神話の死、12.7mmの宣告
【注意・免責事項】
※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。
※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。
※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。
月明かりのない、新月の夜だった。 アステリア王国の王都から南へ二十キロ。ソビエト連邦軍が前線基地を敷設した荒野は、不気味なほどの静寂と、人工的な轟音に包まれていた。
発電機が唸り、強力なサーチライトの光芒が、夜空を切り裂くように旋回している。 その光と闇の境界線を、一人の男が疾走していた。
1. 英雄の潜行:魔法という名の絶対領域
英雄シグルドは、風になっていた。 彼が展開しているのは、王国秘伝の上級隠密魔法「妖精の外套」。周囲の光を屈折させて姿を消し、足音の振動を風に乗せて拡散させる、対人潜入における最強の術式である。
(……やはり、奴らの目は節穴だ)
シグルドは、サーチライトの光が自分の体を素通りしていくのを見て、口元に冷笑を浮かべた。 あの強烈な光も、所詮は「目で見えるもの」を探すための原始的な道具に過ぎない。魔力感知能力を持たないソ連兵たちは、目と鼻の先を通り過ぎる「死神」の存在に気づく素振りすら見せなかった。
基地の内部へ侵入すると、鼻を突く異臭がした。 油と煤、そして鉄の焼ける匂い。 並んでいるのは、無骨な鉄の塊(戦車)の群れだ。昼間は火を噴く怪物も、今はエンジンを止めて眠っている。
(あんな鉄の箱に閉じこもって戦うとは……。臆病者の兵器だ)
シグルドは「鉄の箱」の影を縫うように進み、基地の中央に鎮座する、アンテナを林立させた指揮車両へと狙いを定めた。
彼はこれまでの戦いで、幾多のドラゴンを屠ってきた。 ドラゴンのブレスは鉄を溶かし、その鱗は鋼を弾く。だが、シグルドの聖剣グラムと、彼が練り上げる極大魔法の前では、伝説の怪物ですら無力だった。 ましてや、魔法を知らぬ人間ごときが相手だ。
(指揮官の首を獲り、混乱に乗じて物資の天幕に火を放つ。糧食を燃やし尽くせば、奴らの足は止まる)
シグルドは呼吸を整え、体内の魔力回路を全開にした。 音もなく剣を抜き、詠唱を開始する。 放つのは、雷撃系最上級魔法「トール・ハンマー」。 一撃で指揮車両ごと周囲を蒸発させる、神の鉄槌である。
「……愚かな侵略者どもよ。神秘の恐ろしさを知って死ね」
魔力の光が、彼の手元で凝縮され、臨界点を超えようとした――その時だった。
2. 観測者の視点:冷徹な熱源
シグルドから八〇〇メートル離れた丘陵地帯。 枯草で偽装された「狙撃陣地」の中で、二人のソ連兵が、魔法とは無縁の会話を交わしていた。
「……風速、左から右へ一・二メートル。気温、マイナス二度。湿度、良好」
観測手のボリス軍曹が、単眼鏡から目を離さずに呟く。 その隣で、射手のミーシャ伍長は、愛銃であるKSVK 一二・七ミリ対物ライフルのスコープを覗き込んでいた。
彼らが使っているのは、最新鋭の暗視装置ではない。 ソ連科学アカデミーが「対魔導戦用」に急造し、試験配備したばかりの**「熱線映像装置」**である。
ミーシャの視界には、緑色の世界の中に、赤く輝く「人型」がはっきりと映し出されていた。
「……ターゲット確認。指揮車の横、遮蔽物なし。随分と熱いな、あいつ」
シグルドが必死に展開していた「光の屈折」や「音の遮断」は、熱エネルギーを視覚化するサーマルスコープの前では無意味だった。 むしろ、極大魔法を放つために魔力を練り上げ、体温が急上昇しているシグルドは、氷点下の荒野において、これ以上ないほど目立つ「焚き火」のような標的となっていた。
「何か光り出したぞ。……魔法か?」 「だろうな。……許可は出ている。処理しろ」 「了解」
ミーシャは、ガムを噛むような気軽さで、引き金にかけた指に力を込めた。 そこに、「英雄への敬意」や「武人としての情け」など入り込む余地はない。あるのは、ただの「障害物の排除」という業務だけだった。
3. 12.7mmの宣告:物理学の勝利
ドンッ!
