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危険なサウナ

作者: 西藤宮斗

 6作目になります。

 今日は日曜日。俺は久しぶりに近場の温泉に来ていた。

 俺は毎週日曜日にはこの温泉に浸かり、翌日の仕事に向けてリフレッシュするのが習慣だった。

 しかし、ここしばらくはそれが出来ていなかった。なぜかと言うと、大規模な改装工事をしていた為だ。

 近所の常連ぐらいしか客の居ない温泉に改装など必要ないと思うのだが、全ての風呂を入りつくした感のあった俺としてはうれしい限りだ。

 受付でおやっさんに料金を支払い、脱いだ服を新しくなったロッカーに預けて鍵をかけ……ようとしてやめ、荷物から財布を取り出した。100円玉が必要なタイプのロッカーだったからだ。

 返ってくるとはいえ、施設内でこの仕様は不親切設計と言わざるをえない。

 出鼻をくじかれたもののまだ見ぬ風呂に心を躍らせながら浴室へ入る。

 かけ湯を浴び、一番近くにあった新設備であるジャグジーに身を沈めた。

 体を洗え! と思うかもしれないが、温泉には乳化作用と言う汚れを落としやすくする効果があるので、かけ湯で汗や皮脂を流してから温泉に浸かり、それから体を洗った方が効率がいいのだ。

 ジャグジーを十分に堪能してから、本日のメイン……サウナに向かった。

 露天風呂の片隅に作られたドーム状の設備がそれだ。隣には水風呂もある。

 高温しか無いが低温は男のプライドが許さないし、中温は中途半端な感じがして嫌なので問題ない。

 扉を開けて熱風を受けながら中に入ると前面板張りの部屋と橙色の間接照明がマッチするド定番のサウナルームが広がっていた。

 定番が悪い訳では無いが、設計段階からおやっさんが散々自慢していたのを聞いて期待していたので、少なからず落胆したのは否定できない。

 どうせなら熱い方がいいと思い、奥のほうに腰掛けるとすぐに汗が吹き出てきた。

 壁の時計を睨みつけながら耐えること約20分。心臓の鼓動がやけに大きく感じるのでぶっ倒れる前にサウナから出る。

 隣にある水風呂の傍らに膝を付き、2,3度水をかぶってから冷水に身をゆだねる。

 目を瞑り(つぶ)、壁に体を預けるようにしてしばらく浸かっていると、鼓動はその大きさを保ったまま徐々に遅くなっていった。

 時間そのものが遅くなったかのような錯覚を覚えた。鼓動に合わせるかのようにゆっくりと呼吸をしていると僅かな水の流れが大きなものに感じられ、波の中にいるかのような感覚がした。

 体を左右に(なぶ)られていると次第に方向感覚そのものが曖昧(あいまい)になっていった。

 基準を求めて目蓋を開けたものの、焦点の定まらないぼやけた世界しか映らない。

 そこでようやく身体の異常に気付いた俺は慌てて水風呂を飛び出し、体を拭くのもそこそこにして服を身に(まと)い温泉を後にした。

 

 

 サウナの後水風呂に入って妙な感覚を覚えたのは実体験ですが、その他の部分はほぼ創作です。命の危険を感じました。

 あ、乳化作用は本当ですよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 私は水風呂が苦手で入れないので、どうしてそういう状態になったのかがわかりません。 と、はじめまして。聖魔光闇と申します。 最近、私も銭湯に行く事が増え、高温サウナと冷凍サウナを交互に入っ…
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