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見えない壁

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

勝利の歓喜は、電子音の悲鳴とともに断ち切られた。


 チェリャビンスク-XXの市街地まで残り五キロ。  勝利を確信し、全速で荒野を突き進んでいたアレクセイ大尉のT-80U戦車隊を、目に見えない「拒絶」が襲った。


「大尉同志、計器が……計器がおかしいです!」


 操縦手の叫びが車内インターコムに響く。  アレクセイが視線を落とすと、そこには信じがたい光景があった。


 液晶ディスプレイには砂嵐のようなノイズが走り、デジタル式の燃料計や速度計が狂ったように数値を乱舞させている。  さっきまで完璧に機能していた一二五ミリ滑腔砲のレーザー照準器は、無意味なエラーメッセージを吐き出し、画面が真っ暗に沈んだ。


「何をしている、再起動だ! 回路をバイパスしろ!」 「ダメです、反応しません! それに……エンジンが!」


 一千馬力を超える出力を誇るガスタービンエンジンが、喘息患者のような異音を立て始めた。  キーンという高周波の回転音は、不気味な不整脈を刻む重低音へと変わり、排気管からどす黒い煙が噴き出す。  まるで、大気そのものが粘り気のある何かに変化し、エンジンの吸気を拒んでいるかのようだった。


 ガクン、という激しい衝撃とともに、数十トンの鋼鉄の巨体が泥の中に停止した。


 アレクセイが慌ててハッチを開け、外の世界を仰ぎ見る。  そこにあったのは、もはや彼らが知るカザフの荒野ではなかった。


 空は、毒々しい紫色に淀んでいる。  ゲートから溢れ出した高濃度の魔力は、物理法則を書き換える「極超短波の嵐」となって、近代兵器の心臓部である半導体を次々と焼き切っていたのだ。


 周囲を見渡せば、同様の悲劇が連鎖していた。  並走していたBTR-80装甲兵員輸送車は、エンジンから火を噴いて立ち往生し、無線機からは耐え難い静電気のノイズだけが流れ続けている。


 さらに最悪なのは空だった。  低空を旋回していたSu-25攻撃機の翼が、紫色の放電に包まれた。ジェットエンジンが火を吹き、制御を失った「鉄の鳥」が、悲鳴のような風切り音を立てて地表へと激突していく。


「……始まったんだ」


 戦車の側面に身を潜めるようにして座っていたイワン二等兵が、青ざめた唇を震わせて呟いた。  彼は知っていた。この沈黙の後に来るものを。  科学が沈黙し、光が消えた場所。そこは、あの怪物たちの独壇場なのだ。


 霧の向こうから、重苦しい足音が聞こえてきた。  ドシン、ドシン、という、大地を揺らすリズム。  そして、それ以上に恐ろしい音が響き渡る。


 ――ブゴォォォォォォッ!


 豚の鳴き声を数万倍に増幅したような、地獄の咆哮。


 さっきまでソ連軍の砲火に追い散らされていたはずのオークたちが、紫の霧の中から再び姿を現した。  だが、今度の彼らは先ほどまでとは違っていた。  彼らの筋肉はさらに膨張し、皮膚の下では血管が不気味に脈動している。ゲートから溢れ出す魔力を直接浴びたことで、彼らは「野生」を超えた「狂乱」の状態へと変貌を遂げていた。


「敵襲! 十二時方向、オークの群れ!」 「主砲を撃て! 早くしろ!」


 アレクセイが叫ぶが、自動装填装置は無機質な金属音を立てて停止したままだ。電力供給を失った巨砲は、ただの重い鉄の棒に過ぎない。   「手動だ! 手動で装填しろ! 光学照準器を使え!」


 戦車兵たちが必死にクランクを回し、砲身を動かそうとする。  だが、戦車兵が汗を流してダイヤルを回す速度よりも、魔力の加護を受けた怪物の突撃の方が遥かに速かった。


 一体のオークが、猛スピードでT-80Uの正面装甲へと飛びかかった。  怪物は手に持った巨大な青銅の斧を、咆哮とともに振り下ろす。


 キン、という、背筋が凍りつくような音が響いた。


 ソ連の冶金学が誇る複合装甲。成形炸薬弾(HEAT)をも防ぐはずの鋼鉄の壁に、オークの斧が深々と食い込んでいた。


「バカな……。あれはただの青銅だろう!?」


 アレクセイは目を疑った。  斧の刃は不気味に発光しており、触れた部分の装甲板を、まるで凍りついたバターのように脆く変質させていた。  物理定数が書き換えられた領域では、鋼鉄の強度はもはや絶対的な指標ではなかったのだ。


 戦車の周囲を、何百というゴブリンが囲み始める。  彼らは停止した車両のハッチをこじ開けようと、ネズミのような敏捷さで装甲の上を這い回る。  車内に閉じ込められた兵士たちは、潜望鏡越しに、自分たちを「獲物」として眺める怪物の赤い目を見て、絶望に悲鳴を上げた。


「大尉同志……。このままだと、全員『缶詰』にされます」


 イワンが、負傷した腕を庇いながら、左手でAK-74の銃把を握りしめ、アレクセイを睨みつけた。  イワンの瞳には、恐怖を通り越した、冷酷なまでの直感が宿っていた。


「電子機器も、エンジンも、複合装甲も、ここでは紙クズだ。……あいつらを殺すには、もっと原始的なものが必要です」


「原始的なものだと?」


「……大尉同志、わかっていますよね。これなら、アフガンの山にいた馬を連れてきた方が数倍マシだ。あいつらならエンジンも積んでないし、少なくともあの斧を避けることくらいはできる!」


 イワンの言葉は、アレクセイのプライドを粉々に砕いた。  だが、目前では最新鋭戦車のハッチが引き剥がされ、引きずり出された戦車兵がオークの牙にかかって絶命する光景が繰り広げられている。


 アレクセイは、通信が途絶した無線機の受話器を投げ捨て、腰の拳銃トカレフを引き抜いた。


「……イワン二等兵。……お前の言う通りかもしれん。……全軍に告げろ。車両を捨て、白兵戦の用意をしろ! この『鉄の箱』は、もう我々を守ってはくれない!」


 近代兵器の象徴であった戦車隊が、一瞬にして広大な「鉄の墓場」へと変わった瞬間だった。  ソビエト軍は、建国以来最大の屈辱を味わいながら、かつてないほど「野蛮な」戦いへと身を投じることを余儀なくされたのである。

戦車が動かない。頼れるのは己の肉体と、原始的な戦術のみ。 次回、第6話。絶体絶命の窮地に、ソ連軍の「切り札」が到着します。

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