番外編「アトリの憂鬱」
最近、娘のアルが俺に対して冷たい。
「アルー!」
「なんですか父様?ミーニャと剣術の稽古をしなくていいのですか?」
明らかに言葉にトゲがあった。
「稽古はさっき終えてなその良かったらーー」
「そうですか、では失礼します」
アルはプイッと顔をそらして、自分の部屋へと帰って行った。
俺なんかしたか…?
いや全然覚えがない。
どうしよう、実の娘に嫌われるとか死にたくなってきた…いやまて、なにか、なにかあるはずだ。
アルの行動を思い出せ!
アルはよく俺とミーニャの剣術の稽古を観察している。
自分の稽古は終わったのに何故か見続ける。
そしてその顔は明らかに不機嫌だ…。
「ん…?」
俺はそこでとある事に気がついた。
もしかして…もしかすると…ひょっとして…。
「嫉妬…?」
俺がミーニャにばっか最近構ってるから、ミーニャに嫉妬しているのか?
そうか…そう言うことか…。
「なんだ、アルにも年相応なとこあるじゃないか」
よし!そうと決まれば、今からアルとたっぷり遊んでやるか!一緒にお風呂とかどうだろう?裸の付き合いは大事だしな。
俺はアルが初めて嫉妬してくれた事に歓喜していた。
いつもは大人の様なアルだけど、やっぱり親に甘えたいと思うのが普通だ。
俺はアルのパパだから、アルだけの。
それを伝えよう。
俺は、アルの部屋の扉を開けた。
「アル、一緒にお風呂に入らないか?」
「え?嫌ですけど」
あれ…?
「じゃ、じゃあ一緒に遊びにーー」
「もうすぐ日が落ちますよ?」
「えっとじゃあ一緒に剣術の稽古を!」
「さっきやりましたよ」
「…なんかパパとやりたいことないのか?」
「ないですけど?」
あれーーーーーーー!?
え!?嫉妬してたんじゃないの!?
あれ…?え…えぇ…。
「アル…ミーニャに嫉妬してたんじゃないのか?」
「はぁ?」
俺が思いきって聞いてみるとアルは、なにいってんのこいつ?、みたいな顔でこちらを見てきた。
「え?違うの?」
「なんで私がミーニャに嫉妬しなきゃいけないんですか」
「いやだって、ミーニャに俺をとられて嫉妬してるんじゃないのか!?」
と、俺がいうとアルは溜め息をついてこちらを見てきた。
「いいですか、父様。
私が嫉妬してるのは、ミーニャにではなく、父様にです!!」
「俺…?」
「そうですよ!?あんなにミーニャに手取り足取り剣術の稽古をつけられるなんて羨ましすぎます!!あぁ私がミーニャに稽古をつけられるくらい指導が上手ければ…そうすればミーニャのあんなところこんなところを…グヘヘ…グヘヘへへへ…」
「あ…そう…ですか」
腑に落ちない。
今回はアトリの憂鬱を書いてみました。