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鉄と魔法の五カ年計画 ―ソビエト連邦、異世界侵攻作戦―  作者: 納豆マン
3章 アステリア社会主義共和国
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幕間 モスクワ市民の日記:1990年

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

10月12日(金)  奇跡が起きている。あるいは、党がついに本気を出したのか。  今朝、ゴーリキー通りの国営食料品店ガストロノームの前に並んでいた時、いつもなら「今日は肉が入荷するか」「腐ったキャベツしかないんじゃないか」と殺伐とした空気が流れるはずが、店から出てくる人々の顔が、どこか呆然としていた。


 自分の番が来て、俺も息を呑んだ。  棚には、見たこともないほど巨大な袋に入った真っ白な小麦粉が山積みになり、その隣には、不自然なほど赤く、蝋細工のように艶やかなトマトが籠から溢れていたのだ。10月のモスクワに、こんな野菜があるはずがない。 「カザフスタンの『第4特別農業区』で開発された、バイオテクノロジーの成果だそうだ」  店員が得意げに説明していた。科学アカデミーが開発した「超促成栽培種」らしい。  配給されたパンを一口食べてみた。……美味い。だが、少しだけ舌が痺れるような、妙な高揚感がある。妻は「数年ぶりに本物のピロシキが焼ける」と泣いて喜んでいる。  バイオだろうが何だろうが、腹が満たされるならそれが正義だ。


11月5日(月)  工場のノルマが変更された。  これまではアフガニスタンの戦場へ送るための弾薬箱ばかり作らされていたが、今日からラインのすべてが「東部開拓用」とされる新型トラクターの部品製造に切り替わった。  奇妙なのは、その部品の規格だ。俺たちが知っているJISやISO、GOST規格のどれとも違う。図面に書かれた強度は、鉄鋼では不可能な数値だったが、支給された銀色の金属板(※ミスリル合金)は驚くほど軽く、加工しやすかった。


 それと、工場に「新型電力」を引くための太いケーブルが敷設された。  シベリアに建設された「新型原子力発電所」から送電されているという触れ込みだが、その電気はどこかおかしい。水銀灯の光が、青白く透き通っていて、影ができないのだ。  何より驚くのは、停電が全くなくなったことだ。モスクワの冬はいつも暗くて寒いが、今年は街灯が深夜まで煌々と輝いている。  職長は「科学の勝利だ」と笑っていたが、変電所の近くを通ると、オゾンと花の蜜が混ざったような不思議な匂いがする。……本当に、これは原子力なのか?


12月21日(金)  息子が学校から帰ってきて、興奮気味に「ソビエトの最新科学」について話してくれた。  なんでも、カザフスタンの立ち入り禁止区域にある「閉鎖都市ザクリトイェ・ゴロド」では、無限のエネルギーを取り出す実験に成功したらしい。


 息子が学校の成績優秀者への褒賞として、「化学カイロ」をもらってきた。  透明な樹脂の中に、赤い結晶片が封入されたキーホルダーだ。「半永久的に熱を発する新素材」だという。  握ってみて驚いた。ただ温かいだけではない。まるで生き物のように、脈打つような熱が指先から体に入り込んでくる。冬のバス停で待っていても、これを持っているだけで体が芯から温まり、肩こりまで治ってしまった。 「お父さん、僕も大きくなったら『閉鎖都市』へ行きたいな。あそこには選ばれた技術者しか入れなくて、冬がないくらい暖かいんだって」  俺たちが信じさせられてきた「共産主義の未来」は、スローガンの中だけの嘘だと思っていた。だが、この不気味なほど便利な「石」は、確かに現実の物としてここにある。


1月1日(火・元旦)  あけましておめでとう。  今年の新年会は、我が家の歴史上、最も豪華なものとなった。  配給された「特級ワイン」の瓶には、生産地もブドウの品種も書かれておらず、ただ『第04号計画・承認済』というスタンプが押されているだけだった。  栓を抜くと、嗅いだことのない芳醇な香りが部屋を満たした。一口飲むと、酒というよりは「飲む輸血」のように、活力が全身にみなぎるのがわかる。


 テレビからは、ゴルバチョフ書記長の演説が流れている。 「同志諸君。我々は、西側に頼ることなく、我々自身の領土の中に『無限の資源』を見出した。ペレストロイカは完了した。もはや、アメリカの経済援助など必要としない」


 確かに、西側のニュースなど誰も気にしなくなった。  あんな遠くの国よりも、東の果ての「閉鎖都市」から送られてくる謎の物資の方が、俺たちの生活にとってはるかに重要だからだ。    明日も仕事だ。東部へ送るための、巨大なハロー(砕土機)のギヤを組まなければならない。  あの見知らぬ金属と、青白い電気。そして、この不思議な食料。  何が起きているのか、本当のところは誰にもわからない。だが、妻と息子が笑顔で満腹になって眠っている。それ以上の真実が、今の俺に必要だろうか?  窓の外、雪の降るモスクワの夜空を、東へ向かう輸送機の編隊が轟音を立てて飛んでいく。あの中に、俺たちの「新しい未来」が積まれているのだろう。

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