重く、乾いた発砲音が夜の静寂を引き裂いた。
銃口から飛び出したのは、直径一二・七ミリ、重量四八グラムのタングステン合金弾芯。 初速は秒速八五〇メートル。音速の二・五倍を超える速度で、死の塊が空気を切り裂いて飛翔する。
シグルドがその「音」を聞くことは、物理的にあり得ない。 なぜなら、弾丸は音よりも速く彼に到達するからだ。
着弾の瞬間、シグルドが展開していた**「自動防御障壁」**が反応した。 主への害意を感知し、瞬時に物理攻撃を防ぐ魔力の壁を展開する――はずだった。
だが、ソ連の科学が生み出した運動エネルギーは、中世の魔法使いが想定する「矢」や「剣」の威力を、桁違いに凌駕していた。 一点に集中した数万ジュールの破壊力は、障壁が展開しきるコンマ数秒の間に、その構成術式ごと物理的に貫通(ブチ抜)いた。
バチュンッ!
濡れた雑巾を叩きつけたような、醜悪な音が響く。
シグルドの上半身が弾け飛んだ。 心臓はおろか、肺も、背骨も、聖剣を握っていた右腕も、一瞬にして赤い霧と肉片に変わった。
彼が最期に感じたのは、痛みですらなかった。 ただ、視界が唐突に暗転し、自分が練り上げていた魔法が暴発する熱さだけが、遠のく意識の中で一瞬だけ閃いた。
残された下半身が、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。 その数秒後、遅れてやってきた発砲音が、英雄の亡骸の上を虚しく通り過ぎていった。
4. 事後処理:ゴミとしての聖剣
「……目標沈黙。ナイスショットだ、伍長」 「あっけないもんですね。あれが『英雄』ですか?」
ミーシャは排莢レバーを引き、空になった巨大な薬莢を排出した。 数分後、基地の警備隊が現場に到着した。 アレクセイ大尉は、肉塊と化した侵入者を見下ろし、足元に転がっていた「剣」を拾い上げた。 ドラゴンの鱗すら斬り裂くと謳われた伝説の聖剣グラム。その刀身は、主の死に伴う魔力暴走の余波で、半ばから無惨に砕け散っていた。
「……解析班に回せ。刀身の金属組成に興味がある」
アレクセイは、聖剣をまるで古びた鉄くずのように扱い、部下に放り投げた。 英雄の死。 それは壮絶な一騎打ちでもなければ、劇的な最期でもなかった。 ただの「熱源反応」として処理され、タグを付けられた証拠品として回収される。 それが、神話の時代に引導を渡す、科学という名の死神のやり方だった。
5. 崩壊:白亜の宮廷の黄昏
翌朝。アステリア王国の宮廷「エリュシオン」。
伝令兵がもたらした「折れた聖剣」と、英雄の戦死報告は、それまで楽観論にすがっていた貴族たちの精神を完全に粉砕した。
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ! シグルドが、一撃で!?」 「魔法が通じないというのか!?」 「逃げろ! 領地へ戻るんだ! 王都はもうおしまいだ!」
会議場はパニックに陥った。 昨日まで威厳を保っていた公爵や伯爵たちが、我先にと出口へ殺到し、突き飛ばし合い、醜態を晒している。
国王アステリア十五世は、誰もいなくなった玉座で、シグルドの折れた剣を抱きしめていた。 その刃の断面は、鋭利に切断されたものではなく、圧倒的な暴力によって「千切られた」かのように溶解していた。
「……終わったのだな」
王は乾いた笑みを漏らした。 窓の外を見る。 地平線の彼方から、昨日は見えなかった無数の土煙が上がっているのが見えた。
ソ連軍の主力戦車隊。 その数は数百、いや数千。 大地を埋め尽くす「鋼鉄の津波」が、王都へ向かってゆっくりと、しかし確実に押し寄せてきていた。
もはや、城壁も、騎士も、王の権威も意味を成さない。 アステリア王国という数千年の歴史書は、ここで唐突に、無慈悲に閉じられようとしていた。
一九九〇年、晩秋。 アステリア王国の王都は、一発の砲弾も撃ち込まれることなく、恐怖によって白旗を掲げた。
***
『シグルドの死は、アステリア戦役における分水嶺であった。 これ以降、王国軍による組織的な抵抗は消滅し、戦いは「戦争」から「一方的な占領行政」へと移行する。 魔法という不確定な要素を、科学的アプローチで排除したこの狙撃は、ソ連軍が異世界に適応したことを示す象徴的な事例として、後の軍事教科書に記載されることとなる』 (二〇三五年刊:『戦術魔導戦史・上巻』より抜粋)
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