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追放された「大聖女」は有り余る魔力で今度はカフェを営む~イケメン王子の奥様は「元大聖女様」  作者: 蒼良美月


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4.戦闘開始

 ──そして次の日。




「はああ? 何でよ!」


 何故か、あの男がまたもや閉店間際に入店して来た。 


「いらっしゃいませ。店内でお召し上りでしょうか? それともお持ち帰りでしょうか?」


 まさに棒読みとはこのことだろう。ちょっと自分でも幼稚かな? とも思えたが腹が立ったことにはかわりない。


「店内だ。案内しろ! 娘!」


 は? 店内で? この時間に? 時計に視線をやる。時間は12時50分。


 でも13時までに入店してるわけだし……追い返すことも出来ないし……


 仕方なく私は席に案内した。



「どうぞ。メニューです!」


 ドンッ! 私はテーブルにちょっと荒めにメニュ表を置いた。


「ここのオススメで良い。一番自信があるのをさっさと持って来い」


 男の偉そうな態度は変わらず、私を見下した風な笑いを浮かべた。


 むううう! カチーン!


 私はその人を馬鹿にした態度にムカつき、急ぎ調理場に戻り、サンドウィッチを魔法で作成し、果実水をトレーに乗せ、男の待つテーブルに持って行った。


「お待たせしました! どうぞ!」


 ドン!


 少し乱暴とも思える勢いでそれだけを言い、直ぐに厨房に去った。


 それから暫くして、男性はレジに来た。


「代金だ! 受け取れ!」


「お客様、当店では食後の食器類はこちらの返却口にお客様自身で返却して頂くシステムでございます」


 私がそう言うとその男はまたも、顔を赤くした。


「何だ? ここは何でも客にやらすのだな? お前は何か? 客に働かせるのが趣味なのか?」


 はぁあ? 何なのよ? コイツ!


 最初は私が食器類は下膳しに行っていたが、何せ一人で店をやっている為、レジや注文が混雑した際は、みんなが気を効かせてカウンター横の台に食器を持ってきてくれていたのだ。


 それで常連の近所の主婦さんや騎士様達とも相談し、厨房の一部の壁に切り込みを入れて、食器の返却口を作成した。


「当店では出来るだけお客様のペースでゆっくりして頂けるようにと思い、そうしております」


 私は何の感情も入れず綺麗な棒読みでその男を少し睨み言った。


 そしてこう伝えてやった。


「当店の方針でございます故、ご理解頂けない場合は、大変申し訳ございませんませんが入店をお断りさせて頂いております」


 私は真っ直ぐにその男の目を見て、胸を張って言った。


「ハハハハッこりゃぁいい。娘! 俺は先程ちょっと腕を痛めた。申し訳ないが食器を片付けてもらえるかな?」


「は?」


 思わず私は言ってしまった。


「ん? この店では確かケガをしたり、老人や子供などには手を貸すのではなかったのか?」


 そう言ってその男はニヤニヤしている。


 はあああ? 何それ? マジむかつく!


「それとも何か? この店では腕を痛めた客にも食器の返却を強要しているのか?」


 カチーン!


「いえ、そういうことであれば、結構です!」


 私は腹が立ち口調がキツくなっていた。


「では、これで」


 男は600ギルちょうどをカウンターに置いて去って行った。


 何あれ? 


 マジむかつくーーーー!




 ─そして翌日。




 ──カランカラン




 来た! 戦いのゴングが鳴ったわ!




 私はすかさず店内の時計を見た。


 時計の針が示している時間は12時45分。




 よっしゃーー! 勝った!


 私は心の中でガッツポーズをした。


 気分を良くした私はちょっとだけいつもより愛想よく言った。




「いらっしゃいませ~」


「娘、席に案内しろ」




「お客様、店内でのお召し上りは申し訳ございませんが、最終オーダーが12時半までとなっております」




 フフフ言ってやったわ! どうよ? 私の勝ちでしょ!


