辺境の赤旗
【注意・免責事項】
※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。
※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。
※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。
ゲートから南へ約四十キロ。 黄金色の草原を切り裂くように、三両のBTR-80装甲兵員輸送車が泥を跳ね上げながら進んでいた。
車列の先頭を行くアレクセイ大尉は、ハッチから身を乗り出し、双眼鏡で地平線を凝視していた。彼の傍らでは、カイルが複雑な表情で風に当たっている。
「大尉同志、前方に煙を確認。……ただの野焼きではありません、黒煙です。複数の建物が燃えています」
無線機から、先行する偵察分隊の報告が飛ぶ。アレクセイは鋭く目を細めた。
「全車、戦闘準備。防護マスクを装着せよ。カイル、あれは君の国の村か?」 「……いえ、ここは王国の最果て、アガステア帝国との国境付近です。あの煙は……帝国の『徴発(略奪)』でしょう。彼らは春になると、種籾すら奪い去っていく」
ソ連軍が村の入り口に到達したとき、そこにあったのは中世的な絶望の光景だった。
藁ぶき屋根の家々が燃え、泥まみれの農民たちが広場に引きずり出されていた。 彼らを取り囲むのは、黒い革鎧を纏い、不気味に発光する剣を提げた帝国騎士の小部隊だ。
「無能な平民どもめ、マナの蓄えもこれだけか! 貴公らの命など、帝国の一粒の魔石にも劣るわ!」
帝国の騎士が、泣き叫ぶ老婆に向かって右手をかざす。 彼の掌から**初級魔法「火球」**が放たれようとした、その瞬間だった。
ズドォォン!!
腹の底に響くような重低音が、平原の空気を切り裂いた。
BTRの屋根に据えられたKPVT一四・五ミリ重機関銃が、火を噴いたのだ。
それは魔法の詠唱よりも遥かに速く、音速を超えて死を運ぶ。 老婆を殺そうとした騎士の腕が、肩から先を巨大な運動エネルギーに抉られ、文字通り「霧散」した。
「な、何だ!? 反撃か! 聖騎士、障壁を展開せよ!」
帝国の小隊長が叫ぶ。即座に二人の聖騎士が前に出、杖を突き立てて中級防御障壁を張り巡らせた。 半透明の青いドームが、彼らの前に立ちはだかる。 王国と帝国の戦争であれば、これで敵の矢も火球も防げるはずだった。
「……標的、障壁。徹甲焼夷弾、斉射」
アレクセイの冷徹な命令。BTRの機銃が再び唸る。
一発、二発、三発。 軽戦車の装甲すら撃ち抜く一四・五ミリ弾が、同じ一点を執拗に叩く。 魔法障壁は激しい火花を散らし、魔力を供給している聖騎士たちの顔面が苦悶に歪んだ。
「ぐ、あああああッ! 物理的衝撃が強すぎる! マナの供給が追いつか……!」
パリン!
ガラスが割れるような音と共に、千年の神秘が砕け散った。
障壁を失った騎士たちに、ソ連兵たちのAK-74が襲いかかる。 身体強化魔法で「一個分隊並み」の戦闘力を持つはずの騎士たちも、遮蔽物のない広場で、一秒間に十発以上の鉛弾を吐き出す銃火器の前では、単なる柔らかい標的に過ぎなかった。
わずか数分の出来事だった。 広場には、帝国騎士たちの無残な死体が転がり、生き残った農民たちは、腰を抜かして自分たちの「救世主」を見上げていた。
黒いゴム製の防護マスクを被り、感情の読み取れないレンズの奥から自分たちを見下ろす、鋼鉄の怪物に乗った兵士たち。 それは農民たちにとって、帝国軍以上に理解不能な「異界の悪魔」に見えた。
アレクセイはハッチから降り、銃を下げて農民たちへ歩み寄った。そして、カイルに頷いて見せた。 カイルは震える声で、昨日言語学者が必死にカードにまとめたフレーズを読み上げた。
「……案ずるな。我々は、ソビエト連邦。君たちを……略奪者から解放しにきた」
アレクセイの合図で、イワン二等兵が進み出る。 彼は怯える少女の前にしゃがみ込み、軍用鞄から取り出した黒パンとコンビーフの缶詰を差し出した。
少女がおずおずとその食べ物を受け取った瞬間、広場を支配していた凍りつくような沈黙が、わずかに解けた。
夕暮れ時、略奪された村の中央には、焼け残った井戸の柱を利用して、一枚の旗が掲げられた。 鎌と槌を染め抜いた、深紅の旗――ソビエト連邦国旗である。
「大尉同志、村の周囲に有線電話を敷設しました。これよりここを『第一前進拠点』と定め、食料配給と国土測量を開始します」
アレクセイは頷き、村の入り口に設置されたばかりの「通行禁止」の看板を見つめた。
ソ連は、帝国を追い払った。 だが、その対価として、この村の自治と自由を、その強固な管理システムの中に飲み込んだのだ。
こうして、アステリア大陸の片隅に、人類史上初の「異世界ソビエト領」が誕生した。
***
『当時の農民にとって、ソ連兵の配った黒パンは「魔法のパン」と呼ばれた。 それは貴族の施しよりも確実で、帝国の剣よりも強力な管理の象徴であった。 この日から、農民たちは「神への祈り」を、「ソ連の配給」へと徐々に置き換えていくことになる』 (二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)
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