平和の資材と星条旗の焦燥
【注意・免責事項】
※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。
※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。
※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。
一九八九年。 ベルリンの壁が崩壊の予兆を見せ、世界が「冷戦の終わり」という甘い夢にまどろんでいた頃。 その夢の裏側では、ソビエト連邦による**「世界規模の廃棄物処理事業」**が、静かに、しかし猛烈な勢いで進行していた。
1.闇に紛れる「平和の資材」
かつてのような、赤旗を掲げた堂々たる軍事パレードや、威圧的な艦隊行動は影を潜めた。 代わりに動き出したのは、無国籍の貨物船団と、チャーターされた民間輸送機である。
黒海に面したオデッサ港。深夜、税関の封印が解かれたコンテナが次々と船積みされていく。 積荷目録には、「農業用トラクター」「復興支援資材」「地質調査機器」といった平和的な品目が並ぶ。だが、そのコンパネを一枚剥がせば、そこにあるのはグリスの匂いも新しい「BTR-80装甲兵員輸送車」であり、「RPG-7対戦車擲弾発射器」の山であった。
これらは全て、軍縮条約によって「廃棄」が決定された兵器群だ。 通常ならば、莫大なコストをかけて解体・溶解処理せねばならない。だが、クレムリンの計算は合理的かつ冷徹だった。 「捨てるのにも金がかかる。ならば、我々の友人に『プレゼント』してやればいい。処分費が浮き、恩も売れる」
「平和維持支援」という美名のもとに、数千両の装甲車と数万丁の銃器が、地球上のあらゆる紛争地帯――特に反米勢力や親ソ政権の支配地域へと、ひっそりと、しかし津波のように流れ込んでいった。
2.ニカラグア:コントラの墓標
その「毒」が最初に回ったのは、アメリカの裏庭、中米ニカラグアであった。 レーガン政権が支援する反政府武装組織「コントラ」は、それまでCIAから提供された潤沢な資金と武器を背景に、親ソ的なサンディニスタ政権を追い詰めていたはずだった。
しかし、一九八九年の雨季が明けると同時に、ジャングルの戦況は一変する。
密林の奥深く、CIAの将校が率いるコントラの小隊が、政府軍の拠点を奇襲しようとしたその時だ。 ズズズズ……という重低音と共に、泥濘の中から姿を現したのは、農業用ブルドーザーではなく、増加装甲を纏ったT-55戦車だった。 「馬鹿な! 奴らに戦車を運用する余裕などないはずだ!」 将校の叫びは、100ミリ砲の轟音にかき消された。
上空では、国籍マークを塗りつぶしたMi-24「ハインド」攻撃ヘリが、正確無比なロケット弾攻撃でコントラの補給線を焼き払っていく。それらは本来、アフガニスタンの空を飛んでいたはずの「退役機」だった。 ホワイトハウスは戦慄した。ソ連が「平和」を語れば語るほど、中南米の親米勢力は、皮肉にも「ソ連製廃棄兵器」の圧倒的な質量の前に粉砕されていく。 アメリカの裏庭は、血のような赤色に塗り替えられつつあった。
3.アフガニスタン:崩れたシナリオ
そして、ソ連にとって最大の「出血する傷口」であったはずのアフガニスタン。 一九八九年二月、赤軍の完全撤退完了。 ワシントンは勝利を確信していた。梯子を外された親ソ・ナジブラ政権は数ヶ月で崩壊し、カブールはCIAが支援するムジャヒディン(イスラム聖戦士)の手に落ちるだろうと。
アメリカには焦りもあった。 偵察衛星が捉えた、カザフスタンの秘密都市**「チャベリンスク-xx」**の異常なエネルギー反応。その喉元にナイフを突きつけるためには、隣接するアフガニスタンを親米国家として掌握し、前線基地を設置する必要があったのだ。
だが、CIAのシナリオは、戦場の異様な光景によって引き裂かれた。 カブールへ進撃したムジャヒディンを待ち受けていたのは、弱体化した政府軍ではない。 本来存在しないはずの最新装備――欧州戦線から引き抜かれた暗視装置、対砲兵レーダー、そして新型の多連装ロケット砲――で武装した、正体不明の「義勇兵旅団」だった。
