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図書室のあの子

僕の名前は因幡白(いなばしろ)、私立白馬高校一年生だ。



左目に眼帯している以外は普通の高校生だろう。中肉中背で、背は166センチ、顔はイケメンでも無いけどブサイクでも無い。いわゆるフツメン。最近の悩みは髪に白髪が増えてきた事かな。昔、交通事故にあって左目が潰れてからずっと眼帯は着けている。決して中二病では無い。と、まぁ自己紹介で現実逃避してもしょうがない。現実見よう。



僕は今虐められている。



ぼくを虐めているのは白馬優斗(しろまゆうと)とその取り巻きだ。名前で気づいたかもしれないが白馬のおじいちゃんは理事長だ。しかも世のおじいちゃんのご多分に漏れず、孫には甘い。だからこの学校では白馬が全権を握っていると言っても過言でも無い。



この学校だって理事長が白馬のために作ったらしい。あくまで噂の域を出ないが。



こんなに甘やかされて育ってきた弊害か、白馬は加虐趣味の持ち主だ。自分の思いどうりにならない事は認めることはない。


今体育館裏でボコボコにされている。全く、いつの時代のヤンキーだよ。



「オラァ、どうした?もう終わりか」



「うぅ…」



「チッ、おもしろくねーなァ。もっと叫べよ」



ガッ



白馬が僕を殴る。かなりの威力で地面に倒れる。



「ぐっ」



「あーあァ。つまんねーわお前、つまんねーよ。やっぱ矢崎いじめよっかな。お前よりいい声で泣くかなァ」



「ぉぃ、テメーぞれはじない約束だろうっ」



「おっ元気になったねぇ。でも、それを決めるのは俺だ。今はお前の遊びに付き合ってやっててるだけだ。せいぜいこの俺を飽きさせないようにするんだなっ! あと俺を呼ぶ時は“白馬様”だろう?」



「っっっっっ!!」



鳩尾に強烈な痛みが襲う。それに伴って息も出来無くなった。



「じぁな、因幡ァ。また俺たちと遊ぼうぜ」



そう言って白馬は、取り巻きを引き連れ去っていった。

やっと解放された。



さっきも言ったとうり、普通の高校生な僕が何故虐められているのか? ぞれは2ヶ月ほど前に遡る。



○○○



蝉の鳴き声が五月蝿くなってくる初夏のこと。

他県から白馬高校に入学してきた僕は、この学校の雰囲気に馴染めず、夏休みにも関わらず図書室で勉強している。

エアコンがかかっていて涼しい。僕が勉強に一区切りついて、ふと顔を上げると、そこには今まで見たことの無い女の子が座っていた。



あれ? あんな可愛い子居たっけ?

目はぱっちりしていて髪の毛はショートの女の子だ。背は低めかな? しかもかなりの(むね)をお持ちの様だ。 俗に言うロリ巨乳かな?



うわぁ、やっぱめっちゃ可愛いい。でも僕には釣り合わないな。まず話しかける勇気もないんだけどね。



そう思って声を掛けるのを諦めて、ボーっと顔を見ていると、彼女は急に顔を上げた。



ーーやっべぇ。ずっと見てたのばれた!?



と硬直していると彼女は僕の方を見てニコッと笑った。そしてまた、参考書らしき本に視線を落とした。



は? え? えぇ?? どゆことだ? 頭の上に?マークが乱立する。



もしかして僕のことが好きだとか? いやいやいやいやいやいや、初対面の筈だしそれは無い。よな? まてよ『オラ、根暗糞インポ野郎。インポの分際で私を視姦してんじゃねーよ。殺すぞ☆ニコッ』かもしれない。

僕としては前者だと信じたいが。



謎は深まるばかりで一向に解決しない。



気がつくと放課の時間になり、家に帰った。夜はそのことを考えてしまいろくに寝ることが出来なかった。



○○○



次の日僕は図書室に来ていた。

彼女はまた来ているだろうか? そんな淡い期待を抱いて、ドアを開けた。



ーーやった。また来てる。



彼女は昨日と同じ席に座っている。極力顔には出さない様に喜ぶ。しかも僕と彼女以外誰もいない。

だからって話しかけられないけど。



僕もいつもの席に座ろうと彼女の後ろを通る。若干遠くなるけど別に他意は無い。髪の匂いが、香ってこないかな。なんて思って無い。



自分に言い訳をしていると、別のことを考えていたせいか、椅子に足がぶつかってしまった。



「あ、すみません」



「い、いえ…」



声もキレーだ。そして会話? も出来た。また参考書に視線を戻したから気づかれていないだろうけど、にやけが止まらない。今日は良いことがある気がする。



いや、まてよ司書さんから見たら今の僕は、人の椅子を蹴ってニヤニヤしてる嫌やな奴に違いない。



顔筋に力を込めて表情を元に戻す。早く席に着かないと、ずっと立ち止まってたら変だ。



「あっあの!」



彼女は立ち上がる。



「ふぉい!?」



変な声出た。僕に話しかけたんだよな?



ギ、ギ、ギ、と音がしそうなほどゆっくり彼女の方を見る。



「なんでございますでしょうか?」



緊張でガチガチだ。もしかして昨日ジーっと見てたのがばれた!?

「もし良かったら、私をともだちにしてくれませんか?」

お願いします。と頭を下げる。



………………………えぇ?



嘘ぉ。もしかしてこれ夢か? いや、現実の筈だ。もしかしたら僕の聞き間違いかもしれない。「もし良かったら、私のお友達とおホモ達になってくれませんか?」と言われた可能性も無くは無い。



「えと、それは貴女と僕が友達と言うことで良いんですよね?」



「? はい。そうです」



だよな。そうだよな。でもなんで僕なんだ?



「ダメ…ですか?」



「いやいや、ぜんぜんダメじゃ無いんだけど…。なんで僕なのかなって」



「私、友達が全然できなくて、クラスの派閥のどれにも入ってなかったからクラスでも何だか浮いちゃってて…。

でも、図書室で勉強している時に貴方を見て、私と同じで友達がいないのかなって思って。だから貴方だったら私と友達になってくれるかなって」



要するに友達がいない僕なら友達になってくれると思ったのか…。



今日ほどボッチで良かったと思ったことは無い。



「返事貰えますか?」



おずおずと聴いてくる。



「あぁ、こんな僕で良かったら」



「よかったぁ。断られたらどうしようかと思った」



彼女は安心したのか、ホッと息をついて。



「これから宜しくね」



と言ってニコッと笑った。



次回更新は今日の12時です。

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