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二つの太陽、或いは断頭台

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、一月。  アステリア社会主義共和国、首都人民特別市(旧王都エリュシオン)。  かつて王が諸侯からの謁見を受けた絢爛豪華な大広間は、いまやアステリア方面軍総司令部の作戦室へと改装されていた。  壁に飾られていた神々の宗教画は撤去され、代わりに巨大な大陸地図とレーニンの肖像画が掲げられている。クリスタルのシャンデリアの下では、安タバコの紫煙と、参謀たちの怒号が渦巻いていた。


 議題はただ一つ。大陸中央部に居座り、開発を阻害する癌細胞――**「魔王領域」**の排除である。


1.参謀本部の冷徹な算術

「同志司令官、これが偵察衛星『ゼニット』および高高度偵察機が捉えた、魔王領域の最新画像です」


 情報参謀がスライドを切り替える。  幻灯機の光がスクリーンに映し出したのは、悪夢としか言いようのない光景だった。  荒れ果てた黒い大地。毒々しい紫色の霧。そして、その中を山脈が動いているかのような巨体が闊歩している。


「識別名**『ベヒモス』**。推定全長一二〇メートル、体高六〇メートル。外皮はオリハルコンに匹敵する硬度の鉱物化装甲で覆われており、さらに常時、多重のマナ障壁シールドを展開しています」


 情報参謀は、指揮棒でその巨体を指し示した。 「……問題は、この戦略級の個体が、観測範囲だけで十二体も徘徊していることです」


 その報告を聞いた兵站ロジスティクス担当の将校が、悲鳴のような声を上げた。 「一二〇メートルだと? ……ふざけるな!」  彼は手元の電卓を叩き、顔面蒼白で叫んだ。 「試算では、こいつを一体仕留めるのに、125ミリ徹甲弾(APFSDS)の集中砲火が最低でも五〇〇発は必要になります。十二体なら六千発。随伴する数万のオーク・ロードやドラゴンの群れまで含めれば、弾薬の消費量は一個方面軍の半年分に達します!」


 彼は机上の書類を叩きつける。 「本国からのシベリア鉄道輸送コストを考えてください! 輸送費だけで国家予算が飛びます。経済的に全く割に合いません!」


 さらに、技術将校が追い打ちをかけるように挙手した。 「環境汚染も深刻です。領域深部のマナ濃度は、ガイガーカウンターが振り切れるほどの致死レベルです。鉛入りの防護服を着ても、T-80戦車の電子機器は三時間で焼き切れるでしょう。……まともに進軍すれば、敵と戦う前に我が軍は自壊します」


 重苦しい沈黙が場を支配した。  ソ連軍は無敵ではない。彼らは「物理法則」という神に仕える軍隊であり、コストと効率という鎖に縛られている。  「勇気」や「奇跡」で戦うファンタジーの軍隊とは違うのだ。  山のような怪物を相手に、泥沼の消耗戦を行う余裕は、復興途上のアステリアにはなかった。


「……通常戦力での突破は不可能、か」


 方面軍司令官ヴァシリー大将は、短く刈り込んだ白髪を撫でながら、深く息を吐いた。  彼は、部屋の隅、影になる場所に座っていた一人の男に視線を向けた。  モスクワから派遣された、戦略ロケット軍の連絡将校である。


「モスクワの意向は?」


2.条約という名の死刑執行書

 連絡将校は無表情に立ち上がり、一枚の書類をテーブルに滑らせた。  そこには、キリル文字で**『中距離核戦力全廃条約(INF)履行に関する特別措置』**と記されていた。


「司令官同志。地球では、アメリカとの条約により、我々の中距離弾道ミサイルは『廃棄』される運命にあります」  将校は、事務的な口調で続けた。 「……シベリアの凍土で解体し、安全にスクラップにするには多額の費用がかかる。ゴルバチョフ書記長は、その『有効活用リサイクル』を望んでおられます」


 その言葉の意味を理解した瞬間、作戦室の空気が絶対零度まで凍りついた。  名ばかりの最高指導者、カイル書記長が青ざめた顔で立ち上がる。椅子が倒れる音が響いた。


「ま、待ってください。有効活用とは……まさか、あの禁忌の兵器を使うつもりですか? あの一帯には、まだ独自の生態系や、もしかしたら知的生命体がいるかもしれない!」


 ヴァシリー大将は、冷ややかな視線をカイルに向けた。 「カイル同志。君たちの伝承でも、魔王は『世界を滅ぼす災厄』であったはずだ。害虫駆除に、殺虫剤の成分を気にする者はいない」 「しかし、あれを使えば、大地は死に絶えます! 復興など……」 「汚染なら、我々の化学防護部隊ヒム・ヴォイスカが処理する。それに天秤にかけてみたまえ。数万のソビエト兵の命と、どうせ廃棄する予定のミサイルの在庫。どちらが惜しいかは明白だ」


