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西方の巨鷲(ガリア)を解剖する

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、三月。  アステリア人民特別市(旧王都エリュシオン)、王宮地下最深部。  かつてアステリア王家の宝物庫であり、数々の魔法の武具や金貨が眠っていたこの石造りの大広間は、いまや冷たい蛍光灯の光と、安タバコの紫煙に満ちた、ソ連軍アステリア方面軍情報分析室へと改装されていた。


 剥き出しの石壁には、宗教画の代わりに、偵察衛星「コモス」や、現地に潜入したKGB工作員が持ち帰った数千枚の盗撮写真が隙間なく貼り付けられている。  それらが示すのは、西方の巨大な隣国――**「ガリアナ大帝国」**の姿である。


 情報参謀オルロフ少将は、モスクワと直通で繋がったホットラインの黒電話を耳に当て、直立不動の姿勢をとっていた。額には冷や汗が滲んでいる。


『……オルロフ同志。魔王討伐の祝賀ムードに水を差すようで悪いが』  スピーカーから響くのは、KGB議長ウラジーミル・クリュチコフの、北極の氷よりも冷徹な声だ。 『我々は、次の「敵」を知らねばならん。魔物はただの害獣だったが、今度の相手は「文明」だ。それも、報告によれば極めて質の悪い』


「ハッ。議長のおっしゃる通りです」  オルロフは眼鏡の位置を直し、テーブルに広げられた巨大な大陸地図の西側半分を、震える指でなぞった。 「ガリアナ大帝国。この世界において、我々が初めて『敬意』を持って警戒すべき、唯一の対等な競争相手です」


1.政治体制:ローマと中華の悪魔合体

 オルロフは手元の分厚いファイルをめくり、淡々と、しかし熱を込めて報告を開始した。


「まず、彼らの統治システムについて。外見上の構造は、地球における古代ローマ帝国のそれに酷似しています。  国家元首である『皇帝』は、単なる世襲制のお飾りではありません。軍最高司令官インペラトルとしての性質を持ち、元老院での選挙によって選出される実力者です。無能な者はそもそも帝位に就けず、就いたとしても暗殺されます」


『実力主義か。封建的なアステリアとは違うな』


「ええ。最高機関である『元老院』は、帝国貴族と、吸収した異民族の有力者によって構成されています。激しい派閥争いはありますが、それが逆に健全な競争原理として機能し、組織の硬直化を防いでいます」


 オルロフは一度言葉を切り、声を潜めた。ここからが本題だ。


「ですが、議長。最も警戒すべきはそこではありません。奴らは、我々に近い……あるいは我々以上に効率的なシステムを持っています」 『ほう? 言ってみろ』 「奴らは**『科挙』**を持っています」


 電話の向こうで、クリュチコフが息を呑む気配がした。


「身分、民族、家柄に関係なく、過酷な統一試験によって優秀な人材を選抜し、官僚マンダリンとして地方へ派遣する中央集権システムです。  帝国の統治は、貴族の気まぐれではなく、膨大な法律とマニュアルによって動く『官僚機構』によって支えられています。  これは、王の首をすげ替えれば崩壊するアステリアのような封建国家とは訳が違います。たとえ皇帝が死んでも、システムが生きている限り国は止まらない。骨格を砕かねば死なない、近代的な管理国家なのです」


『……なるほど。ローマの軍事力と、中華帝国の官僚制を併せ持つキメラというわけか。厄介極まりない』


2.軍事力:規格化された暴力と専門家集団

 続いて、オルロフはスライド映写機のボタンを押した。  壁に、帝国軍の軍事パレードの盗撮映像が映し出される。


 カシャン、カシャン、カシャン……。  整然と並ぶ重装歩兵の列。その装備は規格化されたプレートアーマーと大盾スクトゥムで統一され、一糸乱れぬ行進を行っている。


帝国正規軍レギオン。突出した英雄はいませんが、装備と戦術が徹底的に『標準化』されています。  彼らは個人の武勇を競いません。陣形を組み、交代しながら戦い、補給線(兵站)を維持して敵をすり潰す。……天才に頼らず、凡将が率いてもシステムで勝てる軍隊。皮肉なことに、まるで我々赤軍の鏡像を見ているようです」


 さらに、スライドが切り替わる。  映し出されたのは、独特の装備を纏い、殺気を漂わせる異民族の部隊だ。


「そして、硬直しかねない正規軍の穴を埋めるのが、被征服民族から供出される専門兵科――『補助兵力アウクシリア』です。特に警戒すべきは、以下の三つの戦闘部族です」


 オルロフは指示棒で、三枚の写真を順に叩いた。


① 山岳・森林の狩人「ゴルニア人」 「帝国北部の山岳森林地帯出身、『ゴルニア長弓兵』。  彼らが操る長大な複合弓コンポジットボウは、数百メートルの距離から騎士の板金鎧を貫通します。試算では、我が軍の軽装甲車(BTR)や兵員輸送車の側面装甲すら脅かします。  彼らは森に溶け込み、音もなく忍び寄り、装甲の継ぎ目を狙う。市街戦や森林戦になれば、我々の歩兵にとって悪夢となるでしょう」


