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翡翠の檻と海の向こうの救世主

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、四月。  アステリア大陸での「魔王討伐」の衝撃は、風に乗り、あるいはガリアナ大帝国の商船を経由して、海を隔てた西方大陸の北部にも届いていた。  そこは、世界で最も美しく、そして最も残酷な種族が支配する領域。  **「聖エルヴヘイム氏族連合」**である。


1.届いた「不可能」な知らせ

 首都アルフヘイムの上空に浮かぶ**「天空宮殿スカイ・パレス」**。  重力制御魔法によって空中に係留された翡翠色の宮殿では、白エルフ(ハイ・エルフ)の氏族長たちが、帝国からもたらされた極秘報告書を回し読みしていた。


 彼らの反応は、優雅な嘲笑だった。


「……人間ごときが、あの魔王を滅ぼしただと?」


 氏族長の一人、シルヴァリウス長老が、水晶のグラスに入った黄金のネクタールを揺らしながら、美しい鼻で笑った。 「帝国の人間どもも、ついに焼きが回ったか。劣等種特有の虚言癖も、ここまでくると滑稽な喜劇だ」


「全くだ。人間とは、生まれながらに魔力を持たぬ『失敗作』であり、言葉を話す家畜に過ぎん」  別の女性長老が、扇で口元を隠して同調する。 「我らエルフの英知を結集しても封印することしかできなかった魔王領域を、人間――それも魔法すら使えぬ蛮族――が消滅させたなど、物理的にも神学的にもあり得ない。妄想だ」


「たまたま魔王が寿命で死んだのを、自分たちの手柄にしたのだろう」 「あるいは、帝国が我々を動揺させるために流したデマゴーグ(流言)に過ぎん」


 彼らは報告書を卓上に放り投げ、再び優雅な竪琴の音色に耳を傾ける退廃的な生活へと戻っていった。  数千年の寿命を持ち、変化を嫌う彼らは、「自分たちの常識を超える不愉快な情報」を、無意識のうちに遮断したのである。


2.否定しきれない現実

 だが、事実は彼らの高いプライドを容赦なく殴りつけた。  数週間後、エルフ領内の各地にある魔導観測所で、無視できない異常事態が確認されたのだ。


「……長老様、認めざるを得ません」  主席魔導師が、苦渋に満ちた顔で報告書を突きつけた。 「南の大気に漂っていた『悪性マナ』の反応が、完全に消失しています。自然消滅ではありません。何らかの……極めて強力な熱源によって、物理的に『浄化』されたのです」


 さらに、帝国との交易を行うハーフエルフの商人たちが、口々に証言し始めた。  「東の空に、二つ目の太陽が昇ったのを見た」  「アステリアの方角から、見たこともない巨大な鉄の船が、黒い煙を吐いて海を走っている」


 氏族長たちの顔から、余裕の笑みが消えた。  魔王は死んだ。それも、エルフの魔法体系には存在しない、未知の力によって。  そしてそれを成し遂げたのは、彼らが虫けらのように見下していた「人間種」の国、ソビエト連邦であった。


「……不愉快だ。実に不愉快だ」  シルヴァリウス長老が、グラスを握りつぶしそうな力で言った。 「神に選ばれし我らを差し置いて、泥遊びしかできぬ劣等種が世界を救ったというのか? 神話に対する冒涜だ」


3.足元の火種:弾圧と「救世主」

 天空の宮殿でエルフたちが眉をひそめている頃、彼らの足元――陽の当たらない地上の泥にまみれた奴隷居住区では、別の種類の感情が渦巻いていた。


 最底辺階級であるナルモニア人(人間奴隷)たちは、監督官の目を盗み、声を潜めて噂し合っていた。


「聞いたか? 海の向こうに、『赤い星の国』があるらしい」 「ああ。そこの国では、人間が王様や貴族を倒して、みんなが『ドウシ(同志)』になってパンを分け合うそうだ」


 これまでの彼らにとって、エルフは神にも等しい絶対的な支配者であり、逆らうことなど考えられなかった。  しかし、ソ連がラジオや風の噂を通じて発信した「解放者」というメッセージは、鉄壁の鎖国をすり抜け、絶望していた奴隷たちの心に火を点けていた。


 バシッ!!


