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28「旅立ち」

「えっと他に持っていく物は…」


俺は予め用意していたバックに着替えやらを詰め込み、重要な物を確認する。

よし、忘れ物はないな、準備万端。


『アル、私を忘れるでないぞ?』


「おっと、そうでした」


『忘れかけていたな…」


だ、だってわかりにくい場所にあるもんだから…っと、よし、ツェルトを腰に刺して、と。


「それじゃあ行きましょうか」


『あぁ』


ツェルトと共に俺は階段を降りる。

朝の空気が体に吸い付く、とても目覚めがいい。


俺は玄関まで行き、靴を履く。

長持ちする様に俺のお手製の靴である。

なかなかの自信作、これ靴屋営んでいけるレベルだと自負している。


「よし!」


靴の紐を結び終える。


「それじゃ、行ってきます」


俺は、最後の挨拶をした。

次に帰ってくるときは、ただいま、を。

成長した俺を見せに絶対に帰ってくるから、それまでこの家とはお別れだ。


扉を開け、踏み出す。

村の入り口の方へ、足を進ませると、そこには皆の姿があった。


「皆さん…」


皆が俺に手を振り、名前を呼んでくれる。

すると、父様と母様がこちらに近寄り、母様は何かを俺に被せてきた。


「うん…よく似合ってるわよアル」


「帽子…ですか?」


母様がくれたのは、黒くデカイ帽子。

よく魔女が被っていそうな感じの、赤いリボンが巻き付いた可愛い奴だ。


「そう、アルは凄い魔術師だもの、立派な帽子をあげなくちゃね」


「母様…ありがとうございます…大切にします…」


俺は帽子をぎゅっと握る。

絶対に、絶対に離さない、ずっと大切にする。

ありがとう…母様。


「それじゃ俺からはこれだ」


父様は俺に一つの袋を渡してきた。

その中を確認すると、そこにはこの世界のお金が沢山入っていた。


なにこれ?なんでこんなに入ってんの?これ一つくらい家建てれそうじゃね?いや言い過ぎか。


その量に俺は驚愕しながら父様を見詰めていると、父様はニコりと笑い答える。


「それは、お前がドラゴンを倒した時の皆からの礼だ、この時までとっておいたんだよ」


…なるほど…この期に及んでまだ俺を泣かせる要素を詰め込んでくるとかもうマジで…あぁ…泣く…。


「ありがとう…ございます!」


つり上がる口が収まらない、涙がまた一つ溢れる。

そして、最後に、ミーニャが俺の元へやってきた。


「アルちゃん」


「ミーニャ…これで一度、お別れだね」


「うん…アルちゃん、これあげるね」


すると、ミーニャは何かを取りだし、それを俺の首もとにつける。

これはネックレス…?


「それはね、私の手作りなの!

アルちゃんの為に作ったんだ」


「そっか…」


本当に…本当にありがとう…。

君に会えて、君と話せて、本当に俺は幸せだよ。

だから、最後に…いや違う、再会の前に、一つだけ言わせてほしい。


「ミーニャ、大好きだよ」


「私も、アルちゃんの事大好き…!」


俺とミーニャは笑いあった。

枯れ果てることのない涙を流し、俺は一歩を踏み出した。


予定の馬車に乗る。

そして、皆に顔を向け、涙を拭った。


「皆さん、本当にお世話になりました!

絶対に…帰ってきますから…また会いましょう!」


最後にそう言うと、馬車は進んで行く。

進んで行く度に、皆の顔が段々と見えなくなる。


その瞬間、とてつもない悲しみに襲われた。

会いたい、離れたくない、ずっと一緒にいたい。

でも、それよりも、笑顔で送ってくれた皆の顔が浮かぶ。


アルトリア、もう前向け、前を向いて進め。

今からがお前の夢の第一歩だ。

この世界に生まれたことを、後悔せずに生きる為のお前の物語の始まりだ。


「行こう、王都へ」


そして俺は、この光で満ち溢れている世界へ踏み出した。


そう、この世界は光しかない。

皆が皆、優しく輝いている。

さぁ冒険をしよう、光しかないこの世界で、夢を歩こう。


アルトリア=シューレル、十歳。

今、夢を叶えに旅立った。

第一章「TS幼女編」完結です。

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