② 沿岸部の海賊「ラーシ人」 「帝国西岸の海洋民族、『ラーシ海兵隊』。  彼らはヴァイキングのような喫水の浅い高速船を操り、外洋だけでなく、河川を遡上しての内陸攻撃を得意としています。  我が軍の生命線は鉄道と水運です。もしドニエプル川のような大河を遡上されれば、後方の補給基地や橋梁が破壊される恐れがあります」


③ 大平原の機動部隊「スキフン人」 「そして、南東部の広大な草原地帯を駆ける、『スキフン騎兵』。  かつて帝国の最大の敵でしたが、今は土地を与えられ、帝国の尖兵として機動戦を担っています。  彼らは『パルティアン・ショット』のような機動射撃術を持ち、散開と集中を自在に行います。戦車部隊ならば追いつけますが、歩兵や砲兵部隊が平原で遭遇すれば、一方的に蹂躙される可能性があります」


『硬い正規軍と、柔軟かつ特殊技能を持つ補助部隊か。……ナポレオンを苦しめたかつてのロシア軍のような、粘り強さと狡猾さだな』


3.文化・技術:最大の懸念「模倣」

 オルロフは、最後の資料――帝国領内で撮影された、巨大な水車工場の写真を提示した。  そこには、歯車と滑車を用いた、原始的ながらも大規模な自動ハンマーの列が写っていた。


「しかし、議長。私が戦車や弓以上に懸念しているのは、彼らの軍事力そのものではなく、その『精神性』です」


『精神性?』


「はい。帝国は元々小国であり、他国の先進的な文化や技術を貪欲に『模倣・吸収』して巨大化してきた歴史を持ちます。  彼らはエルフのように魔法に固執せず、アステリアのように伝統に縛られません。実利があれば、敵の技術でも神の教えでも、平気で取り込みます」


 オルロフは自問自答するように続けた。 「……もし、奴らが我々のT-80戦車を見たら、どうすると思いますか?」


『……祈りはしないだろうな』


「ええ。彼らはそれを『神の馬車』とは呼ばず、『鉄の箱』として鹵獲し、徹底的に分解・スケッチするでしょう。  彼らには高度な土木技術と、水力を動力源とする機械産業の土台があります。  内燃機関や電子機器の複製は不可能ですが、構造さえ理解すれば、数年後には蒸気機関で動く似たような装甲車や、旋条ライフリングを施した大砲を作ってくる可能性があります」


 沈黙が流れた。  魔法を使うだけの未開人なら、火力で圧倒できる。  だが、「学ぶ敵」「考える敵」は厄介だ。放置すれば、彼らは必ずソ連の技術を盗み、追いついてくる。


4.結論:冷戦の開始

『……分かった』  スピーカー越しのクリュチコフの声が、一段と低く、そしてドス黒い色を帯びた。


『正面から殴り合えば、軍事的には勝てるだろう。だが、泥沼になる。広大な領土、多様な民族、そしてゲリラ戦。アフガニスタンの二の舞いだ。  何より、戦場で兵器を奪われ、技術を盗まれるリスクが高すぎる』


「同感です。……どう動きますか?」


『即時開戦は避ける。当面は**「冷戦」**だ』


 モスクワからの指令は、陰湿かつ実利的な、KGBの本領発揮とも言えるものだった。


『KGB第1総局の出番だ。  帝国の元老院に入り込み、派閥対立を煽れ。  科挙に落ちた不満分子、出世の道を閉ざされたゴルニア人やラーシ人の若者を吸収し、我々の思想ウイルスを注入しろ。  そして、安価なソ連製プラスチック製品とウォッカを市場に流し込み、帝国のギルド経済を破壊し、我々に依存させるのだ』


 クリュチコフは楽しげに笑った。 『……奴らが我々を模倣する前に、内側から腐らせてやる。文明という名の病原菌でな』


 オルロフは、画面の向こうで冷酷に微笑む議長の顔を想像し、カカトを鳴らして敬礼した。


「了解しました。……ガリアナ大帝国。奴らの『双頭の鷲』の首を、一つずつへし折って差し上げましょう」


 モニターには、アステリア大陸の西半分を覆う帝国の「黄金色」の版図と、東から広がるソ連の「赤色」が、大陸中央部でぶつかり合う図面が映し出されていた。


 熱い戦争は終わった。  だが、より陰湿で、より残酷な、文明と文明がテーブルの下で足を蹴り合う「冷たい戦争」が今、静かに幕を開けたのである。


第五章 幕間:後世の注釈 『一九九〇年時点におけるソ連の対ガリアナ戦略は、「軍事的不干渉・経済的侵略」に集約される。  ソ連は、帝国が持つ「学習能力」と「異民族の統合力」を正しく恐れていた。だからこそ彼らは、戦車ではなく、安価なナイロン製品と革命思想という「毒」をもって、この巨大な鷲を病死させる道を選んだのである。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)

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