「話が違う! 奴らは素人じゃない!」 現地のCIA工作員が無線で絶叫する。 彼らの動きは、ゲリラのそれではない。高度に連携し、冷静にキルゾーンへ敵を誘導し、殲滅する。それは、書類上「退役」して市民に戻ったはずの、ソ連軍スペツナズ(特殊部隊)の経験者たちだった。彼らは「再就職先」として、高給と共にこの地へ派遣されていたのだ。
「なぜだ。ソ連は軍縮し、兵力を削減したはずだ。なぜ戦場の至る所に、廃棄されたはずの装備と『いないはずの兵士』が溢れているんだ!」
アメリカが数百万ドルのドル紙幣を部族長にバラ撒いても、ソ連が「産業廃棄物」として無償で供与する圧倒的な暴力の前では、紙屑同然だった。 アフガニスタンという泥沼の中で、アメリカのナイフは、ソ連の厚い「廃棄兵器」の装甲を貫くことすらできなかった。
4.「強いアメリカ」の焦燥と遠い夢
「自由の国」アメリカの影響力は、文字通り物理的に剥ぎ取られていった。 経済では日本に追い上げられ、軍事・外交ではソ連の不可解な「余裕」に翻弄される。
ホワイトハウス、オーバル・ルーム。 任期終了を間近に控えたレーガン大統領は、窓の外を見つめながら、補佐官たちに問うた。 「ソ連は何かを隠している。奴らのあの自信はどこから来る? 地球上の資源だけで、あれほどのバラ撒きができるはずがない」 「分かりません。ですが大統領、国民は『強いアメリカ』の復活を求めています。目に見える形での勝利が必要です」
地上の泥仕合で勝てないのなら、盤面そのものを変えるしかない。 かつてケネディが月を目指したように、アメリカは再び「上」を向くしかなかった。 政権末期、アメリカは高らかに宣言する。 「宇宙探査イニシアチブの発動。十年以内の有人月面基地建設、および二十一世紀初頭の有人火星着陸を目指す」
それは壮大な夢であり、科学と自由の優位を示すための切り札だった。 しかし、その宣言はどこか空虚に響いた。 米国の国力はSDI(戦略防衛構想)という巨大な予算のブラックホールに吸い込まれ、さらに国内製造業の空洞化が足を引っ張っていた。
何より皮肉なことは、アメリカが数千億ドルをかけて**「死の世界(火星)」を目指してもがいている間、ソビエト連邦はカザフスタンの地下ゲートを通じて、水と緑と資源に溢れる「生の世界」**を、極めて低コストに独占しつつあるという事実だった。
5.チェス盤の変容
一九八〇年代の終わり。 世界地図というチェス盤の色は、西側の知らない間に変容していた。
アメリカが宇宙という極限環境にリソースを割き、形而上学的な夢を追って足掻いている間に、ソ連は極めて現実的だった。 「ゴミ」として処理したはずの兵器を世界中の要所に隠密裏に配置し、かつてのような強引な侵略ではなく、歓迎される「平和支援」によって、ユーラシアと第三世界の支配権を固めてしまったのだ。
世界各地の紛争地で、星条旗の代わりに「廃棄された赤軍の残滓」が影響力を持ち始めた。 地球上のチェス盤は、ソ連の洗練された外交戦と隠密裏の物量作戦によって、うっすらと、だが消し難い赤色に染まりだしていた。
そして、地球側の「背後」を完全に固めたソビエト連邦は、ついにその貪欲な牙を、異世界アステリアの深部――**北方の「聖域」**へと向けようとしていた。
第四章 第四話:後世の注釈 『一九八九年の兵器拡散は、単なる武器供与ではなかった。ソ連は軍縮という名目で古い筋肉を切り離し、それを地球上の急所に移植したのである。米国が「有人火星探査」という遠い星の夢を追って足掻いている間、モスクワは足元の現実を着実に支配下へと置いていった。勝敗は、空を見上げた者と、地を這った者の差であった。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋
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