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鉄と魔法の五カ年計画 ―ソビエト連邦、異世界侵攻作戦―  作者: 納豆マン
3章 アステリア社会主義共和国
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赤き星の下の創世記

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、五月二十四日。  アステリア王国の旧王都「エリュシオン」は、その数千年の歴史の中で、最も騒々しく、そして最も赤い朝を迎えていた。


 かつて白亜の輝きを誇った石造りの街並みは、建物の窓という窓から吊るされた真紅の垂れ幕によって、暴力的なまでに塗り替えられていた。  二つの太陽が昇ると同時に、王宮の尖塔に設置された巨大なスピーカーから、荘厳なファンファーレが鳴り響く。それは教会の鐘の音ではなく、真空管アンプによって増幅された、電子と金管楽器による「新時代の到来」を告げる轟音であった。


 中央大通りを埋め尽くすのは、解放を祝うために動員された――あるいは半ば強制的に集められた――数万の市民たちだ。彼らの手には、小さな赤い小旗が握らされている。


 地響きが近づいてくる。  それはドラゴンの足音でも、雷鳴でもない。文明そのものが質量を持って行進してくる音だった。


1. 鋼鉄の行進:物理的支配の可視化


「見よ! あれが我らを解放した『鉄の騎兵』だ!」


 先導する政治将校の叫びと共に、石畳を軋ませて姿を現したのは、ソビエト連邦軍が誇る最新鋭主力戦車、T-80UMの長大な車列であった。


 ズズズズズズ……。


 履帯キャタピラが王都の古い石畳を噛み砕き、微細な砂塵を巻き上げる。  重厚な複合装甲に覆われた砲塔、長大な一二五ミリ滑腔砲。その一つ一つが、中世の騎士団を紙切れのように粉砕した「物理学の結晶」である。  砲塔の上には、戦車兵たちが胸を張って敬礼し、その背後にはソ連国旗と、この新国家のために制定された「歯車と魔法陣」をあしらった新しい国旗がはためいていた。


 市民たちは、目の前を通り過ぎる鋼鉄の怪物の群れに、恐怖で喉を引きつらせながらも、沸き上がるような畏怖を覚えていた。  かつて彼らが見上げていた聖騎士の輝きなど、この圧倒的な質量の前では子供の玩具に等しい。


「ウラー!!(万歳!!)」


 サクラとして配置された兵士たちの声に合わせ、市民たちもぎこちなく旗を振り、声を上げる。最初は小さかったその声は、戦車の轟音に煽られるように、次第に巨大な熱狂へと変わっていく。


 続いて現れたのは、迷彩服に身を包んだ機械化歩兵師団。  一糸乱れぬ行進。カツ、カツ、カツ、という軍靴の音が、王都の心臓部を正確なリズムで刻んでいく。彼らが肩に担いでいる自動小銃は、魔法使いの杖よりも遥かに手軽に、遥かに多くの死をもたらす「平等の杖」だ。


 そして、空を見上げれば、そこにも支配者の影があった。  バラバラバラバラッ!  腹に響くローター音と共に、Mi-24「ハインド」攻撃ヘリコプターの編隊が低空を飛行する。空飛ぶ装甲車、あるいは「鉄の竜」。それらが撒き散らす風圧は、市民たちが被っていた帽子を吹き飛ばし、彼らに「空の支配権」が誰にあるかを肉体的に理解させた。


 だが、民衆が最も目を輝かせたのは、兵器の列の後に続いた「黄色い怪物」たちだった。  大型トラクター「キロヴェッツ」の隊列である。  運転席に座っているのは、ロシア人ではない。誇らしげな顔をした、元農奴のアステリア人たちだ。


「俺たちのトラクターだ! 俺たちのパンを作る機械だ!」


 農民たちが歓声を上げる。  戦車は恐怖の対象だが、トラクターは彼らの腹を満たす希望そのものだ。ソ連は巧妙だった。鞭(戦車)を見せつけた直後に、トラクターを見せることで、支配を「恩恵」へとすり替えたのだ。


2. 書記長の演説:赤き福音


 パレードが最高潮に達した時、王宮のバルコニー――かつて国王が民に手を振っていた場所――に、一人の男が姿を現した。  額に特徴的なあざを持つ男、ソビエト連邦共産党書記長、ミハイル・ゴルバチョフである。


 彼は眼下に広がる異世界の群衆を見渡し、満足げに頷くと、マイクを握った。


 その映像と音声は、通訳機と魔導拡声器を通じ、同時通訳となってアステリア全土へ響き渡る。  一方で、背後に控えるKGBの記録員たちは、この歴史的瞬間を磁気テープとフィルムに収めていたが、それは地球へ生中継されることはない。  アメリカに「ソ連の成功」を悟らせないため、そして国内での情報の混乱を防ぐため、この映像はクレムリンの最重要機密アーカイブへと直送される手はずとなっていた。


