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直線的なる進歩

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九一年。  地球側ではソビエト連邦の崩壊危機が囁かれ、クレムリンが激動の最中にあった頃。  次元の向こう側、アステリア社会主義共和国では、本国の混乱など嘘のような「建設の狂騒」が支配していた。


 ソビエト連邦において、地図上の二点を結ぶ最も美しい線は「直線」である。  そこに聖なる森があれば焼き払い、神の住む谷があれば埋め立てる。  測量士が引いた一本の赤線ラインこそが絶対の法であり、自然環境への配慮などというブルジョワ的な感傷は、アステリアにおける「自然改造計画」には微塵も存在しなかった。


1.空の支配:生物学的脅威への対処

 インフラ建設に先立ち、ソ連軍が最初に着手したのは「空の安全」の確保であった。  アステリアの空には、ワイバーンやグリフォンといった大型飛行生物が生息している。これらは航空機にとってのバードストライク以上の脅威であり、物資を運ぶ輸送ヘリにとっては、装甲を貫く致命的な敵対勢力となり得た。


 アステリア中央山脈、標高二〇〇〇メートルの岩場。  かつてドラゴンの巣と呼ばれた場所には、今や回転式のP-18早期警戒レーダーが設置され、その周囲をZSU-23-4「シルカ」対空自走砲が睨みをきかせている。


 レーダーサイトの管制室で、兵士が退屈そうにヒマワリの種を噛んでいた。 「感あり。方位〇三〇、距離一二キロ。低空を接近する大型生物反応。……またか」 「識別信号(IFF)なし。許可なき飛行物体と認定。事務的に処理しろ」


 岩陰に潜んでいたシルカの砲塔が、油圧音を立てて旋回する。  スコープに映し出されたのは、翼長十メートルを超える「ワイバーン・ロード」。縄張りを荒らされた怒りに燃え、鋼鉄の侵入者を排除しようと急降下してくる空の王者だ。


 だが、その勇猛さは現代兵器の前では無意味だった。  ババババババッ!  四連装23ミリ機関砲が火を噴く。  毎分三四〇〇発という金属の嵐。ワイバーンは、自分が何に攻撃されたのかも理解できぬまま、徹甲焼夷弾の驟雨しゅううに翼をもがれ、胴体を千切られ、ただの肉塊となって墜落していった。


「目標消滅。……次、方位一八〇からグリフォンの群れ」  神秘的な魔獣の脅威は、レーダーと弾道計算機によって「排除すべき航空障害物」へと分類され、ベルトコンベア式に処理されていった。  アステリアの空から、神話の色が消えていく。


2.聖域のダム建設:神と重機の対峙

 空の安全が確保されると、地上では大規模な土木工事が開始された。  最大のプロジェクトは、アステリア大陸最大の水量を誇る「青鏡渓谷せいきょうけいこく」における巨大水力発電ダムの建設だった。  ここを塞き止め、巨大なタービンを回せば、新設される重工業地帯の電力需要を全て賄うことができる。


 しかし、着工直後に現場は凍りついた。  掘削作業を行っていたKrAZダンプカーが、突如として湖から噴き上がった水柱に吹き飛ばされたのだ。


「去れ! ここは我が寝床、水のことわりが支配する聖域である!」


 湖面が爆発し、伝説の**「水龍ヴォジャノーイ・ドラグ」**が姿を現した。  全長五十メートルを超える青銀の巨体。その鱗はミスリルのように輝き、眼光は人の魂を凍らせる。その咆哮だけで重機のアームが震え、作業員たちは恐怖に竦み上がった。  水龍は強大な魔力を練り上げ、湖水を操って工事用道路を押し流そうとした。


「あ、あれは……この谷の主様だ!」  現地徴用されたドワーフや人間の労働者たちは、工具を放り出して地面に額を擦り付けた。 「神がお怒りだ! もう終わりだ、祟り殺されるぞ!」


 現場はパニックに陥った。だが、現場指揮官であるソ連軍工兵大佐は、不愉快そうに腕時計を見ただけだった。 「……工期の遅れは許されん。モスクワのゴスプラン(国家計画委員会)は、神の怒りよりも恐ろしいのだぞ」


 彼は無線機を取り出し、冷徹な声で命令を下した。 「こちら建設司令部。開発を阻害する『反動勢力』を確認した。直ちに排除せよ」


3.執行:152ミリの鉄槌

 ソ連軍の回答は、対話でも、鎮めるための祈りでもなく、圧倒的な「質量」だった。


 渓谷を見下ろす高台に展開していた砲兵大隊の、2S3「アカーツィヤ」152ミリ自走榴弾砲。その一八門の砲口が、一斉に湖上の巨体へと向けられる。 「目標、湖上の大型生物。榴弾、信管瞬発。全門、効力射てーっ!」


