェルさんの後を子犬の様について行く。
ふむ…女神とならそう言うプレイをしてみた…なんでもないです。
「ここです」
そんな事を考えているといつの間にか着いていたらしい。
するとミシェルさんは目の前にある扉をコンコンと、ノックする。
「はいってー」
扉の向こうからとても可愛らしい声がした。
ん…?可愛らしい声…?
そして、扉が開かれた先にいたのはーー
「アルトリアさん、この方がここのギルドマスター、リニアさんです」
「そう!この僕ちゃんがここのギルドマスターリニアちゃんだよー?」
どこからどう見ても絶世の美幼女だった。
海色に光る少し伸びた髪の毛、くりっとした瞳、天真爛漫な笑み…
流石のアルたんもこれは予想外。
「それでそれでミシェルちゃ~ん、そこの可愛い子ちゃんは誰かな誰かな!?」
「こちら、今日ギルドに冒険者登録をしに来た、アルトリア=シューレルさんです。
そこで少々リニアさんにお見せしたいものが」
「ふむふむ?それでお見せしたいものは?」
「これです」
ミシェルさんは先程共に驚愕した俺のギルドカードをギルマス幼女に渡す。
それを、むむむ、と見ているギルマス幼女。
幼女のむむむ顔って可愛いよね。
そんな光景に俺が微笑んでいるとギルマスはカードから目を離し、こちらに視線を向けた。
「なるほどねぇ…だから僕ちゃんの所に来た訳だ、確かにこれは見過ごせないね~」
え、なに?そんなにヤバイの俺のステータス?
いやま確かに見た感じクソチートでしたけども。
「どうしますか?リニアさん」
「そだね~とりあけずCランクくらいに止めれば少し注目される程度で済むんじゃない?」
「それが妥当ですね」
なに?ランク?
「あの~…ランクとは?」
俺が問い掛けると、ギルマス幼女はミシェルさんに「説明してなかったの?」と言うとミシェルさんは苦笑いを浮かべながら「すぐに報告せねばと思いまして…」と言うと納得した様な顔になりこちらに向き直す。
「それじゃこれならランクについて説明するね、そこに座って」
俺は言われるがまま指差されたソファにお尻を預けた。
どうだこの内股座り、今の俺は男っぽい行動などとれる隙がないぜ。
この十年伊達に女の子やってないのですよ。
ギルマス幼女…いいやもう名前で。
リニアさんはランクについて説明してくれた。
冒険者には『ランク』と言う物があり、簡単に言うと実力を示すものらしい。
ランクには、E~S、とある。
E「ぺーぺークソよわ」
D「まぁそこそこかな」
C「アマチュア卒業おめでとう」
B「プロの冒険者」
A「強すぎワロタwww」
S「人間卒業おめでとう」
簡単に言うとこんな感じだな。
ん?てことは父様は人間卒業してるのか?それじゃ父様に勝ってしまった俺は一体…。
ちなみに、この冒険者ランクを上げるにはランクに見あった依頼をこなしていけばいいらしい。
ランクが高い依頼ほど報酬はいいとかなんとか。
異世界物あるあるすぎて説明が雑になってしまったが、気にしないでくれ。
そして、俺のランクはどうやらCから始まるらしい。
二ランクもスキップしてしまった。
なんかずるしてる気分になるな。
「さて、それじゃ説明も終わった事だし、アルトリアちゃん、君にどうしても聞きたい事があるんだけど」
「はい?」
「このさ【竜殺し】って言う称号があるんだけど…」
「……」
「それにこの【金髪碧眼の魔術師】って異名…ただの噂だと思ってたんだけど、もしかして五年前、ドラゴンをたった一人で討伐したのっては君かな?」
…ふむ、どうしよう。
これ正直に言って大丈夫かな?
てかもう五年前の話だってのによく覚えてるなこの人、それともなに?世間を騒がせちゃうレベルの有名人なの俺は。
てか…ここまで情報が揃ってて隠すのとか無理だな、仕方ないここはさらっと言うに限る。
「そうでしゅよ!?」
…違う、俺は断じて大事な時に噛むようおっちょこちょい系ヒロインなどでは断じてない。
だからお願い、そんな冷たい視線を俺に向けないで、泣いちゃう。
俺が両手で顔を覆って自己嫌悪に陥っていると、リニアは話を続ける。
「なるほどねぇ…それでこのレベル…納得言ったよ…それにしてもあの噂本当だったのかぁ…君、よくドラゴンなんて化け物に立ち向かおうと思ったね」
(Sランク冒険者がいてやっと勝てる様な相手なのに…)
「いやまぁ若気のいたりと言いますか…なんと言いますか…村の危機でしたしね…はは…はぁ…」
噛んだことを未だに拭えていない俺、これもうこの人達の顔を見る度思い出しそうなんだけど。
「そっか、まぁ隠蔽工作とかこっちでやっとくから、もう帰っても大丈夫だよ、とりあえずCランクでギルドカードの登録もしたから、はいこれ」
「ありがとうございます」
「それじゃ、なにかあったらまた呼ぶかもだから、じゃね~」
リニアさんはそう言うと手を振りながら俺を見送った。
そのまま俺はギルドの外へ。
随分とキャラが濃い人だった…。
色々やらかしてしまったな…恥ずかしい。
穴があったら入る所か永眠したい。
スムーズな対応は何処へ…イメトレの意味がまったくなかったな。
もう過ぎたことを考えても仕方ない、優先順位的には…
「よし、宿をとろう」
『そうだな、宿をとり私も早く人体になりたいぞ』
「うわぁ!?急に喋んないでくださいよツェルト!ビックリするじゃないですか!」
『いや、アルに忘れられている気がしていたのでな、一応声をかけとこうと』
「な、なるほど」
やべ、本当に忘れてた。
俺英雄様を蔑ろにしすぎだな。
宿に行ったら色々これからの事を決めていかないとな。
よし、気をとり直して行こう!
「夢の冒険者ライフの幕開けです!」
今日も一日がんばるぞい!
更新が遅くなってしまいすみません…もっと更新頻度を上げたい…
早く新ヒロインも登場させたいのに!!!そんなこんなで次回もよろしくお願いします。
次回は新ヒロイン登場!(予定)