 大将は、決定事項として断言した。 「これは戦争ではない。大規模な『土木工事』だ。……作戦を承認する。即時、在庫処分ランチを開始せよ」


3.ボタンは押された

 アステリア大陸北部、永久凍土が広がる無人の荒野。  ブリザードが吹き荒れる中、雪に擬態したソ連軍の車列が停止した。


 MAZ-547V・六軸十二輪の巨大な移動式ミサイル発射台(TEL)が、油圧音を立ててその背中の巨大なキャニスターを垂直に持ち上げた。  搭載されているのは、RSD-10**「ピオネール」**。  NATO諸国が「SS-20」のコードネームで恐れおののいた、最新鋭の移動式中距離弾道ミサイルである。


 発射管制車の中では、若い将校たちが淡々と手順シークエンスをこなしていた。  彼らの顔に、敵を殺す高揚感はない。彼らにとって、これは地球を滅ぼす核戦争の引き金ではない。条約で決まった「廃棄処分」の実務であり、今日こなすべきノルマに過ぎない。


「目標座標、魔王領域中心部、およびベヒモス生息域」 「安全装置解除。ジャイロ始動。……全回路、グリーン」 「発射十秒前……五、四、三、二、一……発射プースク!」


 ドォォォォォン!!


 荒野の大地を揺るがす轟音。  キャニスターからコールドランチ方式で射出されたミサイルが、空中でロケットモーターに点火する。  大地を焦がす爆風と共に、三基の「死の天使」がアステリアの空へと解き放たれた。  それは、魔法使いの詠唱も、祈りも必要としない。  ただ物理学とロケット工学の結晶として、雲を突き破り、成層圏へと駆け上がっていく。


4.神話の消滅

 魔王領域。  そこは、常闇の雲に覆われ、地脈から溢れ出した高濃度のマナが紫色の稲妻となって走り回る、死の世界だった。


 全長一二〇メートルの巨獣ベヒモスは、岩山のような体躯を揺らしながら、侵入者を待ち構えていた。  彼らは数千年の間、この地を犯そうとするあらゆる勇者や軍隊を、その圧倒的な質量と、物理攻撃を無効化する魔力障壁で粉砕してきた絶対強者だった。  彼らにとって、自分たちこそがこの世界の頂点であり、神そのものだった。


 彼らの本能が、上空からの「異変」を感知したのは、その時だった。  分厚い雲を切り裂き、空の彼方から、三つの「星」が降ってくる。  それはドラゴンのブレスよりも速く、隕石よりも正確に、彼らの頭上へと落下した。


 上空数千メートルで、弾頭が分離する。  一つのミサイルから放たれた三つの核弾頭(MIRV)が、幾何学的な美しさで広がり、目標地点を包囲した。


 カッッッッ――――!!!!


 アステリア大陸に、二つの太陽が昇った。


 否、それは太陽などという生易しいものではない。中心温度数百万度、地上に現出した地獄の窯が開いた瞬間だった。


 音速を超えて広がる衝撃波と熱線は、ベヒモスの自慢の「物理攻撃無効」の魔導外皮を、その巨体ごと瞬時に蒸発させた。  山のような怪物は、悲鳴を上げる暇さえなく、原子レベルで分解され、ただの黒い影となって大地に焼き付いた。  魔王城と呼ばれた巨大な岩塊の構造物は、熱線によって飴細工のように溶解し、続く爆風によって根こそぎ吹き飛ばされた。  紫色の霧も、オークの大軍も、すべては白い光の中に消えた。


5.科学という名の絶望

 数十キロ離れた丘陵地帯。  監視任務に就いていたソ連軍の前線兵士たちは、分厚い防護ゴーグル越しにその閃光を目撃した。


 地平線を覆い尽くす巨大なキノコ雲。  成層圏まで届くその禍々しい雲は、アステリアの神話を物理的に終わらせる狼煙のろしだった。  衝撃波が遅れて届き、彼らの軍服を激しくはためかせる。


「……おい、見たかよ」  若い兵士が、ガスマスクの下で震える手で十字を切った。 「あれが、俺たちの国の『魔法』か……」


 隣にいた古参の軍曹は、唾を吐き捨てて言った。 「魔法じゃねえよ。あれは『科学』だ。……神様だろうが魔王だろうが、計算式通りに燃えるだけの燃料ってことさ」


 アステリア歴X年X月X日。  数千年にわたる「魔王の時代」は、終わった。  選ばれた勇者の聖剣ではなく、条約廃棄処分の戦略核によって。  魔王という概念は、物理的に「キャンセル」されたのである。


第五章 第一話:後世の注釈 『一九九〇年の魔王討伐における核使用は、当時のソ連にとって一石二鳥の妙手であった。  彼らは、通常兵器ではコストが見合わない厄介な敵を排除すると同時に、INF条約によるミサイル廃棄義務を「実戦使用による消費」という形で履行したのである。  この冷徹なまでの合理性こそが、後のアステリア開発を加速させる原動力となったが、同時にこの世界から「神秘」を永遠に奪い去る決定打ともなった。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)

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