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鉄と魔法の五カ年計画 ―ソビエト連邦、異世界侵攻作戦―  作者: 納豆マン
3章 アステリア社会主義共和国
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白亜の宮廷の黄昏

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、晩秋。  アステリア王国の王都「エリュシオン」。


 千年前に神託を受けた初代国王が築いたとされるこの都は、白亜の城壁と尖塔が立ち並び、二つの太陽の光を受けて宝石のように輝いていた。  大通りには市場が立ち、何も知らない市民たちが冬支度のための買い物に行き交っている。一見すれば、そこにあるのは平和な日常そのものだった。


 だが、その中心にある王宮の円卓会議場では、窓の外の陽光とは裏腹に、腐敗した沼の底のようなどろどろとした空気が立ち込めていた。


1. 宮廷の喧噪:責任転嫁と陰謀


「――ですから! カスティリア要塞の陥落は、守備を任されていた辺境伯の戦術的失策、いや、怠慢だと申し上げているのです!」


 豪奢な絹のローブを纏った宮廷貴族の代表、カステル公爵が卓を叩いた。  彼の前には、冷えた仔羊のローストと最高級のワインが手付かずのまま置かれている。


「あのような得体の知れない『鋼鉄の怪物』ごときに、数時間で門を明け渡すとは言語道断! これは無能を通り越して、敵国アガステア、あるいはあの奇怪な軍勢との内通を疑うべきではありませんか?」


「ふざけるな、公爵ッ!」


 返り血と煤に汚れたまま、要塞から命からがら王都に駆け戻った諸侯の一人が、椅子を蹴り飛ばして立ち上がった。  彼の鎧はひしゃげ、包帯からは血が滲んでいる。


「貴公は何も見ていない! 我々の兵は、剣を交えることすらできず、顔も見えぬ遠距離から降る『爆音と鉄の雨』に焼かれたのだ! 城壁も、聖騎士の障壁も、奴らの前では薄氷も同然だった!」


「おやめなさい、野蛮な。……要するに、貴殿の魔力不足でしょう? 予算委員会としては、これ以上の軍事費の追加には同意しかねますな。前例がありません」


 会議は紛糾を極めていた。  国家の心臓部にまで敵が迫っているというのに、議論の焦点は「国家の防衛」ではなく、「責任の所在」と「派閥の利益」に終始していた。


 各地の農村で発生している「赤旗」を掲げた農民蜂起への対応についても、議論は噛み合わない。  ある者は「即座に私兵を出して村を焼き払え」と叫び、またある者は「その鎮圧費用は王庫から出るのか、それとも領主持ちか」と隣席を睨みつける。


 彼らにとって、ソビエトの侵攻は恐怖であると同時に、軍事失敗の責任を被せて政敵を失脚させる絶好の機会でもあった。  非常事態を逆手に取り、自派閥の権限を拡大しようとする醜い足の引っ張り合い。カステル公爵の派閥は、すでに「反乱鎮圧」の名目で、敵対する諸侯の領地に「監視員」という名の私兵を送り込む計画を熱心に練っていた。


2. 国王の憂鬱:玉座という名の檻


 その光景を、玉座から見下ろす国王アステリア十五世は、深い溜息を飲み込んだ。


 目の前で繰り広げられるのは、千年前から変わらぬ醜悪な権力劇だ。  国家の崩壊が目前に迫っているというのに、彼らの関心は依然として「次の宮廷儀礼の席順」と同レベルの次元にある。


(……この者たちは、まだ気づいておらぬのだ。あの『赤旗』が意味する絶望の本質に)


 国王の手元には、前線の密偵から届いた一通の羊皮紙があった。  そこには、震える文字で信じがたい事実が記されていた。


 ――『魔法を持たぬ農民が、鋼鉄の筒(銃)を用い、武装した騎士を殺害した』


 国王は、指先が冷たくなるのを感じた。


 この世界において、貴族が貴族たり得るのは、彼らが生まれながらに「魔力」を持ち、農民には持ち得ない圧倒的な武力を独占していたからだ。  一人の騎士は百人の農民に勝る。それが世界のことわりであり、統治の根幹だった。


 だが、あの鋼鉄の軍勢がもたらした「力」は、その前提を根底から覆してしまった。


(血統も、修練も、才能も関係ない。子供が指を動かすだけで、生涯を鍛錬に捧げた騎士が死ぬのなら……)


 国王は、宮殿の窓から見える下町を見下ろした。  今は平伏しているあの民衆たちが、もし全員「あの筒」を手にしたら?


