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花束外交

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、四月。  アステリア大陸の黄金色の平原を、最新鋭のT-80U戦車師団が無慈悲に蹂躙し、「アステリア方面軍」がその支配域を地図上のシミのように広げていた頃。  地球側のソビエト連邦・クレムリンでは、人類史上最大規模とも言える**「大外交戦略グランド・ストラテジー」**が、静かに、しかし劇的に産声を上げていた。


 深夜の書記長執務室。  分厚いカーテンの向こうには、雪のちらつく赤の広場がある。だが、書記長ミハイル・ゴルバチョフが見つめていたのは、机の上に広げられた二つの地図だった。  一つは、NATO軍と対峙する欧州戦域図。もう一つは、未知の怪物たちが跋扈するアステリア大陸の侵攻図である。 「同志書記長。カザフスタンの『ゲート』への物資搬入は順調ですが、西側の偵察衛星が活発化しています。これ以上の軍事行動は、アメリカを刺激しかねません」  KGB議長クリュチコフの報告に、ゴルバチョフは重々しく頷き、万年筆を地図の上に落とした。 「我々は二つの戦線を同時に維持することはできない。新天地アステリアを完全に掌握し、その無限の資源を吸い上げるためには、地球という名の背後を『眠らせる』必要がある」


 彼は立ち上がり、鏡の前でスーツの襟を正した。そこには、冷酷な侵略者の顔ではなく、温和で知的な、西側が好む「話のわかるリーダー」の仮面があった。 「行こう。世界中が待ち望んでいる『平和の演劇』の幕開けだ」


1.鎮魂の聖地にて:広島に降る「赤い雨」

 日本、広島。  季節外れの冷たい雨が、平和記念公園の石畳を濡らしていた。  世界中のカメラのフラッシュが焚かれる中、ゴルバチョフは傘も差さずに原爆ドームの無残な骨組みを見上げていた。隣に立つ竹下登首相の差し出す傘を丁重に断り、濡れたまま頭を垂れるその姿は、西側メディアにとってあまりにも衝撃的な絵だった。  「悪の帝国」の指導者が、核の被害地で祈っているのだ。


 彼は原爆死没者慰霊碑に花輪を捧げると、ゆっくりと拡声器の前に立った。 「ヒロシマの悲劇を、二度と繰り返してはならない。核兵器という悪魔の火は、我々人類が管理できるものではなく、消し去るべき過去の遺物だ」


 その目には涙が光っていた。  ABCアメリカ・イギリス・カナダの記者たちは、その涙を「良心の呵責」と書き立てた。しかし、ゴルバチョフの脳裏にあったのは、全く別の計算式だった。  (……そうだ。地球上の核兵器は廃棄せねばならない。維持コストがかかりすぎる。それに、我々にはもう、核実験場アステリアがある)


 彼は演説の中で、**「地球上の」とも「異世界の」**とも限定しなかった。  ただ抽象的に平和を訴えることで、彼は「核のボタンを握る独裁者」から「核廃絶を願う人道主義者」へと、そのイメージを鮮やかに書き換えたのである。日本中が「ゴルビーブーム」に沸き立つ中、広島に降る雨が見えざる「赤色」に染まっていたことに気づく者は誰もいなかった。


2.欧州の熱狂:コール首相との抱擁

 広島での成功を背に、ゴルバチョフの特別機は西へ飛んだ。次なる舞台は、冷戦の最前線であり、分断の象徴である西ドイツだ。  ボンの首相官邸前広場。そこには、数万人の市民が詰めかけていた。彼らは「ロシア人は戦車で来る」と教えられて育った世代だ。しかし今、彼らが振っているのは抗議のプラカードではなく、ソ連国旗と花束だった。


 バルコニーに現れたゴルバチョフは、西ドイツ首相ヘルムート・コールと固い握手を交わし、さらに熱烈な抱擁ハグをして見せた。 「欧州は一つの家だ(コモン・ヨーロピアン・ホーム)」  ゴルバチョフは、群衆に向かって語りかけた。 「鉄のカーテンが、永遠に兄弟を隔てることはできない。コール首相、我々が信頼という名の煉瓦を積み上げれば、壁はやがて歴史の彼方へと消え去るだろう」