「……親愛なるアステリアの同志諸君!」


 ゴルバチョフの第一声が、広場のざわめきを一瞬で静寂に変えた。


「今日、このエリュシオンの空の下で、一つの古い時代が終わりを告げた!  長きにわたり、諸君を苦しめてきたもの……それは『魔法』という名の不平等であった!  生まれ持った魔力の有無で人の価値が決まり、血統だけで王が決まる。汗を流して働く者が飢え、城壁の中で祈るだけの者が肥え太る……。そんな理不尽な時代は、たった今、我々の手によって葬り去られたのだ!」


 ゴルバチョフは拳を高く突き上げた。


「見よ! 我々がもたらした鋼鉄の機械を!  あれは魔法使いの気まぐれで動くものではない。諸君ら自身の手で動かし、大地を耕し、豊かさを生み出すための力だ!  ソビエトは約束する。来るべき冬、もはや誰も凍えさせない。誰も飢えさせない。我々の科学が、諸君の食卓にパンを、夜の闇に電気という名の太陽をもたらすだろう!」


 おおお……!  広場からどよめきが起こる。それは政治的な動員を超えた、生存本能からの渇望だった。  彼らが求めていたのは、高尚な騎士道でも魔法の神秘でもない。明日のパンと、暖かい暖炉だったのだ。


「今日からここに、神も王もいない! 特権階級もいない!  あるのは、ただ平等に労働する人民と、彼らを導く社会主義の光だけである!  過去を捨てよ! 迷信を捨てよ! そして我々と共に進もう、星の海を越えた繁栄の未来へ!」


「アステリア・ソビエト万歳! 万国の労働者よ、団結せよ!」


 ウラーーーーッ!!


 ゴルバチョフの演説が終わると同時に、広場は熱狂の坩堝と化した。  数万の帽子が空に舞い、市民たちは隣の人間と抱き合い、涙を流して「解放者」を称えた。  その光景は、一九一七年のサンクトペテルブルクの再来であり、同時に、この世界が「不可逆な変質」を遂げたことの証明でもあった。


3. カイルの視点:死と再生のカーニバル


 その熱狂の渦から少し離れた路地裏で、カイル・ヴァン・ブレイズは壁に寄りかかり、パレードを眺めていた。  彼は英雄として壇上に上がることを拒否し、一市民としてこの光景を見届けることを選んだのだ。


 彼の視線の先には、新しく建設された「人民学校」の制服を着た子供たちの姿があった。  彼らは戦車兵に向かって手を振り、兵士から配られた色とりどりの包み紙――チョコレートやキャラメル――を手に、満面の笑みを浮かべていた。


「スパシーバ(ありがとう)、兵隊さん!」 「おいしい! すごく甘いよ!」


 子供たちは、屈託のない笑顔で、自分たちの母国語を捨て、征服者の言葉を口にしていた。  彼らの舌は、すでにソ連製の砂糖の甘さに魅了されている。彼らの心には、「王様」よりも「書記長」の方が、偉大で慈悲深い存在として刻まれつつある。


(……アステリアは、死んだか)


 カイルは、帽子を目深に被り直した。  目の前の光景は、亡国の悲劇だ。文化は破壊され、伝統は否定され、誇りは泥にまみれた。  だが、その瓦礫の上で、子供たちは笑っている。かつて飢えて死んだ子供たちが、今は腹一杯に菓子を食べている。


 これを「悪」と断じることができる権利など、旧時代の騎士であった自分にはない。


 彼はポケットの中で、静かに両手を組み、祈りを捧げようとして――止めた。


 この世界を創った神は、戦車にもトラクターにも勝てなかった。  祈るべき相手は、もう空にはいないのだ。


「……行こう。私の仕事は、まだ終わっていない」


 カイルは背を向け、雑踏の中へと消えていった。  王国の騎士カイルは死んだ。明日からは、アステリア・ソビエト共和国の人民代議員として、そして魔王討伐隊の案内人として、この赤い巨獣を導かねばならない。


 王宮の尖塔では、二つの太陽に照らされながら、巨大な赤旗が誇らしげにはためいていた。  その影は、王都だけでなく、アステリア大陸全土を覆い尽くさんとするほどに、長く、濃く伸びていた。


 一九九〇年五月。  赤き星の下、新しい「次元を超越した超大国」が、ここに産声を上げたのである。

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