(我々がこれまで当然のように享受してきた「特権」など、冬の朝の霧のように呆気なく消え去るのではないか)


 諸侯たちの怒号を聞きながら、国王は内心で激しい嫌悪感を抱いていた。  もはや、この国は詰んでいる。  むしろ、この統制の取れない、欲望にまみれた「高貴なる者たち」から解放されるのであれば、いっそ、あの赤い旗の下に下った方がマシなのではないか――。


 そんな破滅的な思考が脳裏をよぎった、その時だった。


 ダンッ!


 重厚な会議場の扉が、物理的な衝撃で押し開かれた。  衛兵が止める間もない。  入ってきたのは、全身に魔力の燐光を纏った一人の男だった。


3. 最後の希望:英雄シグルド


「……見苦しいぞ、貴様ら」


 低く、だがよく通る声が、貴族たちの喧騒を一瞬で凍りつかせた。


 王国最強の剣、英雄シグルド。  蒼銀の鎧に身を包み、腰にはドラゴンの鱗すら切り裂くという国宝「聖剣グラム」を帯びている。  かつて単身でアガステア帝国の一個師団を退け、十数頭のドラゴンを討ち取った「生きる伝説」が、そこに立っていた。


「シ、シグルド殿! 遅かったではないか!」 「そうだ、貴殿がいればカスティリア要塞など落ちなかったのだ!」


 先ほどまで責任を押し付け合っていた貴族たちが、救世主を見つけた子供のようにシグルドに群がる。  シグルドは、そんな彼らを軽蔑の眼差しで一瞥すると、玉座の王に向かって片膝をついた。


「陛下。……前線の惨状、見てまいりました。あれは、人間が手にして良い力ではありません」


「シグルドよ。お前の目から見て、あの『ソビエト』とかいう軍勢に勝機はあるか?」


 国王の問いに、シグルドは静かに首を横に振った。


「正面からぶつかれば、勝ち目はありません。奴らの放つ『鉄の雨』は、我が国の全魔導士を束ねても防ぎきれぬでしょう。……数と物量が違いすぎます」


 会議場に絶望的な沈黙が落ちた。英雄の口から語られた敗北の予言は、決定的な死刑宣告に等しかった。


 だが、シグルドは顔を上げ、鋭い眼光を放った。


「しかし、奴らにも弱点はあります。……奴らの『魔法(兵器)』は、音と火、そして光に頼っているということです」


 シグルドは立ち上がり、腰の剣に手をかけた。


「奴らの動かす鉄の箱(戦車)も、巨大な筒(大砲)も、それを操っているのは生身の人間です。そして、奴らは『魔法』を知らない」


「……どういう意味だ?」


「奴らは、遠くから一方的に破壊することには長けていますが、至近距離での『神秘』への対応策を持っていません。……私が単独で潜入し、敵の指揮官の首を獲ります」


 シグルドの策は、英雄だけが可能な「暗殺」だった。  物理法則を遮断する『沈黙の結界』と『認識阻害』の術式。これを二重に展開し、夜陰に乗じて敵の本陣へ潜り込む。  敵がこちらを認識する前に、聖剣の一撃で指揮系統を断つ。


「無茶だ、シグルド! たった一人で、あの数万の軍勢の中に飛び込むなど!」


「誰かがやらねば、この国は終わりです」


 シグルドは、震える貴族たちには目もくれず、国王を真っ直ぐに見つめた。


「陛下。……私が戻らぬ時は、民を連れてお逃げください。もはや、城壁も騎士も、あの『赤い嵐』の前では無力です」


「……死にに行くというのか」 「いいえ。……騎士としての、最後の務めを果たしに行くだけです」


 シグルドは一礼すると、踵を返した。  その背中には、悲壮な決意と、自身の魔法に対する絶対の自負が漂っていた。  彼は知っていた。物理的な破壊力では勝てない。だが、「魔法」ということわりにおいて、自分は決して遅れは取らないと。


 王宮を出た英雄は、沈みゆく二つの太陽を背に、ソ連軍が陣を敷く荒野へと馬を走らせた。


 それが、アステリア王国が見た、最後の「希望」の後ろ姿であった。


 ***


 その夜、王都の貴族たちは「英雄の吉報」を待って、安堵の祝杯を挙げていた。  彼らは信じていたのだ。  これまでのお伽話がそうであったように、最後には必ず英雄が邪悪な怪物を打ち倒し、平和な日常(特権)が戻ってくるのだと。


 だが、彼らは知らなかった。  ソ連軍の前線基地には、英雄の「認識阻害魔法」さえも無効化する、冷徹な「科学のサーマルスコープ」が待ち構えていることを

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