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【幕間】鋼鉄の龍と草原の民

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九二年、秋。  アステリア大陸中央部に広がる広大な大草原。  そこは数千年の間、風と馬、そして剣のみを信じる遊牧騎馬民族**「疾風ハヤテの部族」**の聖域だった。  彼らは国境を持たず、季節と共に移動し、大地に縛られない自由を謳歌していた。


 しかし、その永遠と思われた風の支配は、唐突な地響きと共に終わりを告げようとしていた。


1.地を這う黒い魔物

 族長のガルダンは、愛馬を草むらに伏せさせ、丘の上から眼下の光景を凝視していた。彼の背後には、数百騎の精鋭たちが、恐怖と畏敬の混じった表情で同じものを見つめている。


 地平線の彼方から、黒い煙を噴き上げる巨大な「何か」が迫ってきていた。  それは長い胴体を持ち、大地を揺るがす咆哮を上げながら、一定の速度で進んでくる。


「……古の伝説にある『鋼鉄の地龍』か?」  部下の一人が震える声で尋ねた。 「分からぬ。だが、あの巨体だ。もし暴れ出せば、我らの弓矢など爪楊枝にもなるまい」


 彼らが見ていたのは、ソビエト連邦が資源輸送のために敷設したばかりの広軌鉄道を走る、2TE116形ディーゼル機関車が牽引する重量貨物列車であった。  全長一キロメートルにも及ぶ貨車には、アステリアの鉱山から掘り出された魔鉱石やレアメタルが満載されている。  だが、魔導文明に生きる彼らにとって、それは未知の、圧倒的な質量と熱量を持つ「魔物」に他ならなかった。


2.観察:従順なる巨獣

 ガルダンたちは、慎重な狩人だった。  彼らは数日間にわたり、その「魔物」を遠巻きに追跡・観察した。そして、一つの奇妙な法則性に気づく。


「族長、奴は決まった『鉄の道』の上しか通りません」  斥候が報告した。 「家畜を襲うわけでもなく、我らを追いかけてくる気配もない。ただ、東から西へ、西から東へ、同じ道を往復しているだけです」


 魔物は、ただひたすらに黒い煙と未燃焼軽油の臭いを撒き散らし、荷物を背負って移動を繰り返すだけだった。


「……どうやら、あれは肉食の捕食者ではないらしい。あるいは、特定の縄張り(テリトリー)を巡回するだけの、巨大な草食獣に近いのかもしれん」  ガルダンは安堵の息を吐いた。  この草原は広い。あの魔物が鉄の道から外れないのであれば、我々はそれに近づかなければいいだけだ。草原は、彼らと我々が共存できるほどに十分広い。  彼らはそう結論づけ、警戒を緩めて線路から数キロ離れた場所で野営の準備を始めた。


 だが、彼らは知らなかった。  その「魔物」の頭脳部分(運転席)には、冷徹な監視者が乗っていることを。


3.報告:座標上のノイズ

 同時刻、機関車の運転席。  ロシア人の機関士は、振動する計器パネルの前で無線機の受話器を握り、あくび混じりに報告していた。


「こちら第4輸送列車。エリアB-7、キロポスト104地点にて、多数の武装集団を確認。馬に乗った現地人だ。数はおよそ三〇〇」 『了解プリニョート。脅威度は?』 「現時点では線路への妨害行為なし。だが、直近で野営を始めている。輸送の安全上、目障りだ。それに奴ら、武装している」


 機関士にとって、窓の外に見える草原の戦士たちは、誇り高き部族などではなかった。  重要な国家資源を運ぶルート上に存在する、運行ダイヤを乱す可能性のある「不確定要素」。  すなわち、除去すべき**「ノイズ」**でしかなかった。


『確認した。……同志、そのまま定刻通り運行せよ。掃除屋クリーナーを送る』


4.包囲:空からの羽音

 翌日の昼下がり。  ガルダンたちが羊の肉を焼き、馬乳酒を回し飲みして休息を取っている時だった。


 風の音が、変わった。  草原を吹き抜ける爽やかな風ではない。空気を無理やり叩きつけ、千切り、耳を聾するような異質な重低音。  パララララララ……!!


