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消えた師団と東京の甘い毒

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、春。  世界はゴルバチョフ・ブームに沸いていた。  西側の指導者たちは、彼が振りまく「ペレストロイカ(改革)」と「グラスノスチ(情報公開)」という美酒に酔いしれ、鉄のカーテンが急速に錆びついていく幻影を見ていた。  だが、その錆の下で、赤き巨人が鋼鉄の筋肉を別の世界へ移植していることに気づく者は、まだ誰もいなかった。


4.日本への甘い毒:平和のパートナーという地位

 広島での「雨の演説」から数日後。ゴルバチョフの姿は、バブル景気の絶頂にあり、世界中の富を集めていた都市――東京にあった。  首相官邸で行われた日ソ首脳会談。竹下登首相と向かい合ったゴルバチョフは、長年の懸案である北方領土問題について、驚くべき柔軟姿勢を見せた。


「領土問題は、対立によってではなく、共同繁栄によって解決されるべきだ」


 彼が提示したのは、領土の即時返還ではない。しかし、それよりも日本財界の喉を鳴らせる提案だった。  『日ソ・エネルギー・パートナーシップ構想』。  それは、シベリアからサハリンを経由し、パイプラインで直接日本へ石油と天然ガスを供給するという壮大な計画だった。しかも、提示された価格は国際相場を大きく下回る「友好価格」だった。


「日本はもはや敗戦国ではない。アジアにおける唯一無二の経済大国だ。アメリカの核の傘ではなく、我々の資源の傘の下で、真の自立を果たすべきではないか?」


 甘い囁きだった。  ゴルバチョフの計算は冷徹だ。  アステリア大陸での「マナ資源」の実用化と、現地での水力・魔導発電の確立により、ソ連本国の化石燃料消費量は劇的に減少する見込みが立っていた。つまり、カザフスタンの「門」を通じて吸い上げた異世界のエネルギーを国内で消費し、浮いた分の地球産石油とガスを日本へ安く売りさばく。そして、その代金でアステリア開発に必要な「外貨」と「ハイテク製品」を日本から吸い上げる。  日本をソ連のエネルギーに依存させ、日米同盟にくさびを打ち込みつつ、金づるにする。一石三鳥の策謀だった。


 経団連の重鎮たちが集まる晩餐会で、ゴルバチョフは上機嫌にウォッカを掲げた。 「乾杯しましょう。冷戦という冬は終わり、これからはビジネスという春が来るのです」  日本の財界人たちは、その言葉に熱狂的な拍手で応えた。彼らは目の前の「安い石油」に夢中で、その裏側にある、異世界からの搾取構造には気づくよしもなかった。


5.誠意という名の欺瞞:カザフスタンの石棺へ

 外交という名のソフトパワーが世界を麻痺させている一方で、ソ連軍内部では、歴史上類を見ない大規模な「ハードパワーの横流し」が進行していた。


 東ドイツ、ソ連軍駐留基地。  西側メディアのカメラが並ぶ前で、古びたT-62戦車が解体用クレーンによってプレスされていく。 「我々の誠意の証として、欧州方面軍の戦車五〇〇両を廃棄し、三個師団を即時解散する!」  現地の司令官が高らかに宣言し、西側のニュースキャスターが「平和の到来」を興奮気味にリポートする。


 だが、カメラが映さない基地の裏門では、全く別の光景が広がっていた。  最新鋭のT-80U戦車、BMP-3歩兵戦闘車、そして自走榴弾砲の長大な列が、夜陰に乗じて貨物列車に積み込まれていたのである。車体の認識番号は塗りつぶされ、所属を示すエンブレムは削り取られている。


「おい、俺たちは『解散』させられたんじゃないのか?」  貨車に揺られる若い戦車兵が、不安げに小隊長に尋ねた。彼らの身分証は回収され、公式記録上、彼らは「名誉除隊」したことになっていた。  歴戦の小隊長は、ニヤリと笑ってタバコを吹かした。 「ああ、そうだ。地球ここでの任務は終わりだ。だがな、俺たちには新しい職場が用意されている」 「新しい職場? シベリアの開拓ですか?」 「いいや、もっと南だ。地図から消された街さ」


 列車が向かう先は、カザフ・ソビエト社会主義共和国。  荒涼としたステップ地帯の真ん中に突如として現れる、有刺鉄線と対空ミサイル陣地に囲まれた秘密閉鎖都市。  「チャベリンスク-xx」。  かつて核兵器の製造拠点だったその街の中心には、チェルノブイリ原発事故の処理施設を何倍にも巨大化させたような、コンクリートと鉛の塊――通称**「石棺サルコファガス」**が鎮座していた。


 ガタン、ガタン……。  列車は減速することなく、「石棺」の巨大な搬入口へと吸い込まれていく。  その内部には、青白い光を放つ次元の亀裂、巨大な**転移門ゲート**が口を開けていた。


 地球上で「削減」されたはずの数万の精鋭と、数千両の装甲車は、消滅したわけではない。ただ、西側の偵察衛星が見ることのできない「石棺の中」――そしてその向こう側へと移動しただけなのだ。


 欺瞞工作マスキロフカ。  ソ連軍伝統の、敵を欺く技術。  ゴルバチョフの平和攻勢によって緩んだ世界の監視網をすり抜け、かつてない規模の軍事力が、次元の境界を越えてアステリア大陸へと雪崩れ込んでいく。


 数日後。  アステリア大陸、前線基地。  転移門から吐き出されたT-80Uの隊列を見て、現地の補給将校が悲鳴を上げた。 「本国は何を考えているんだ! また一個師団送り込んできやがった! 食料も燃料もカツカツだぞ!」  到着したばかりの連隊長が、ハッチから身を乗り出して叫び返した。 「心配するな! 燃料なら日本人が払った金で買ってきた! 弾薬はドイツ人が廃棄したことになっている分だ!  さあ、同志諸君! ここが我々の新しい祖国だ。邪魔な魔物は、我々の『平和維持活動』でミンチにしてやれ!」


 地球では「軍縮」という名の喝采が響き、アステリアでは「増強」という名の履帯音が轟く。  一九八八年、ソビエト連邦は、二つの顔を完璧に使い分けることで、世界を欺き、そして異世界を食らい尽くそうとしていた。  この甘い毒が回った時、日本も、欧州も、そしてアステリアの住人たちも、逃れられない依存の鎖に繋がれることになるのである。

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