24「後もう少しで」
あの後、説明するのが大変だった。
とりあえずツェルトは親戚のお姉さんで、俺とは何もないと説明した。
付け加えると、ツェルトの事は秘密にしてくれとミーニャに頼んだ。
バレると後からめんどくさそうだからねぇ。
時間が経つにつれミーニャはツェルトの事をお姉ちゃんと慕い始め、俺が嫉妬に燃える事になるとは思っても見なかったが。
クソ…ネトラレた気分だ。
そんな日々をおくり、平凡で楽しい日常は過ぎて行った。
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俺は毎日毎日、ツェルトの特訓を受けていた。
特訓にも、もう慣れ初め、かなりの実力をつけたと実感した日、俺は覚悟を持って言った。
「父様、私と本気の剣で戦ってくれませんか?」
ついに、父様に宣戦布告をした。
父様は俺との模擬戦で本気を出したことがない。
それは父様の剣を見ていればわかる。
だからこそ、俺は父様に勝たなくてはならない。
そんな俺の覚悟が伝わったのか、父様は俺の申し出を受けてくれた。
俺は真っ直ぐと父様に木剣を構えた。
「アル、いいのか?今まで、お前の剣の成長具合を見ていたが…ハッキリ言おう、お前には剣の才能はない」
「自分で鍛えてくれるとか言っといて随分と勝手ですね」
「すまんな…いつ言うべきかわからなくてな…」
「そうですか、まぁ御託はいいので、初めましょうか」
「本当にいいんだな?」
「えぇ」
「…わかった」
くくく…父様すっかり騙されてらぁ。
実は、俺は父様の前では一度と本気を出していない。
正確には、ツェルトとの特訓から父様との模擬戦の時はわざと負ける様にしている。
俺の負け演技はかなりのものだったのだろうか、父様はまったく気づいてないぜ。
え?何で本気でやらなかったのかって?
いやほら、いきなり剣で父様を圧倒したらカッコよくない?主人公最強系のラノベとかもそうじゃん。
まぁ俺の場合父様よりかは剣技が劣っていたからそれが出来なかったんだけど。
けど!今なら、それが可能なはず。
その為の準備もしてきた。
今日この日、俺は父様に勝つ!
「行きます!」
アルは地を蹴り、アトリの方へ真っ直ぐと突っ込んで行く。
アトリはそれに対応するかの様にアルに剣を構えた。
そして、一歩踏み、アルを切り伏せようとしたその時ーー
アルは一歩下がり、アトリの剣を避けた。
その瞬間、一瞬にしてアトリの懐へ。
「なっ!?」
あまりの早さにアトリも目が着いて行かず、目の前にアルが不適な笑みを浮かべている姿しか写らなかった。
アルの剣はアトリの首を捉えた。
それは一瞬の出来事。
「私の勝ち…ですね?」
「なにがどうなって…」
その訳のわからない状況に、アトリはただ混乱していた。
今のアルの心情は正に、してやったり、と言う感じだろう。
アルは狙い通り、アトリを圧倒した。
そしてこの日、アルはアトリに初めて勝利したのだった。
そして、時は流れーー
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「はぁ!」
長い金色の髪を神々しく靡かせ、少女は剣を振る。
碧眼を宿した少女のその姿は、あまりに美しすぎる。
見れば必ず恋の盲目に溺れてしまう程だろう。
「ふぅ…」
そこで少女は一息つくと、汗を拭った。
「ツェルト、今のどうでした?」
「うむ、かなり良かったと思うぞ!
それにしても…アル、お前の成長速度は凄まじいな」
「そうですか?」
「あぁ、恐らくだが、後五年もすれば私の剣を抜くだろう」
「流石に言い過ぎですよ、さて、それじゃそろそろ帰りましょうか」
そう言うと、金色の髪の少女は山を降りていった。
アルトリア=シューレルこと、アル。
もう少しで十歳になろうとしていた。
【金髪碧眼の魔術師】
この名と共に旅立つ日が、近付こうとしている。
読んでくださりありがとうございます!
と言うことで、後もう少しで第一章「TS幼女編」が終わりに近付こうとしています。
TS幼女編でやろうと思っていた事を全部やってしまったので…いやまだ後少しありますが。
TS幼女がもう書けなくなると思うと少し寂しい物がありますね…けれど!もう早く冒険者編を書きたいと言う気持ちで溢れています!
と、作者の無駄話もこれくらいにしておきます。
ではまた!次回も読んでくださると嬉しいです!