19「私に剣を教えさせてくれ」
中庭にて。
「はぁ!」
俺は木剣を下から上に切り上げる。
父様はそれを難なくよけ、こちらの懐に潜り込む。
だが、俺もそれを読んでいない訳はない。
俺はもう一つの手で木剣を一瞬で生成し、父様に目掛けて切る。
だがーー
「アル…またお前は同じ手に引っ掛かる」
父様の剣はすでに俺の首もとに止まっており、俺の木剣はと言うと…。
「素手で普通とりますか…?」
父様に素手で捕まれていた。
今日も今日とて、父様には勝てずにいた。
今日は珍しくミーニャは来ていない。
リコックさん達と何処かに出掛けたらしい。
場所までは聞いてないが、俺よりか先にこの村以外の場所に行くなんて、ミーニャもとんだアーバンヌガールだぜ。
あぁ…今日はミーニャに会えないのか…大丈夫かな…おれ死なないかな。
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「さて、それじゃツェルトを呼ぶか」
俺は今山に来ていた。
ツェルトと出会って数日、ツェルトと俺はこの山でのみ話すことになっている。
なのでここ数日は毎日この山に来ている。
ちなみにツェルトが魔剣の時は一応意識はあるらしく、別に退屈ではないそうだ。
「よし」
俺はツェルトを構えて魔力を込めて行く。
光が発し、そこにツェルトが現れる。
「アル、お前に一つ言いたい」
いきなり肩を掴まれてそう言われた。
「は、はぁ…」
するとツェルトはこちらを見ていい放つ。
「アルに剣を教えさせてくれ!」
「はい…?」
「いや、どうも私のアルがやられている所を見ると物凄く嫌な気持ちになるのだ!
だから後生だ!アルに剣を教えさせてくれ!」
ツェルトはそうせがんできた。
英雄様直伝の剣を教えて貰えると言う事ですかい…?
勿論、俺に断る気はない。
「ツェルトが構わないのでしたら」
「本当か!?」
「はい」
「そうかそうか!ではアル」
ツェルトはこちらに一歩踏み込む。
その瞬間だった。
「ガっ!」
お腹のあたりが暑い何かに支配された、ゆっくりと俺は下を見た。
「へ…?」
俺の腹が鮮血に染まっていた。
その原因は明らかにこの刺さっている剣。
それを刺した相手など、一人だけーー
状況が理解出来ず、ツェルトを見上げると、ツェルトは笑って言った。
「一度死んでくれ」
ツェルトさんが出ると必ず急展開になる説