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先祖返りの勇者たち

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

それは、一方的な虐殺だった。


「撃て! 撃て! ……畜生、弾切れだ!」


 エンジンが死に絶えた荒野で、アレクセイ大尉は叫んだ。  T-80U戦車の乗員たちは、鉄の棺桶となった車体から這い出し、支給されたトカレフ拳銃や銃剣を手に、押し寄せる緑色の波に抗っていた。


 パン、パン!  乾いた発砲音が響くが、オークの分厚い脂肪には豆鉄砲も同然だ。


「大尉同志、助けてくれ! 足が、足がぁ!」


 隣の戦車では、ハッチから引きずり出された装填手が、三匹のオークによって手足を掴まれ、生きたまま引きちぎられようとしていた。  助けようにも、武器がない。一二五ミリ砲も、機関銃も、ここではただの鉄くずだ。


 近代兵器の優位性は、わずか数分で崩壊した。  アレクセイは、血の涙を流す思いで決断を下した。


「……総員、退避! 戦車を放棄せよ! 自分の足で走れ!」


 彼らは誇りある戦車を捨て、泥まみれになりながら、魔力濃度が低い後方へと無様に逃げ帰るしかなかった。


 ***


 あの日から、二週間が経過した。


 チェリャビンスク-XXの周辺は、膠着状態に陥っていた。  ソ連軍はゲートから半径五キロ圏内に「絶対防衛線」を敷いたが、それ以上踏み込むことができなかったのだ。


 電子機器が焼き切れる「魔の領域ゾーン」。  そこでは戦車も無線も使えない。踏み込めば、待ち構えるオークの斧と魔法が、兵士たちを肉塊に変える。


 安全圏にある前線基地のテントで、アレクセイは安酒をあおりながら、地図に引かれた「越えられない線」を睨みつけていた。


「……クソッ。本国から弾薬や食料の山は届いているというのに、肝心のそれを運ぶトラックが動かんとはな」 「人力や台車で運ぼうにも、あの霧の中に入れば兵士が体調不良を訴えて倒れます。……完全に手詰まりです」


 腕の骨折が癒えかけのイワンが、悔しそうに答える。  だが、その停滞を打ち破る「音」が、泥の海から響いてきた。


 ヒヒィィィィン!


 エンジンの音ではない。生物のいななきだ。  輸送列車から降り立ったのは、中央アジア軍管区から緊急招集された「第10独立乗馬部隊」。  ハイテク兵器が死滅したこの戦場に投入された、時代錯誤な騎兵旅団だった。


「馬だと? 自殺しに来たのか」


 アレクセイは嘲笑した。  だが、彼らは違った。彼らは物資を満載した鞍を乗せ、「魔の領域」の中へ、生身で、馬と共に踏み込んでいったのだ。


 彼らの任務は、領域内での長期偵察と、散発的なゲリラ戦。  それは、補給線が維持できない死地への片道切符だった。


 そして、さらに二週間が過ぎた頃――。


 彼らは地獄を見ていた。  領域の深部では、持ち込んだ食料はすぐに尽きた。後方からの補給部隊も、濃すぎる魔力汚染に阻まれて到達できない。    飢餓と孤立。  極限状態の中で、彼らは生き残るために禁忌を犯した。  襲いくるオークを殺し、その肉を焼き、食らったのだ。    毎日、濃密な魔力マナを浴び続け、魔物を食べ、汚染された泥水をすすって戦い続けた彼らの体に、ソ連の医学では説明不能な**「変異」**が起きていた。


 ***


 一ヶ月ぶりの総攻撃の日。    アレクセイが見たのは、もはや人間とは呼べない「何か」に変貌した味方の姿だった。


 中央アジアの過酷な環境で育った軍馬たちは、魔力を肺に取り込むことで、その筋肉組織を鋼のように硬質化させていた。  馬たちの瞳は燐光を放ち、鼻腔からは蒸気とともに紫色の火花が散る。  彼らはもはや単なる家畜ではなく、異世界の幻獣に匹敵する「魔導生物」へと作り替えられていた。


 そして、跨る兵士たちの変容はさらに凄まじかった。


 彼らの人格は、訓練されたソビエト軍人のままである。共産党への忠誠も、戦友を想う心も損なわれていない。  しかし、その意志を体現する「器」が、人間という枠を超越していた。