 ズドォォォォン!!  大気を引き裂く轟音と共に、一八発の砲弾が音速を超えて飛翔する。  水龍は咄嗟に反応した。数千年の時を生きた彼の本能が、死の接近を告げていた。 『愚かな! 神の加護を破れると思うか!』  彼は幾重もの魔法障壁マナ・シールドを展開した。それは、勇者の剣技や、城攻めの投石機ならば完全に防げただろう。


 しかし、飛来したのは現代物理学の粋を集めた、四三キログラムの鋼鉄とトリニトロトルエン(TNT)の塊である。  着弾速度、マッハ1.5。運動エネルギーと爆発エネルギーの複合衝撃。


 ドォォォォン!!  着弾の瞬間、魔法障壁はガラス細工のように粉砕された。  物理的な破壊力は、神秘的な防御という概念をあっさりと貫通し、龍の自慢の鱗を抉り、肉を千切り飛ばした。


「ギャァァァァァッ!!」  神の絶叫が渓谷に木霊する。だが、ソ連軍の砲撃手順ルーチンに慈悲はない。 「修正なし。次弾装填、撃て!」  第二射、第三射。  湖面は水柱と血飛沫で赤く染まる。圧倒的な「暴力の数式」が、生ける伝説をただの肉塊へと還元していく。  魔法を唱える隙さえ与えられない。数分と経たずに、かつての神は首を吹き飛ばされ、湖面に巨大な波紋を残して沈黙した。


4.礎:神の屍の上で

 戦闘――いや、一方的な害獣駆除作業が終わると、硝煙が晴れるよりも早く、現場監督の怒号が飛んだ。 「何をしている! 作業再開だ! ノルマを取り戻せ!」


 水龍の巨大な死体は、引き揚げられることも、埋葬されることもなかった。  技師たちは冷淡に図面を修正し、決定を下した。 「ちょうどいい。あの骨格は強度が極めて高い。ダムの基礎部分の埋め立てフィラーとして利用する」


 巨大なミキサー車が列をなし、龍の死体の上から大量のコンクリートを流し込んでいく。  かつて人々が崇め、供物を捧げた輝く鱗も、強大な魔力を秘めた心臓も、すべてはソビエトの灰色コンクリートの中に永遠に封じ込められた。  神秘は、インフラの一部となったのだ。


 数ヶ月後、完成したダムの礎石には、龍の霊を慰める言葉など一文字も刻まれなかった。  そこにあるのは、ただ無機質な銘板だけ。 『一九九二年完成 アステリア社会主義共和国 第3水力発電所』


5.直線的なる風景

 一九九三年。  アステリアの風景は一変していた。


 かつて旅人たちが迷い、吟遊詩人が歌った曲がりくねった街道は消滅した。  王都と地方鉱山を結ぶ平原には、定規で引いたような一直線の高速道路が地平線の彼方まで伸び、聖なる森を切り裂いて敷設された鉄道の上を、黒煙を吐く貨物列車が疾走している。  空には高圧送電線が張り巡らされ、もはやドラゴンの翼が羽ばたく余地はない。


 ダム湖の畔で、現地の子供が、清掃作業員として働く老人(かつての神官)に尋ねた。 「おじいちゃん、ここに水神様がいたって本当?」  老人は、巨大なコンクリートの壁を見上げ、寂しげに目を細めた。 「……ああ、いたよ。だが、鉄の巨人が来て、神様を石の下に埋めてしまったんだ。電気を作るためにな」


 子供はその言葉を、退屈な御伽噺として聞き流した。  彼が興味を持っているのは、目に見えない神様ではない。頭上を轟音と共に通過していく、銀色のジェット戦闘機(MiG-29)のカッコよさと、今夜の家で灯る明るい電球のことだけだった。


 神秘は死んだ。  そして、効率と生産性という名の、冷たくも豊かな「進歩」が、アステリアを完全に征服したのである。


第四章 第六話:後世の注釈 『一九九〇年代のアステリア開発において、ソ連は「妥協」という言葉を知らなかった。彼らは水龍を神として祀る代わりに、ダムの土台という「建材」として利用した。その冷徹な合理性こそが、魔導文明をわずか数年で工業文明へと強制進化させた原動力であり、同時にアステリアの魂を殺した凶器でもあった。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)

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