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魔王という名の現象

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、二月。  三発の戦略核による「熱消毒」から一ヶ月が経過したアステリア大陸中央部。  かつて魔王の玉座があったとされる「爆心地グラウンド・ゼロ」には、今、巨大な掘削リグと、数十台の移動式分析ラボ(トレーラー)が展開していた。


 まだ硫黄の臭いと熱気が立ち込める中、ソビエト科学アカデミーから派遣された特別調査団は、白い化学防護服に身を包み、まるで月面か異星の遺跡を調査するかのような慎重さで、瓦礫の下に広がる地下空洞へと足を踏み入れた。


1.玉座なき廃墟

 地下空洞は、広大だった。  核の直撃を受けた上層部は溶解してガラス化していたが、地下数百メートルに及ぶ深層部は、奇跡的にその形状を留めていた。


 先頭を進むスペツナズ(特殊部隊)の隊員が、アサルトライフルの銃身下部に取り付けた強力なハロゲンライトで、数千年の闇を切り裂く。  調査団の団長であり、生物物理学の権威であるポポフ博士は、防護マスクの呼気音を響かせながら、周囲を見回した。


「……おい、あれを見ろ」


 光の先に浮かび上がったのは、伝説にあるような黄金の財宝でも、禍々しい魔王の彫像でも、ましてや支配者の玉座でもなかった。  それは、壁一面に、天井に、そして床にびっしりと産み付けられた、無数の半透明の**「卵」**の残骸だった。


 あるものは人の頭ほど、あるものは戦車ほどもある巨大な卵。  その多くは核の衝撃で潰れていたが、床には、孵化したばかりの幼生や、成体になりきれずに共食いをして死んだ魔物の死骸が、泥のように堆積していた。


「ここは城じゃない……」  ポポフ博士が、計測器を握りしめたまま呻いた。 「ここは……巨大な**『孵卵器インキュベーター』**だ」


 彼らが想像していた「悪の帝国の首都」というロマンチックな概念は、圧倒的な生物学的現実の前に崩れ去った。  ここには政治も、文化も、統率された軍隊もなかった。  ただ、抑制の効かない「過剰繁殖」と、醜悪な「生存競争」の痕跡だけが、化石のように残されていた。


2.解剖台の上の真実

 数時間後。地上に設置された仮設ラボ(無菌テント)では、地下から回収された比較的保存状態の良い魔物の死骸の解剖が行われていた。  手術台の上に乗せられているのは、身長三メートルを超えるオーク・ロードの遺体だ。


 メスを握る解剖医の手が止まる。 「博士、見てください。……消化器官がありません」


 開かれた腹腔内には、胃も腸も存在しなかった。  代わりに、心臓部にある紫色の結晶体(魔石)から、全身の筋肉へ向けて血管のように張り巡らされた、発光する管(生体魔力伝導路)が確認された。


「摂食の必要がないのです。彼らは、何かを食べてカロリーを得る生物ではない」  解剖医は、ピンセットでその管をつまみ上げた。 「彼らは、大気中に充満する高濃度のマナを肺から直接取り込み、体内で活動エネルギーに変換して動いていた。……生物というよりは、マナで動く『生体機械』に近い」


 ポポフ博士は深く頷き、ガイガーカウンターに似た形をした「マナ測定器」を、テントの外、地下へと続く巨大な亀裂に向けた。  ガガガガッ!  針が右端まで振り切れ、激しい警告音が鳴り響く。


「やはりな。こいつらが、他の場所ではなく、この不毛の荒野に集まっていた理由がわかった」  博士は、分厚い眼鏡の奥で目を細めた。 「……この地下には、とてつもない『餌』がある」


3.地脈血栓説

 調査開始から一週間後。  モスクワの科学アカデミー本部、およびアステリア方面軍司令部に送られた最終報告書は、アステリア大陸の歴史と宗教観を根底から覆す衝撃的な内容だった。


 報告書のタイトルは**『アステリア中央部における高濃度マナ領域の成因について』**。


 ポポフ博士のチームが地質学的調査ボーリングによって突き止めたのは、この地が大陸地下を流れる七つの巨大な「地脈レイライン」の交差点であるという事実だった。  通常、マナは水のように地中をサラサラと流れる。しかし、この地点では数千年前の地殻変動か何かの原因で流れが物理的に阻害され、巨大なダムのようにエネルギーが蓄積されていた。