 巨漢のコール首相は、満面の笑みで頷いたが、その内心では冷たい汗を流していた。  (この男は、ミサイルを一発も撃たずに、NATO(北大西洋条約機構)の結束を破壊している……!)  西ドイツ国民の対ソ感情は、恐怖から親愛へと劇的に反転した。「ソ連はもはや敵ではない」。その空気は、アメリカの核ミサイル配備への反対運動となって燃え広がり、西側同盟の足並みを乱していく。  ソ連軍参謀本部が描いた「欧州中立化構想」は、平和という甘い蜜を塗られた毒饅頭として、確実に欧州の喉元に押し込まれていた。


3.極東の地殻変動:ソウルへ打ち込む「資源」の楔

 そして、外遊の最終目的地は、アジアにおける反共の砦、大韓民国(韓国)との接触であった。  来るべきソウルオリンピックを控え、高揚感に包まれる済州島での極秘会談。テーブルを挟んで向かい合ったのは、軍人出身の大統領、**ノ・テウ(盧泰愚)**である。


 ゴルバチョフはイデオロギー論争を一切行わなかった。代わりに彼が提示したのは、一枚の資源分布図だった。 「大統領。貴国が掲げる『北方外交』を歓迎します。貴国の驚異的な経済成長には、エネルギーが必要だ。そして我が国には、シベリアの凍土の下に眠る無限の資源がある」


 ゴルバチョフは、地図上の東シベリア――アステリアへのゲートが存在する地域――を指でなぞった。 「パイプラインを繋ぎましょう。イデオロギーで腹は膨れないが、ガスと石油は貴国の工場を動かす」 「……シベリア開発への参加を認めると?」  ノ・テウ大統領が身を乗り出した。共産圏との国交樹立は、彼の悲願であり、北朝鮮を孤立させるための切り札でもあったからだ。 「ええ。共に『新しいアジア』を築こうではありませんか」


 韓国側は知る由もなかった。その「シベリアの資源」の一部が、実は異世界アステリアから略奪されたマナ資源や、未知の鉱物資源であることを。  日米韓の軍事連携という鉄のトライアングルに、ソ連は「経済的実利」という最も抗いがたい楔を打ち込んだのだ。


4.ホワイトハウスの困惑

 ワシントンD.C.、ホワイトハウス。  大統領執務室では、任期終了を間近に控えたロナルド・レーガン大統領が、CIA長官からの報告書を苛立たしげに放り投げていた。かつてソ連を「悪の帝国」と断じた強硬派の彼にとって、現在の状況は理解不能だった。


「一体どうなっている? あの『悪の帝国』が、突然『愛の伝道師』になったとでも言うのか?」


 CIAの分析官たちは困惑していた。  偵察衛星は、ソ連国内での軍隊の移動を確認している。しかし、それは西側国境から離れる方向――中央アジアのカザフスタン奥地へと向かっているのだ。 「軍縮の意思は本物に見えます。欧州正面の戦力は削減傾向にあり、ゴルバチョフの人気は西側諸国で指導者層を凌駕しています。……ですが、カザフスタンで大規模なエネルギー反応と物資の集積が観測されています。核実験の準備か、あるいは……」 「あるいは?」 「分かりません。まるで、地球ではない『どこか』へ向けて戦争の準備をしているような……そんな奇妙な動きなのです」


 アメリカは、ソ連の真意を見失っていた。  ゴルバチョフが振りまく平和の笑顔の裏で、赤軍の精鋭師団が次元を超え、剣と魔法の世界を蹂躙しているという真実は、冷戦思考に凝り固まった彼らの想像力の遥か外側にあったのである。


 モスクワへの帰路、専用機の中でゴルバチョフはワイングラスを傾けた。  窓の外には、国境線の見えない雲海が広がっている。 「地球は眠ったか」  側近の問いに、彼は静かに答えた。 「ああ。いい夢を見ている間に、我々は夢の向こう側を頂くとするさ」


 一九九〇年。  地球上にはかつてない平和の雨が降り注ぎ、アステリア大陸には鉄と炎の嵐が吹き荒れる。  二つの世界を股にかけた、ソビエト連邦の二重生活が始まったのである。

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