公爵令嬢鈴谷茜爆誕!
うーん既存の作品さっさと書けって話なんだけどとりあえず思い付いたので投稿
右のフックが相手の顔面を捉えた。
「らあぁっ!」
ボクっ、という鈍い音がした後、口から白いものが一つ。相手の膝から膝からガクンと力が抜けた。両手を左頬に当て、よろよろと立ち上がってこちらを睨みつけた。それはまるで擬態であった。自分はまだ戦えるといった目つきをするがその反面。その目に闘志は宿っておらず、うっすら涙さえうかがえた。
「っ、くそっ」
「男のくせして痛がってんじゃねぇ!」
呻き声が女の気をさらに苛立たせた。相手の髪を掴んでひっぱり体勢を崩し、持ち上げ、流れるように腹に膝を打ち込み、蹴り倒した。虚勢で立ち上がった人間に入れるには少しばかり、いや、だいぶ重たい膝。蹴られた男はその身体を「く」の字に曲げ、血を吐く。
顔は真っ赤に腫れ上がっており、体はどこも内出血だらけで、擦り傷によって血も流れ出ているがまたも立ち上がろうとする男。四肢に力が入らないのか、足をガクガクと震わせながらこちらを見上げるので精一杯の様子。
「はぁ……」
ため息をついて視線を切った。すでに限界だったのだろう。視界の外で、どさりという重い音を耳が拾った。「さて」と一息つき、辺りを見回す。そこでは大乱闘と呼んで差し支えない程のものが行われていた。
「ごらぁ!」
「こいやぁっ」
「あ"あ"あ"あ"!!」
「てめぇタマついてのかぁっ!」
相変わらず酷いもので、女の「お」の字もない叫び声だった。そう、この大乱闘で現在優勢、勢いづいている勢力は、構成員の全てが女であった。
こんな集団なんぞ作るつもりはなかったのになぁ、なんて。初めは私一人だったのが、今ではこうして仲間ができ、いつのまにかここまで大きくなってしまった。
「茜さん!こっちは片付きましたっ!」
「姐さん!こっちも終わりました!」
「こっちもです!」
「ん、そうか」
どうやら考え事をしてる間に終わったようだ。私の周りにはいつのまにか、信頼できる仲間が集まっていた。
「敵の大将は?」
「こいつです」
「グッ………」
ボロボロの状態で運ばれてきたそいつは、未だ敵意をむき出しにしながら、両腕を二人に押さえられながらも下から私を見上げてくる。
「クソっ、許さねぇからな!」
「てめぇ……………」
息を吸った所に腹を蹴りこんだ。グぅッ、と呻き声をあげる。口の端から血が流れていくのが見えた。間髪いれずに蹴りを入れる。倒れて体勢が不安定なところを、的確に腹だけを蹴る。次第に吐く血の量も増えていった。女は蹴脚を止め、倒れ込んだ男の前にしゃがんでもみあげを掴んだ。自分の顔の高さに持ち上げた頭に一言。
「はあ、わかってないようだから言っとくけど」
女は息を吸った。
「許さないのはこっちなんだよ。ここは私達の領域だ。ルール犯したら罰を受けるのは当然だろ?よくもうちのシマでヤクなんざ売ってくれたなぁ?」
一息で言い切ると、殺気を込めて、忠告した。
「━━━━━次はねぇぞ」
掴んでる手を離して立ち上がる。そして
「帰るぞっ!お前らぁ!」
『はいっ!』
★★★★★★★
「おかえり」
「…ただいま、母さん」
家に帰ると、母が玄関の前で待っていた。
「あなたが何しようが止めはしないけど」
母が私に近づいて、抱き締める。
「……必ず帰ってくるのよ」
「……………うん」
あんまり遅くまで帰ってこないと、母はいつもこうやって抱き締めてくる。密着した体から伝わる振動は、母が泣いているという事実を示していた。
「もう寝るから茜も早くねなさい」
「…うん」
私は、部屋にいくとそのまま着替えもせずにベッドに飛び込んだ。
ベッドの上でうつ伏せになりながら顔横に向ける。姿見に映る自分自身の顔があった。