 私は勝ち誇った顔で自信たっぷりに言った。




「ふーーん」




 少し小馬鹿にした感じで私を見下ろし、その端正な顔に手をやり、言った。


「ならば、サンドウィッチ200個持ち帰りで頼む。金はここにある」


 そう言って10万ギル紙幣をカウンターの上に置いた。


 自動清算機の上限通貨は1万ギル。

 10万ギル紙幣なんか、普段流通しない。金山でも買いに来たのか!

 わざとよねえ?


 にしても、何処の金持ちの坊っちゃんよ!


 マジ、ムカつくーー!


 しかも? 200個? 

 嫌がらせ? 頭おかしいんじゃない?


 私が一瞬考えていると、男が小馬鹿にしながら言う。


「どうした? 200個程度が用意出来ないのか? 客に働かせている店なんだからその程度造作もなかろう? ハハハッ」


 その男は、高い背で上からこれ見よがしに私を見下しながら、馬鹿にした薄ら笑いを浮かべて言い放った。


 はぁ? 何よ? たかが200個。


 いいわよ! やってやるわよ! 驚かないでよ? 舐めんじゃないわよ? 大聖女の魔法を!


 何か違う方向に魔法を使っていることはこの際は無視し、私はその男の挑戦状を受け取った。


「直ぐご用意致しますので、こちらでお待ち頂けますか?」


 私はカウンター前のテーブルを案内し、椅子に座って待つように言った。


「では()()()頼むぞ? 娘よ?」


 そう言ってニヤニヤしながら、その男は私を見て笑った。


 カチーーン! あんた今「直ぐに」ってわざとそこ強調して言ったわよねえ?


 私は久々に、戦地に立ったあの感覚。敵を前にして、相手をどうやってやり込めるか? デバフ魔法を選ぶ瞬間のワクワクする緊張感のような感覚。


 あれに似たものを覚えた。そして無意識に拳を握り力を込めていた。


 小走りに厨房へ戻り、急ぎ材料をアイテムボックスから取り出す。


 そして50個分を一気に魔法を駆使し作り、空間転移を使って箱に詰める。


 この作業を4回繰り返し200個を作りきった。


 もう少し広い場所だと一度に200個程度作ることは可能だが、流石にここでは場所が狭い。


 一度におけるサンドウィッチの数の限界が50個分だったのだ。


 ふん! どうよ? 大聖女舐めんなよ?


()()とお待たせして申し訳ございません。こちらご注文の品の200個でございます。お確かめ下さい」


 にっこりと私は優雅に微笑み、その男に言った。


「ふーーん。なるほどな。予め作ってあったか」


 その男は小声で言った。


 違うわ! 今作ったのよ! と、言ってやりたい気持ちはあったが「魔法で瞬時に今作りました」と言う訳にもいかず、仕方なく私は愛想笑いをした。


「では、ありがとうございました」


 にっこり微笑みながら私は入口のドアを開け、さっさと帰るように促した。


「台車をお貸ししますから、また後日お持ち下されば結構ですよ?」


「いや、構わぬ」


 彼はおもむろに、サンドウィッチが50個入った袋を両肩に掛け、残りの2袋を両手に持ち言う。


「では、失礼する」


 スタスタと彼は去って行った。


「フフフッこれは私の勝利って言っていいわよね?」



 ふん! やったわ!







 ◇







 ──その頃王宮の一室では。



「で、殿下……こちらは?」


「皆に分けてやれ! クランツ!」



 それだけ言って、無言で奥の部屋に立ち去ってしまった主が居るであろう真っ白なドアを見てクランツは途方に暮れていた。


「こんなに沢山のサンドウィッチどうするんだよ? もうみんな昼飯食べて終わってるし。それに、この仕事どうするんだよ……」


 またも机に山積みになっている書類を遠い目で見ながら呟いた。



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