その2
木々の合間を右に左に進み、草むらを踏み分け、道なき道を走り続けた。
数分ほどして体力に限界がくると、俺は近くにあった大木を背に立ち止まって様子を伺った。
周りは静寂に包まれる。
騎士達は追いかけてこない?
(おかしいな・・馬に乗っているんだから、すぐに追いつかれそうなのに)
と思ったところで ”馬では木々がこれほど密集しているところは走れない” という理由に気がついた。
しかし、こうしている間にも騎士達は追いかけてきているだろう。
(どうする?)
彼らはまともに話ができる様子ではない。
何故だか、俺に対して警戒心全開の目をしていた。
木に背中を預け、休んでいると息が整ってきた。
ザッザッ
―その時、土を踏みしめる音がした。
(もうこんなに近くまで追ってきてたのか!)
気配が近づいてくる。
だが、今は動かないほうがいい。下手に動いてバレたなら逃げられない。
相手は3人だ。すぐに囲まれて終わってしまう。
腰を屈め息を潜めて、やり過ごさなければならない。
ザッザッ
近い――大木の反対側から聞こえた。
気配は迷いなくこちらへと近づいてきている。
(おかしい・・俺の居場所がわかっているかのような)
はっとする。
ここは、湿った柔らかい土の上。足元を見る。
(足跡!!)
ザッ
大木を挟んで音が聞こえた。相手は確信をついたように足を止めた。
この状況においても、俺はまだ諦めていない。
結局はなんとかなるのだ。