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北方領土とエネルギーの甘露

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、夏。  ゴルバチョフの広島訪問が世界に与えた衝撃は、単なる「感動」の域を超え、冷戦という凍てついた大地を物理的に融解し始めていた。  クレムリンが放った「平和」という名の魔弾は、各国の世論を熱狂させ、国家指導者たちの計算を狂わせていく。そして、ソ連の描く「大外交戦略」は、より具体的で、より致命的な第二段階へと突入した。


1.資源の甘露:懐疑を溶かす「現実」

 当初、ワシントンやロンドン、そして東京の外務省高官たちは、突如として豹変したソ連の外交方針を「伝統的な欺瞞工作デズインフォルマツィヤ」と断じ、警戒を崩していなかった。  「共産主義者がタダで微笑むはずがない。裏には必ず毒がある」  CIAの分析官はそう警告した。しかし、その疑念を強引にねじ伏せたのは、イデオロギーでも理屈でもなく、圧倒的な**「物量」**であった。


 ソ連通商代表部は、西ドイツや日本に対し、かつてない規模の石油、天然ガス、レアメタルの長期安定供給契約を提示した。その価格は、OPEC(石油輸出国機構)が卒倒するような、国際価格を三割も下回る**「友好価格」**であった。


 西側の経済学者たちは首を傾げた。  「ソ連経済は疲弊しているはずだ。自国の産業に必要なエネルギーを切り売りして、こんなダンピングができるはずがない」


 彼らは知らなかったのだ。  ウラル山脈以東の軍需工場や重工業地帯において、火力発電所のボイラーが次々と停止し、代わりにアステリア大陸から持ち込まれた**「マナ・リアクター(魔導炉)」**が極秘裏に稼働し始めていることを。  異世界から無尽蔵に供給される魔力エネルギーが、ソ連国内の電力需要を肩代わりしていたのである。その結果、シベリアで産出される膨大な地球産の石油と天然ガスが「余剰物資」となり、西側諸国をソ連経済圏へ繋ぎ止めるための強力な「鎖」へと変貌していた。


 日本の商社マンたちは歓喜し、パイプライン計画に群がった。  「これでエネルギー危機は過去のものになる」  安価なエネルギーという甘露は、日本人の警戒心を胃袋の中から溶かしていった。


2.中ソ対立の終焉:帝国の罪を認める「勇気」

 西側を資源で手懐ける一方で、ゴルバチョフは背後の安全を確保するため、歴史的な賭けに出た。社会主義陣営の分裂を決定づけていた「中ソ対立」の完全解消である。


 一九八九年五月、北京。  最高実力者・鄧小平との会談において、ゴルバチョフは驚くべきカードを切った。 「これまでの国境問題は、ロシア帝国主義的な拡張主義に端を発するものであった。我々は過去の過ちを清算する用意がある」


 ソ連は、かつて流血の紛争地となったダマンスキー島(珍宝島)を含む係争地において大幅な譲歩を行い、中国側が主張する国境線の大部分を認めたのである。  さらに、中ソ国境に展開していた数十万の兵力を「一方的に削減する」と宣言した。


 鄧小平と固い握手を交わすゴルバチョフの映像は、ホワイトハウスを震撼させた。  ニクソン訪中以来、アメリカが維持してきた「中国をカードにしてソ連を牽制する」という戦略が、根底から崩れ去ったからだ。  そして、中国側も気づいてはいなかった。「削減」され、国境から消えたソ連軍精鋭師団が、故郷へ帰るのではなく、カザフスタンの荒野へ向けて移動を開始したという事実に。


3.北方領土という楔:揺らぐ日米安保

 資源外交、中国との和解。  そして、ソ連が放った最も鋭い楔は、極東の経済大国・日本に向けられた。  東京での外相会談において、ソ連側はついに禁断の果実を差し出した。**「北方四島の段階的返還」**を条件とした、日ソ平和条約の締結である。