そこには銀髪碧眼のヤンキー女。紛れもなく私自身だった。別に染めたわけではない。もとからのものだ。私はクォーターであり、この髪の色と目は遺伝らしいが、ごく稀なことらしい。親は普通にどちらも日本人っぽいので、染めたのかといつも聞かれる。
「……………」
『おい、こいつ髪の毛染めてるぜ!』『こいつカラコンなんて入れてるっ!』『あんた生意気なのよっ』『お前の父ちゃん犯罪者なんだって?』『犯罪者は学校くんなよ』
『お前なんか━━━━
━━━━━死ねばいいのに』
「………………」
生涯忘れないであろう記憶を思い出しながら、私は瞼を下ろした。
★★★★★★★
父は3年前に亡くなった。
会社の金を横領したとか、セクハラを日常的にしていたなど、様々な罪で逮捕され、獄中で自殺したらしかった。
しかし、本当はそんな事などやっていないらしい。これはあとからきいた父の同僚の話なのだが、父は会社の罪を擦り付けられたとのこと。
『美徳を守ろうとする者には不幸が降り掛かり、悪徳に身を任せる者には繁栄が訪れる。』
だっただろうか。
何かの本で見たことがある。まさにそれであった。
父は、謂れのない罪で追い詰められ、最終的に自殺した。
全うな人生などクソ食らえだ。
それから私はグレた。
いろんなことをして、中学のときには関わらないようにしていた人種とも話したりした。毎日夜中に出掛けたりするし、喧嘩を吹っ掛けたりしたこともあった。学校は留年しない程度に行く。どうも勉強癖はなおらないようで、テストは毎回上位に名前が上がる。そして、仲間ができた。多少の上下関係があったりするが、それは紛れもなく絆でむすばれたもので。
それが私という存在。
そしてふと思った。
父が死ななかったら、今頃私は何をしていたのだろうか………。未だにイジメられているのだろうか。
それとも……
★★★★★★★
「うーんー………」
「━━━━━様」
声が聞こえる。寝汗が酷い。気持ち悪い。
「母さん?あと5分……」
「お━━?━━て━━い」
だんだんと意識がはっきりしていく。毎朝経験するこの感覚が私は大嫌いだった。
「おじ━━様」
「だからあと5分待って………」
そして、
「お嬢様。いい加減起きてください。朝でございます」
男の声が聞こえた。
「は!?」
ガバッと跳ね起きる。そこには執事風の結構歳のいった男が立っていた。私はそれを確認すると数回瞬きしてから頭を起こす。まだ頭がうまく回らない。とりあえず重要なことだけ考えられればいい。
えぇと………
私の部屋に、知らない男
「お……」
「お?」
「乙女の部屋に勝手に入ってんじゃねぇーっ!」
布団をはねのける。あれ、私こんな服着てたっけ?とか少し思ったがそれは頭のなかに追いやった。
男に飛びかかって、腕ひしぎを決める。
「おぉらぁっ!」
「ぐあっ!?」
ジジイが悲鳴をあげる。
「こんのクソジジイっ!てめぇどっから入ってきやがったっ!母さんに手ぇ出してたら殺すからなっ!」
「お、お嬢様っ、お止めくださいっ!確かに昨日の事はおツラいで
「なぁにが『お嬢様』だぁ!?そんなプレイ許した記憶なんざねぇっ!」
「っおぅっ!お嬢様っ折れますっ!折れてしまいますっ!」
「てめぇまだそのプレイやめねぇのかっ!あぁっ!?気色悪いっ」
「で、ですから落ち着いてくださいっ!」
「これがおちついてられるかぁ!」
目が覚めたら見知らぬ老人にお嬢様呼ばわりされたのだ。落ち着けるわけがない。しかし、このクソジジイはなかなかお嬢様呼びをやめない。もうそろそろ折れるけれども、被虐趣味でも持ち合わせているのだろうか?いっそこのまま折ってしまおうかと思っていた矢先、
ドタドタドタドタ
ドアの向こうから足音が響いてきて。
バーンッ
「どうかなされましたかっ!?」
今度はメイド服きた女の人が入ってきた。
…………もう誰か説明して
来週にはだす。土日には出せません
2023/7/6 工事中