表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/41

25「今は泣こう」

皆さんごきげんよう、アルたんよ。

話し方が何かおかしいですって?うふふ。

せっかく十歳になる寸前なのですから、淑女としての振る舞いを今後大切に…


ダメだ、違和感しかねぇ…やっぱ普段通りで行こう。


てことで、アルたん十歳だよ。

見た目も少し変わりました。


見てくださいこの長く美しい髪!

パッチリとしたお目め!成長しきっていないがそそるこのボデェ!今ならなんと!三千九百八十円!


…自分で言っときながら俺安いな。

まぁ俺の商品紹介は置いといて、そう俺は十歳になる。


十歳間近、つまり、俺が後もう少しで冒険に出る日まで遠くないと言う訳だ。

俺がロマンを求めて旅立つまで近い。


冒険者になるのは夢だし、すげぇ楽しみだけど、ここで一つ問題が生じる。

それは『女神ミーニャ』のことだ。


正直に言うが…ミーニャと離れたくない。

もうミーニャが可愛すぎて俺どうすればいいかわからない。

最近のミーニャは、俺への依存がたぶんだがかなり激しい…と思う。

俺は勿論の如くウェルカムなんだが、もし俺が冒険者になると行ったら泣かれそうで怖い…俺ミーニャの涙は正直エクスかリバー以上の威力があると思うし、何処かの騎士王さんも驚きなレベルに。


けど、ミーニャを連れて行く訳には行かないのだ。

そんな無責任な事は出来ない、これは俺のただの我が儘なのだから。


だから今日、俺はミーニャにこの事を話そうと思う。


けど…


「アルちゃ~ん♡」


今、ミーニャは前から俺に抱きつきながら座り、向き合っていると言う体制である。

明らかに距離感がおかしい。


くっ…どうやって切り出そう…。


ミーニャは成長するにつれて、俺への甘えが激しくなった。

隙あらば抱きつき、隙あらばキス。

これがもはや日常になっていた。

俺自身すごく嬉しい訳だが…デュフフ…おっと、すまない、少し脱線しかけたな。


さて…言わなきゃな。

ミーニャの反応がどうなるか、それが勝負のわけ目と言った所か、よし覚悟を決めろアル!!


「ミーニャ、話があるんだ」


「ん、どうしたの?」


「えと…その…」


覚悟を決めて、俺は言う。


「実は私、十歳になったらこの村を出て冒険者になるんだ」


言ったぞ…言っちゃったぞ…さぁ…ミーニャの反応は…?


「やっと言ってくれたね、アルちゃん」


「へ…?」


そこには、泣いているミーニャなどいなく、優しく微笑んでいるミーニャがいた。


「私ね、知ってた」


「どういうこと…?」


「アルちゃんのパパが言ってたの…それを聞いたのは八歳の時かな…」


ミーニャは少し声のトーンを下げて言うと、俺から離れて目の前で女の子座りをしながら下を向く。


ミーニャはこのことを知っていたんだな…それならどうして…どうして…


「…どうして、ミーニャは笑えるの…?

私はミーニャと離ればなれになるって言うだけでもう涙が出そうだよ」


冗談っぽく俺は笑う。

冗談でなく本当に泣きそうだけどな。

すると、ミーニャは俯いていた顔を上げ、俺を真っ直ぐ見る。


その目を見るとミーニャは…泣いていた。


「仕方ないじゃん…アルちゃんが選んだ道だもん…私が邪魔出来る訳ないよ…私の勝手な気持ちを優先なんて出来ないよ…」


けど、ミーニャはすぐに視線をそらし、無理に笑いながら言葉を続ける。


「…寂しいよ…もう何回泣いたかわからかいよ…でも…でもアルちゃんの夢だってそう言うなら私は…わた…し…は…うっ…ひっく…嫌だよ…嫌なんだよ…?私はアルちゃんお離れるなんて…でも…でも!」


ミーニャの感情の波は激しく揺れる。

そして、ミーニャはこちらに笑い、言葉を再び続ける。


「最後は笑って見送るから、絶対に笑って見せるから…だから今だけは…泣いても…うっ…ひっく…うわああああん!」


そしてとうとうミーニャの募りに募ってきた感情の波が一気に押し寄せてきて、爆発した。

俺はそれに対して、ただミーニャを抱き締めた。


ミーニャが一緒につれてって、と言うと思っていたが、ミーニャは自分で気付いてたんだな…。

俺がまだ、ミーニャを守れる程の実力も責任も、背負えないってことを。


なんだよ…ミーニャって俺が思ってた以上に大人じゃんかよ…。


「っ…!」


俺は涙を抑えきれなかった。

いや、抑える必要なんてない、今は泣こう、泣いて、泣き喚いて、ちゃんと大人になろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