地脈血栓レイライン・トロンボース』。  博士はそう名付けた。


 行き場を失い、滞留したマナは臨界圧力クリティカル・プレッシャーを超えて変質し、「悪性マナ」と呼ばれる放射能に似た毒性エネルギー体となった。  それが地表へ溢れ出し、周囲の生物のDNAを破壊・再構築(汚染)。急速な変異と巨大化を引き起こしたのが、魔物たちの正体だったのだ。


「つまり、『魔王』とは個体名ではない」


 現地の司令部作戦室で、報告を聞いたヴァシリー大将が、葉巻の煙を吐き出した。 「この異常なエネルギー噴出バグという『自然現象』そのものを、中世レベルの現地人が人格化して呼んでいただけか」


「左様です、同志将軍」  ポポフ博士は、スクリーンに映し出された地脈のシミュレーション図を指した。 「玉座に座る支配者など、最初からいなかったのです。そこにあったのは、壊れた配管から漏れ出すガスと、それに群がる蛾(魔物)だけです」


4.転換:地獄から資源へ

 真実が明らかになった瞬間、ソ連軍の態度は「警戒」から**「貪欲」**へと一変した。  未知への恐怖の対象であった「魔王の呪い」が、物理学的に説明可能な「エネルギーの噴出」だと判明したのだ。  ソビエト人にとって、理解できる現象は、利用できる資源でしかない。


「同志ポポフ。単刀直入に聞こう。この『血栓』から噴き出すエネルギー量は、どれくらいだ?」 「計算不能ですが……試算では、現在ソビエト連邦が消費する全電力の数百年分は賄えるでしょう。しかも、枯渇の心配がありません。事実上の『無尽蔵』です」


 ヴァシリー大将の無骨な顔に、獰猛な笑みが浮かんだ。  彼は即座に、クレムリンへの直通電話ホットラインの受話器を手に取った。


『……モスクワだ。報告を聞こう、ヴァシリー同志』  電話の向こうから、ゴルバチョフ書記長の声が響く。 「書記長同志。……朗報です。魔王の正体が判明しました。奴は敵ではありませんでした」 『……どういうことかね?』


 ヴァシリーは、窓の外に広がる黒い荒野と、そこから立ち上る紫色の蒸気を見つめながら言った。


「奴は、同志です。我々の共産主義社会を未来永劫照らし続ける、無尽蔵の**『油田』**でした」


5.プロジェクト・プロメテウス

 翌日、アステリア方面軍にはモスクワから新たな命令書が下された。  それは「魔王城の完全破壊」ではない。  **「魔王城跡地への、超巨大エネルギー・プラントの建設」**であった。


 作戦名は**「プロジェクト・プロメテウス」**。  神から火を盗んだ神話になぞらえ、異世界の地脈からエネルギーを搾取する国家事業である。


 かつて勇者たちが命を散らし、世界中が恐れおののいた絶望の荒野。  そこに今、ソビエトの工兵たちが重機を入れ、コンクリートの基礎を打ち込み始めている。  地脈から溢れ出す紫色の光は、もはや死の呪いではない。  巨大なタービンを回し、夜を照らし、製鉄所を動かすための「燃料」として、鉛と鉄のパイプラインの中に封じ込められようとしていた。


 神話の怪物は解剖され、物理法則という檻の中に閉じ込められた。  こうして、第五章のテーマは「戦争」から「開発」へと、劇的にその姿を変えたのである。


第五章 第四話:後世の注釈 『ソ連の科学者たちは、魔王というファンタジーの概念を解剖台に乗せ、唯物論的なメスを入れた。  その結果、そこにあったのは邪悪な意志ではなく、単なる「物理現象の滞留」であった。  神秘が科学によって解明された時、それは恐怖の対象から、管理すべき「資源」へと価値を転換させた。このパラダイムシフトこそが、後の「魔導産業革命」を引き起こすトリガーとなったのである。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)

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