 乾いた音が響く。  農作業中の男が、エルフに忠誠を誓う「名誉人間(エルオリト人)」の監督官によって、鞭で打たれ、泥の中に転がった。


「貴様! 何を持っていた!」  監督官が男の懐から奪い取ったのは、ボロ布を木の実の汁で赤く染めた、拙い「赤旗」だった。


「……こ、これは、お守りです……」 「黙れ! 最近流行っている邪教の『赤いお札』だな!」


 監督官は男の頭を軍用ブーツで踏みつけた。 「いいか、よく聞け家畜ども! 海の向こうに楽園などない! あるのは地獄だけだ! 貴様らは銀の女神様に仕えるためだけに生まれてきたのだ!」


 見せしめとして、男はその場で、治安維持部隊の黒エルフ(ダーク・エルフ)によって首を刎ねられた。  鮮血が飛び散る。  だが、その生首を見つめる奴隷たちの目には、かつてのような「恐怖」だけではなく、暗く、重い「信仰」の光が宿っていた。


(……エルフ様より強い、赤い神様) (どうか我らを助けに来てください) (我らに、パンと武器を……)


 それはもはや、政治的な期待を超えた、新たな**「宗教」**の誕生だった。  彼らは夜な夜な、ソ連の方角である東の空に向かって跪き、見よう見まねの「インターナショナル」を祝詞のように唱えていたのである。


4.氏族会議の紛糾:永遠の議論

 地下で広がる不穏な動きを察知した氏族連合は、緊急の「大氏族会議」を招集した。  翡翠の間には、各氏族の代表が集まり、議論は紛糾した。


「ソビエトとかいう蛮族は、『解放』などという危険思想を撒き散らしている! このままでは、我が国の家畜(人間)どもが暴走しかねん!」  強硬派の長老が叫ぶ。 「見せしめに、奴隷の一割を間引き(処刑)しろ! 恐怖こそが秩序だ!」


「待たれよ」  穏健派の議員が諫める。 「あまり締め付ければ、かえってソ連に介入の口実を与えることになる。奴らは魔王を焼き払った連中だぞ?  あの『太陽の魔法(核)』を撃ち込まれれば、自慢の飛行戦艦とてひとたまりもない。正面から戦って勝てる保証はないのだ」


「ではどうするのだ! 家畜に餌を増やしてご機嫌を取れというのか? 高貴なるエルフの誇りはどうなる!」


 議論は堂々巡りを続けた。  最大の問題は、エルフという種族特有の**「時間感覚」**にあった。  寿命が数千年に及ぶ彼らにとって、十年や二十年は「昨日の出来事」に等しい。彼らの文化には、人間のような「即断即決」という概念が欠落していたのだ。


「……結論が出ないな」 「うむ。情報の精査が必要だ」 「とりあえず、あと五十年ほど様子を見ようではないか。人間の一生など、我らの微睡みのようなものだ」


5.結論:偉大なる「先送り」

 数日間に及ぶ会議の末、議長が宣言したのは、あまりにも無難で、そして致命的な決定だった。


「本件は『継続審議』とする。  対ソ方針は現状維持(静観)。国内の人間種については、不穏分子を個別に処理するに留める。  ……我らは永遠なるエルフだ。あのような短命種(ソ連)の国など、瞬きする間に自滅して消えるだろう」


 彼らは、何も変えないことを選んだ。  ソビエト連邦という国が、五十年もあれば世界地図を塗り替えるほどの速度で進化し、開発し、破壊する「異常な国」であることを、彼らは理解できなかったのだ。


 会議は散会した。  高貴なる白エルフたちは、再び宮殿で詩を詠み、美酒に酔う優雅な生活へと戻っていった。


 彼らの足元で、数百万の奴隷たちが赤く染めた布切れを懐に隠し持ち、東の空から来る「鋼鉄の救世主」を、血の涙を流しながら待ち焦がれていることにも気づかずに。    美しき翡翠の檻は、音もなく内側から腐り始めていた。


第五章 第九話(幕間):後世の注釈 『エルフ連合の敗因は、その長命さにあった。  彼らが「とりあえず様子を見よう」とお茶を飲んでいる間に、ソビエト連邦は発電所を建て、軍隊を再編し、革命の輸出準備を整えてしまったのである。  時間という資源の価値において、両者の認識には致命的な断絶があった。この「五十年」という見積もりの甘さが、後に彼らの楽園を業火で焼くことになる。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)

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