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追放された「大聖女」は有り余る魔力で今度はカフェを営む~イケメン王子の奥様は「元大聖女様」  作者: 蒼良美月


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1.追放

思いのまま書いたご都合主義なところや、矛盾点が多くありますが、あまり気にせず軽い読み物として読んでください。

 私は、奇しくも世間からは『大聖女』などと呼ばれていた。


 何故か生まれた時から人外とも言える潤沢な魔力量。そのせいで10歳の頃、王宮へ連れて行かれ『大聖女様』と祭り上げられ『大聖女様』を職業として今までやってきた。


 その『大聖女様』を今クビになった。


 7年間住んでいた王宮を追い出され、私に与えられたのは『クズ聖女』の称号と、この古くなったローブ。あとは、私がコツコツと貯めていた貯金。この貯金を取り上げられなかっただけ良かったと思うしかない。


 何故追い出されたと言うと、あの時私は「魔の森」と呼ばれる森へ、勇者パーティーに同行して行っていた。


 そこであの……今思い出すだけでも震えが止まらない。


 今まで経験したことが無いぐらいの恐怖。


 世界最強と言われた勇者パーティーの一人が瞬殺され、恐怖に慄いた次の瞬間には呆気なく無残に次々と……



 必死で回復を試みるが、一瞬で抹殺されていくメンバー達に為すすべもなく……


 絶望を感じた私は、最後まで戦っていた勇者にその魔の手が迫った瞬間、残り僅かなMPで咄嗟に唱えた「絶対帰還」


 そのお陰で、世界の宝と言われた勇者を助けることが出来た。


 どんな強敵も斬り裂くことができる「勇者の剣」を使用できる者。世界にたった一人の勇者。


 その「勇者の剣」が全く魔物に効いてなかったのだ。


 私は世界を救う為、世界の平和を存続する為に苦渋の決断「逃げること」をあの時選んだ。


 あの時それを使っていなかったら、間違いなく勇者も私も殺され、パーティーは全滅し、その後残っていたのは、この世界の滅亡へのカウントダウンだっただろう。私は自分の下した決断は間違ってなかったと今でも思っている。



 だが、王宮に帰還した私に待っていたものは……



「何だと? 強敵を前に逃げ帰ったと申すか? ふざけるな! お前達は世界最強の勇者パーティーだぞ!『世界を守る勇者』を有するこの国の王である儂の顔に泥を塗りやがって!」


 顔を真っ赤にして怒鳴り散らしたのは、この国の王様、そして私を無理やり王宮に連れてくることを命じた男。


「申し訳ございません! 私はまだ戦うつもりでありましたが、ここにいる、この女が。勝手に、帰還の転移を……この女のせいなんです! 陛下!」


 散り散りになりながらも、残り僅かなMPを使って間一髪助けた「世界を守る勇者」と言われたこの男が、陛下に言った。


「おのれぇーー! このクズ聖女が! お前のような恩知らずなぞ、この国にはもう必要ない! 出て行け! 顔も見たくないわい! クズ聖女が!」



 これが17年間過ごした国を出て行くことになったきっかけだった。






 ◇







「これから何処に行こうかしら?」


 途方に暮れた私は空を見た。透き通るような真っ青で雲一つない空。


 何処までも続くその綺麗な青を見つめて私は呟いた。


「私は自由になったんだ」


 私の人生は常に死と隣り合わせだった。10歳の時に聖女認定されてからは楽しいことも、やりたいことも全て制限され、常に私の側には大勢の監視役とも言える国の重鎮達。そして当たり前のように私は、危険な地へ赴く勇者パーティーに同行させられた。


 人を助けることは嫌いではなかったが、私に要求されたのは、もっともっと強くなること。もっともっと皆に尽くすこと。


「傷ついた人を助けて当たり前、敵を倒して当たり前。お前は大聖女なんだから」


 ずっとこの言葉を皆に言われ続けてきた。


 激しい戦闘中も、回復と身体強化の補助魔法、合間に攻撃をと一手に任された私は、誰も私に感謝することなどなく、MPが枯渇すれば「役立たずのお荷物」と罵られた。そんな生活が何年も続き、私は心身共に疲れ果てていた。


 もう残りのMPを計算しなくていい。バフの効果が切れる時間をカウントしなくていい。


 もう会いたくもない人相手に、愛想笑いを振りまかなくてもいい。


 誰かに監視されながら、トイレや風呂に入らなくてもいい。


「私は自由になったんだ。これからは誰かに監視される生活じゃなく自由に生きていいんだ」


 私は無心でひたすら走った。とにかくこの国に居るのはもう嫌!


 途中何度か休憩をしたが、それでも止まることをせず無我夢中で走り続けた。


「ハァ、ハァ、ハァ……ハァ」


 両脚がワラワラと小刻みに震えているのを感じながら、滴り落ちる汗を手で拭い、大きく深呼吸をする。


 そしてゆっくり背を伸ばし、地面をトントンと軽く脚で蹴る。再び深呼吸をし、辺りをゆっくり見渡した。



 ──自由の匂いがした。



 沢山走ったせいで多少は疲れたが、少しづつ回復している。聖女特有スキル「リカバリー」が発動しているせいでもあった。


 聖女である私には、いくつかの特有スキルがある。その中の一つ「リカバリー」とは自動で減ってきたHP、MPを少しづつ回復してくれる物だ。


 毎秒5ずつHPとMPが自動回復していく「リカバリー」神が与えた選ばれし者への力。


 『クズ聖女』の力に思わず苦笑いをしたが、とりあえず町を散策することにした。


 私は歩きながら、ある場所にふと目が行き立ち止まった。


『貸店舗入居者募集中』


 白い壁に茶色い大きな扉。こじんまりとはしているが、私は一目惚れしてしまった。


 そこにあった問い合わせ先の住所をメモし直ぐに向かう。


「すいません。あそこにあった白い壁で濃いグリーンの屋根の店舗。あの物件を紹介して欲しいのですが?」



 そこに居た初老の店主らしき男性が優しく私に微笑みながら言った。


「お嬢さん見ない顔だねぇ? あの建物が気に入ったのかい?」


「はい! 是非紹介してもらえませんか?」


 私は少し興奮して食い気味にその初老の男性に言ってしまう。


「まぁまぁお嬢さん、落ち着いて。ハハハッ」


「あ、すいません……私ったら」


 私は恥ずかしくて顔から火が出そうだった。


 私には幸い、そこそこの貯金はあった。何故なら、聖女時代は給金を使う暇もなければ、使う自由もなかったからだ。7年間殆ど手をつけていなかった給金がやっと役に立つ時がきた。


 無事契約を終了し、店主から鍵を受け取った私はウキウキしながら、先程の白い壁の建物に向かった。


 今日からここが私の城。

 私がここで営むのはカフェ。


 サンドウィッチと美味しい紅茶や果実水、夢のような世界!


 うん!


 さっさと準備に取り掛かりましょう!


 ん? どうやって? 

 そりゃあ魔法でしょう!


 使えるものは使わないとね? うふふ。


 あっと言う間に完成したカフェを眺めながら、私はこれからの夢の世界に心躍らせる。


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