「左だ! 斬れッ!」


 先頭を走る中尉が、背負っていたAK-74には目もくれず、腰から抜いたシャシュカ(伝統的なサーベル)を振り上げた。


 一体のオークが、丸太のような腕で青銅の斧を叩きつけようとする。  常人ならば視認することさえ困難なその一撃を、中尉は馬の腹をわずかに蹴るだけで回避した。  いや、回避ではない。彼の反射速度は神経伝達の限界を超え、オークの動きが止まって見えるほどの「加速」の中にいたのだ。


 すれ違いざま、銀色の閃光が走る。


 魔力で強化された腕力と、軍馬の爆発的な突進力が乗った刃は、オークの分厚い脂肪と筋肉を、熱したナイフでバターを斬るように断ち切った。  巨大な豚の首が、呆気なく宙に舞う。


 返り血を浴びた中尉の顔には、血管が黒々と浮き出し、その瞳は赤く充血しながらも、冷徹な軍人の光を失っていなかった。


「見たか……。サーベル一本で、あの巨体を」


 イワンが呆然と呟く。


 騎兵たちは、戦車が立ち往生している「高魔力域」を、自由自在に、それも圧倒的な機動力で支配していた。  彼らの呼吸は深く、重い。肺胞の一つ一つが魔力を酸素に代わるエネルギーとして吸収し、心臓はドラムのように力強く脈動している。疲労という概念は彼らから消失していた。


 彼らの武器自体も変質していた。  兵士たちの体内に蓄積された魔力が、グリップを通じて鋼鉄の刃へと流れ込み、シャシュカの刃紋には不気味な紫の電流が走っている。  それはソ連の科学がまだ到達していない「魔導エンチャント」の自然発生だった。その刃は、オークの持つ魔導防御を無効化し、魂ごと肉体を切り裂いていく。


「大尉同志、見てください! あそこです!」


 イワンが、市街地の最深部、ひときわ霧の濃い廃墟を指差した。  そこには、破壊された噴水広場の影で、無数のゴブリンに囲まれながらも、折れた剣を手に立ち続ける「影」があった。


 それは、オークでもゴブリンでもない。  血まみれになりながらも、気高い装飾が施された甲冑を身に纏い、必死に盾を構える「人間」だった。


「……魔物ではない。あいつらと戦っているのか?」


 アレクセイの言葉が終わる前に、先遣の騎兵たちがその広場へと突入した。  超人的な膂力で振り回されるサーベルの旋風が、悲鳴を上げるゴブリンたちを紙細工のように引き裂き、包囲を切り開く。


 騎兵の一人が馬を止め、甲冑の人物に向けて手を差し伸べた。


 その人物――異世界の騎士――は、現れた「異形の騎兵たち」の、人間離れした動きと凄まじい眼圧に一瞬気圧された。  彼らは自分たちの世界の騎士よりも遥かに「濃い」魔力を放っていたからだ。  だが、彼らが魔物を屠る様を見て、安堵のあまり膝をついた。


「……助け……に来たのか……?」


 騎士が発した言葉は、ソ連兵には理解できなかった。  だが、差し伸べられた「鋼のように硬い手」が自分を救おうとしていることだけは理解できた。


 騎士は、超人的な膂力を持つ騎兵によって軽々と鞍に乗せられ、後方へと運ばれていく。  その背後では、なおも魔力の嵐が吹き荒れ、停止したT-80Uの群れが墓標のように並んでいた。


 騎兵部隊の指揮官が、戦車の上で呆然とするアレクセイに向かって馬を寄せ、鋭い動作で敬礼を送った。


「大尉同志。……この先は、我々の領域だ」


 その声は低く響き、アレクセイの鼓膜を震わせた。


「機械に頼る者たちは、下がっていろ。これより先は、我々が道を拓く」


 指揮官の言葉は、規律正しきソビエト将校のものだった。  しかし、その全身から放たれる圧倒的な覇気と、馬の足元でひしゃげたコンクリートの跡が、彼らがもはや「旧来の人間」ではないことを無言で告げていた。


 ソビエト連邦は、この日、物理法則を失った。  そして、それと引き換えに、魔力という「禁断の力」に適合し、生物としてのステージを引き上げた新人類――**「魔導騎兵マギ・カヴァレリア」**という、最強の戦力を手に入れ始めたのである。

科学が敗北した戦場で、最強だったのは「人間(と馬)」でした。 次回、第7話。保護された謎の騎士。 彼と言葉を交わすための「実験」と、魔導兵器開発が始まります。続きが気になる方は、ぜひブックマーク登録をお願いします!

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