「我々は真の友好を望んでいる。まずは色丹・歯舞の二島を即時引き渡す。そして、経済協力と信頼関係の進展に伴い、択捉・国後についても返還のスケジュールを協議したい」


 この提案に、日本列島は爆発的な熱狂に包まれた。  戦後長らく「悲願」とされてきた領土返還が、ゴルバチョフという「理性的指導者」の手で現実味を帯びたのだ。


 すぐさま、元島民やその遺族たちによる**「故郷復帰運動」**が空前絶後の規模で再燃した。連日、国会議事堂の周辺は、平和条約の早期締結を請願する数万人の民衆で埋め尽くされ、「平和の使者ゴルバチョフ」を讃えるプラカードが波のように揺れた。  竹下内閣の支持率は急騰し、財界も「シベリア開発特需」への期待から、対ソ融和路線を強力に後押しした。


 アメリカ大使館と防衛庁の一部制服組は戦慄した。  領土返還の条件としてソ連が暗に求めていたのは、日本国内の安保体制の「再定義」と、北海道・東北地域へのソ連製エネルギーインフラの全面導入だったからだ。


「ソ連の狙いは明らかだ。北方領土という餌で、日本を日米同盟から引き剥がそうとしている」  駐日アメリカ大使の必死の警告は、しかし、ガソリン価格の下落を喜ぶ市民の声と、連日テレビで流れる「生きているうちに島へ帰れる」と涙する老婆の映像にかき消されていった。


4.日ソ友好の最高潮:慰霊巡幸の決定

 交渉は電撃的に第一段階の合意に達した。  日ソ平和条約の仮調印と同時に、日本政府は歴史的な発表を行う。  「天皇皇后両陛下による、返還決定地(色丹・歯舞)への慰霊巡幸の検討」。


 まだソ連の実効支配下にある土地へ、日本の象徴が足を踏み入れる。それはソ連側の完全な安全保証と協力なしにはあり得ないことであり、事実上の「和解完了宣言」であった。  かつての敵国と結ばれる、このあまりにも劇的な雪解け。  その象徴的なニュースを前に、日本国民のソ連に対する心理的障壁アレルギーは完全に崩壊した。  「ソ連は怖い国」という認識は、「ソ連は資源と領土をくれる友人」へと書き換えられた。日本はもはや、アメリカの極東における防波堤ではなく、ソ連にとっての資金と技術の供給源、「東の窓」へと変貌しつつあった。


5.闇夜のシベリア鉄道:カザフスタンへの行軍

 地球がこの「平和の奇跡」に酔いしれ、ベルリンの壁崩壊や冷戦終結の足音に耳を澄ませている間。  ユーラシア大陸を東西に貫く大動脈、シベリア鉄道では、奇妙な運行ダイヤが組まれていた。


 深夜、一般旅客列車が通過した後の線路を、窓を黒く塗りつぶした長大な軍用貨物列車が疾走していく。  積載されているのは、中ソ国境から、そして日本へ返還される北方領土から「撤退」したはずのT-80U戦車、多連装ロケット砲、そして数万の精鋭兵士たちだ。


 彼らは「故郷への帰還」ではなく、さらなる西へ、そして南へと運ばれていく。  目指す先は、カザフ・ソビエト社会主義共和国の荒野。  地図には存在しない秘密都市、チャベリンスク-xx。


 そこには、チェルノブイリの悪夢を封じ込めたような巨大なコンクリートの塊――**「石棺サルコファガス」**が鎮座している。  列車はそのまま基地構内へと引き込まれ、兵士たちは石棺の内部にある、青白く輝く「門」へと行進していくのだ。


「日本人は、我々が島から去ったと思って涙を流しているそうだな」  揺れる貨車の中で、兵士が皮肉っぽく笑った。 「ああ。だが我々は消えたわけじゃない。ちょっとばかり『勤務地』が、地球の地図から外れただけだ」


 ゴルバチョフが世界に差し出した「平和」という名の甘露。  それは、異世界アステリアをソビエト連邦の「不可視の要塞」へと造り変え、その侵略戦争を遂行するための、人類史上最大にして最も成功した**陽動フェイント**であった。


第四章 第三話:後世の注釈 『一九八九年の北方領土交渉と、それに続く日ソ平和条約は、事実上の「日米同盟の形骸化」を告げる鐘の音であった。日本人は領土奪還という大義の下、知らず知らずのうちにソ連の軍事的野望を隠蔽する最大の「スポンサー」となったのである。この時、ワシントンは悟った。もはや通常の外政手段では、この赤い隣人を止めることは不可能であると。』(二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)

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