「族長! 空から……空から何かが!」  見上げれば、太陽を背にして四機の「空飛ぶ鉄の虫」――Mi-24「ハインド」攻撃ヘリコプターが飛来していた。  さらに、草原の四方からは、土煙を上げてBTR-80装甲兵員輸送車の車列が迫り、彼らを完全に包囲していた。


「な、なんだ奴らは!? 鉄の魔物の眷属けんぞくか!?」  戦士たちが慌てて弓を構え、部族の魔導師が防御魔法の詠唱を始める。  しかし、空中の「鉄の虫」は、彼らの矢が届く射程のはるか外側、上空五〇〇メートルで静止した。  機首の下にある凶悪な12.7ミリ4銃身機銃が、ゆっくりと首を振ってこちらを向く。


 ドゥルルルルッ!  乾いた発射音。  次の瞬間、野営地のすぐ手前の地面が、見えない巨人の鎌で薙ぎ払われたかのように爆ぜた。土塊が高く舞い上がり、数頭の馬がパニックになって逃げ出す。


 ガルダンは戦慄した。  魔法障壁も、鍛え上げた肉体も、あの暴力的な破壊力の前では紙屑に等しい。  殺す気なら、今の射撃で我々はミンチになっていたはずだ。これは警告だ。  彼は悟った。あの「地を這う魔物」は従順な草食獣などではなかった。この恐ろしい「鋼鉄の群れ」の、ほんの一部に過ぎなかったのだ。


5.屈服:遊牧の終わり

 頭上でホバリングするハインドの風圧に煽られながら、ガルダンは震える手から弓を落とした。 「……武器を捨てろ! 抵抗するな、皆殺しにされるぞ!」


 族長の悲痛な叫びと共に、草原の民は膝をついた。  BTRから降りてきたソ連兵たちは、銃を構えながら手際よく彼らの武装を解除し、馬を接収していく。


 拡声器を持った政治将校(通訳官)が進み出て、無機質な声で宣言した。 「諸君の身柄は、アステリア社会主義共和国が保護する。君たちは今日から、不安定で非生産的な略奪生活を捨て、文明的な**『定住労働者』**となる権利を得た」


「……我々から、草原を奪うのか?」  ガルダンの問いに、将校は薄く笑って首を横に振った。 「奪うのではない、『管理』するのだ。この草原は、今後ソ連の穀倉地帯となる。君たちにはそこで、トラクターに乗って麦を作ってもらう。馬に乗って走り回るよりも、よほど社会の役に立つ仕事だ」


 彼らには、由緒ある部族名の代わりに「国民識別番号」が記されたカードが渡された。  ある者は集団農場コルホーズの牧畜部門へ。ある者は鉱山の選別作業員へ。  家族は引き離され、別々のトラックへと乗せられていく。


 連行されるトラックの荷台から、ガルダンは遠ざかる草原を見つめた。  そこには、変わらず黒い煙を吐いて走る機関車の姿があった。  かつて彼らが駆け巡った自由な大地は、今や鉄の線路と有刺鉄線によって区切られた、ソビエト連邦の巨大な「生産区画」へと変わっていたのである。


 風は止んだ。  これより先、彼らの頬を撫でるのは、工場の排煙と、ノルマという名の重たい空気だけであった。


第四章 第七話:後世の注釈 『草原の遊牧民たちが「鉄の魔物」と呼んだ機関車は、彼らにとって文明の死神であった。ソ連は彼らを虐殺したわけではない。ただ、彼らの誇りである「移動の自由」を効率の敵と見なし、管理された労働力へと再利用しただけである。一九九二年、剣と魔法は「管理社会」という名の怪物に敗北し、アステリアから「未開」の二文字は消滅した。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)

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