18「今こそリベンジの時だ」
ふふふ…これであんなことやこんなことを頼める訳でゲスか?ココロオドルでゲス。
「あ、アル…なんか今変な悪寒がしたんだが…」
「気のせいです」
全力で取り繕う俺。
危ない、流石は英雄様だ。
俺のゲスな気が伝わるとは。
さて、日がそろそろ落ちそうなんだけど…ん~…ツェルトをどうしようか。
いきなり家につれていったら確実にややこしいことになるし。
いや…待てよ?
この【擬人化】ってスキルだよな?
ならーー
「どうしたアル?私の事をじっと見て」
「ツェルト、剣に戻る事は可能ですか?」
「可能だ」
はい、解決。
「では一度剣に戻って貰ってもいいですか?いきなりその姿でツェルトを家につれて行くと色々と面倒なので…」
「それもそうか、ではアル少しこっちに来い」
「ん?」
俺は言われるがままツェルトの側まで行く。
すると、ツェルトは俺の身長に合わせてしゃかみこみ、そしてーー
「ちゅ♡」
「んにゃ!?」
ほっぺにキスされた。
「これからよろしく頼むぞ。
可愛い可愛い私のマスター、アル」
俺が呆然と右の頬に残されたあったかい感触を抑えていると、ツェルトは一瞬で魔剣へと戻った。
「不意打ちは反則過ぎるぜ…英雄様…」
ツェルトのこと、帰ったら父様に聞くかな…。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄
 ̄
「ただいま帰りました」
俺が家の扉を開けて言う。
「アルちゃーん!」
わぁ…女神。
ミーニャが向こうから走ってきて俺に抱き着いてきた。
この感触…あぁ癒されるぅ…浄化されて行くぅ…さっきまでのゲスい俺がいなくなって行くよ~。
「ただいまミーニャ」
「うん!おかえりアルちゃん!どこ行ってたの?」
「ちょっと山に行ってたんだ、父様はいるかな?」
「アルちゃんのパパなら中庭にいるよ!」
「ありがとうミーニャ、ちょっと父様と話をしてくるね」
「はーい!」
守りたい、この笑顔。
女神との戯れを終えたところで俺は中庭へと向かう。
そこには剣の素振りをしている父様の姿があった。
無駄のない振りに流石と、称賛してしまう。
「父様」
「ん?アルか、帰ってたのか」
「はい、父様少しお聞きしたいことが」
「なんだ?」
「この魔剣の事なのですが…」
俺は父様の前に魔剣ツェルトを見せる。
「それがどうかしたのか?」
「いえ、これを何処でどうやって手に入れたか、それとなんで【魔術付与】のスキルだけわかったのかを知りたくて」
「なんだそんなことか、その魔剣はダンジョンで手に入れたんだ、昔にな」
ダンジョン!?ダンジョンとかあんの!?
マジこの世界ファンタジー要素満載だなおい!最高すぎるぜ、期待をまったく裏切らない、冒険者になったらもう行くこと確定だな。
「なるほど…ダンジョンですか。
では次、何故スキルが?」
「知り合いの【鑑定】スキル持ちに頼んだら、スキル【魔術付与】って言われてな、それでわかったんだ」
へぇ…いやでもおかしくない?
俺が【鑑定】したときスキルもう三つはありましたけど?
「あの、でも私が【鑑定】を使った時にはもっとスキルがあったのですが…」
「それはスキルレベルの違いだな」
「スキルにレベルが?」
「まぁな、ある奴もあればない奴もある。
その中でも【鑑定】にはレベルが存在している。
俺が頼んだ奴は一だったからなぁ…」
なるほどねぇ…この世界は本当に面白く出来ているな。
ま、疑問も晴れたし、女神と遊んでこよ。
「教えていただきありがとうございます」
「いいってことよ、聞きたいことがあったら何でも言えよ?一人で考えたりせず俺に聞け、お前は年相応な行動をしないからな、もっと可愛げを大切にしろよ」
おい父様、その喧嘩買うぜ?
いいだろう、やってやんよ俺やってやんよ。
リベンジの時だ、俺の可愛さに震えろ!
今ここに、俺の全身全霊の可愛いをお見舞いしてやるぅ!!!
俺は父様の方へ振り返るーー
「パパのそう言うところ大好き♡」
ドヤァァァァァア!!!!
アルたん必殺!!『天使の告白(自分で天使とか言っちゃう奴(笑))』だ!!
さぁ父様!素直に俺の可愛さに震えーー
「アル、もう少し違和感なく頑張れ?」
グハッ!!
ふ、震える所か…気を使われただと…?
もしかしてこの世界での俺の可愛さってちっぽけなのん…?事故評価ではかなり可愛いはずなのん…おかいしのん!この怒りどうてくれるん…こうなったら…。
俺は鋭く父様を睨み、カマキリの様に両手を構え、叫ぶ。
「そすんさー!!!」
そすんさーになって『そすんす』をお見舞いしてやるのん!!くらいやがれ!!
「え!ちょ?アル!?やめ…ぐああ!!」
俺は父様に『そすんす』をお見舞いしてやった。
そすんさーとそすんすの元ネタがわからない方はG○ogle先生に聞きましょう!ではミーニャ日記をどぞ。
『ミーニャ日記』
今日のミーニャ。
今日はミーニャ一緒に部屋であっちむいてほいをして遊んでました。
ミーニャにルールを教えると呑み込みが早く、流石成長速度Sランクだなと感心しました。
あっちむいてほいを五回ほどやりましたが、ミーニャは恐ろしく弱く自分の全勝でした。
そして、六回目に、あっちむいてほい、とやるとミーニャは指になぞって行くようにその方向に顔をうごかしました。
そんなミーニャに対して指をさしてつい笑いを堪えられませんでした。
プクプクと膨らんで行くミーニャの頬。
その時でした。
パクっ!
ミーニャは俺の人差し指を加えてもごもごして言いました。
「アルひゃんなんかほうは!あむあむ…はむ…ん…ほう?まいっはか!?(アルちゃんなんかこうだ!…あむあむ…はむ…ん…どう?参ったか!?」
参りました、降参です。
この女神はどれだけ萌えさせれば気が住むのでしょうか?
もはや計り知れませんよ、本当に。
では今日はこの辺で。
明日はどんな萌え殺しをされるのか、楽しみです。