翡翠の檻(エルヴヘイム)を覗く
【注意・免責事項】
※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。
※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。
※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。
一九九〇年、三月下旬。 アステリア人民特別市(旧王都)、王宮地下最深部。 情報分析室の空気は、先程までのガリアナ大帝国の分析時よりも、さらに澱んで重苦しいものになっていた。
プロジェクターが切り替わり、スクリーンには西方大陸の北部、険しい山岳と深い原生林に覆われた地域の地図が投影されていた。
情報参謀オルロフ少将は、少しうんざりした表情で、次のファイルをKGB議長クリュチコフに提示した。 「次は、西方大陸北部に位置する**『聖エルヴヘイム氏族連合』**です。 ……議長、先に申し上げておきますが、先程の帝国の合理的な官僚制が可愛く見えるほどの、吐き気を催す社会です」
1.社会構造:血の色による絶対階級
スクリーンに映し出されたのは、美しい巨木の上に築かれた翡翠色の森林都市の空撮写真。 そして次のスライドには、そこを闊歩する優雅なエルフたちと、その足元の泥濘の中で鎖に繋がれて働く人間たちの対比写真が映し出された。
「彼らの社会には『法』がありません。あるのは**『血統』**という絶対的な掟のみです」
オルロフは、嫌悪感を隠そうともせずに説明を始めた。 「彼らが崇める『銀の女神』の教義により、生まれ持った耳の長さと肌の色、そして魔力量で、ゆりかごから墓場までの地位が決定されています。個人の努力や才能が介入する余地は、一ミリもありません」
彼は指示棒で、その厳格すぎるカースト制度(階級構造)を解説した。
① 白エルフ(ハイ・エルフ): 「最上位の支配階級です。人口のわずか5%。政治・軍事・高位魔法を独占し、安全な後方や空中都市で指揮を執ります。彼らは労働を『罪』と考えており、数千年の寿命を詩歌や園芸に費やしています」
② 黒エルフ(ダーク・エルフ): 「第二位。ハイ・エルフと同等の魔力を持ちますが、『穢れた一族』として差別されています。秘密警察、処刑人、暗殺者などの『汚れ仕事』を担う実働部隊です。彼らの忠誠心は恐怖によって維持されています」
③ ハーフエルフ: 「第三位。人間との混血です。実務能力が高く、商工会や下級官吏を務めていますが、『薄汚い半端者』として蔑まれています。血の壁により出世を阻まれた、不満を持つ中間管理職層です」
「そして、その下にいるのが人間種です。彼らの扱いは、ナチスの強制収容所か、植民地支配の縮図です」
オルロフは、痩せこけたアジア系の人々が、鞭打たれながら畑を耕している写真を指差した。
④ エルオリト人(名誉人間): 「エルフに魂を売り、忠誠を誓った白人系人間です。彼らは『監督官』として、同族である人間を支配・搾取することで特権を得ています。いわゆる現地協力者です」
⑤ ナルモニア人(農奴): 「最底辺が、このナルモニア人。先住民族ですが、一切の権利を剥奪されています。教育も、移動の自由も、結婚の自由さえありません。家畜と同列に扱われ、中世暗黒レベルの生活を強いられています」
『……典型的な生物学的ファシズムだな』 スピーカーの向こうで、クリュチコフが軽蔑を露わにした声が響く。 『帝国のような実力主義ならば、敵ながら理解もできる。だが、血統の上にあぐらをかき、生産力をドブに捨てている連中は、我々の共産主義イデオロギーとは最も相容れない』
「同感です。彼らは、人間を『使い捨ての道具』としか見ていません」
2.軍事力:空の要塞と肉の壁
続いて、軍事力の分析に移る。 衛星写真には、山岳地帯の盆地に係留された、岩盤と木造船体を組み合わせた異形の艦船が映っていた。
「軍事面での最大の脅威は、この**『飛行戦艦』**です。 重力制御魔法により浮遊し、地上からの攻撃が届かない高度五〇〇〇メートルから、一方的に魔法爆撃を行います。 バリアを展開しているため通常の対空砲は弾かれますが、S-300地対空ミサイルなら撃墜可能です。ただ、山岳地帯でのゲリラ戦と組み合わせられると、制圧には時間がかかります」
『地上戦力はどうだ? エルフは数が少ないはずだが』
「地上軍は……醜悪の一言に尽きます。彼らは長命なエルフの血を惜しむあまり、**『肉壁』**戦術を採用しています」
オルロフの声に、職業軍人としての生理的な不快感が混じる。 「最前線に、粗末な槍を持たせたナルモニア人奴隷を立たせ、敵の弾除け(デコイ)にするのです。 その後ろからエルオリト人の督戦隊が銃を構え、逃げる者を射殺する。 そしてエルフ本人は、安全な空の上から、敵と味方ごと魔法で焼き払う。……これが彼らの『戦術』です」
『……士気は最低、忠誠心は皆無か』 クリュチコフが鼻で笑った。 『武器を持たせた奴隷の背中を蹴れば、その銃口がどちらを向くか。……想像力が欠如しているな』
3.結論:戦略的放置
『……なるほど。付け入る隙だらけだ』 クリュチコフの声には、獲物の喉笛を見つけた猛獣のような、静かで残酷な響きがあった。
『虐げられたナルモニア人に武器とパンを与え、不遇なハーフエルフの自尊心を煽れば、この国は内側から崩壊するぞ。 外部からの侵略ではない。「革命」という名の自壊だ』
「はい。KGBの工作員を送り込み、地下組織を作れば、一年以内に大規模な内乱を起こせるでしょう。……実行しますか?」
オルロフの問いに対し、長い沈黙があった。 電話の向こうで、書類をめくる音だけが響く。 やがて、クリュチコフは冷徹な判断を下した。
『いや……今はまだ、その時ではない』
地図上のアステリア共和国(ソ連領)には、まだ建設中の発電所や工場、そして再編中のコルホーズ(集団農場)が多数記されている。
『我々は今、魔王城跡地でのプラント建設と、アステリア全土の工業化に全力を注いでいる。足元が固まっていない。 ここで北方のエルフに手を出せば、西の帝国と合わせて二正面作戦になりかねない。資源と人員は、アステリアの地盤固めに集中すべきだ』
「了解しました。では、エルフへの当面の対応は?」
『**「戦略的放置」**だ。 国境警備を強化し、彼らの挑発には乗るな。奴らが森の中で詩を詠んでいる間に、我々は力を蓄える。 だが、手は打っておけ。ナルモニア人の集落リストと、ハーフエルフ将校のプロファイリングは続けろ。ラジオで革命放送を流すのも忘れるな』
クリュチコフは、決定事項として告げた。 『……我々の手が空き、アステリアが豊かになった時。その「格差」を見せつければ、彼らの社会は勝手にヒビが入る。 その時こそ、彼らの「ガラスの天井」を、労働者の鉄槌で粉砕してやるのだ』
「ハッ!」
オルロフは頷き、エルフ領のファイルを「保留」の棚へと移した。 美しくも残酷な翡翠の国。 その崩壊は、ソビエトの赤き巨人が、足元の開発を終えて顔を上げるその時まで、先送りされたのである。
第五章 幕間:後世の注釈 『ソ連がエルフ連合への即時介入を見送ったのは、人道的な配慮からではない。単に「コスト対効果」の計算によるものである。 しかし、この「放置」こそが、エルフ社会にとって最大の毒となった。国境の向こうで豊かになっていく元奴隷(アステリア国民)の姿は、エルフ領内の被支配階級にとって、どんな扇動よりも強烈な「革命の火種」となっていったのである。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)
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