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鉄と魔法の五カ年計画 ―ソビエト連邦、異世界侵攻作戦―  作者: 納豆マン
3章 アステリア社会主義共和国
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未知への跳躍

【注意・免責事項】

※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。

※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。

※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。

一九九〇年、五月。  カザフスタンの大地に突き刺さった巨大な「石棺サルコファガス」の内部は、軍事基地というよりは、巨大な「工場」の様相を呈していた。


 ゲートの本格運用を前に、クレムリンが直面したのは、一七九八年のナポレオンによるエジプト遠征を遥かに凌ぐ兵站の限界であった。  ゲートの「口径」は不安定であり、電力消費を抑えるために開放時間は厳格に管理されている。一度に送り込める重量には限界があり、ソ連が得意とする「数千両の戦車による蹂躙」はこの時点では物理的に不可能だった。


「我々が送り込むのは、単なる征服軍ではない。それは『ソビエトという名の精密機械』だ」


 石棺の管制室で、プロジェクトの全責任を負うKGB高官が、分厚い眼鏡を拭いながら断じた。  ゲートを潜るのは、魔導強化された歩兵だけではない。土壌学者、物理学者、疫学者。  彼らが抱えているのは、最新型だが巨大で重い磁気テープ式のデータレコーダー、そして真空管とトランジスタが混在する初期の電子計算機であった。


 司令官アレクセイ大尉は、最終ブリーフィングの壇上で、国家保安委員会(KGB)と科学アカデミーが共同で算出した四つの懸念事項を読み上げた。


 第一は、転移先の安全性の欠如だ。  カザフのゲートは、かつての事変において「魔物」を吐き出した傷口である。アレクセイの部隊には、到着直後に周囲を一掃するための火炎放射器と、旧式の重機関銃が山ほど積み込まれた。


 第二は、地図の不在である。  カイルの記憶は、あくまで馬上の騎士が目視した景色でしかない。偵察機を飛ばす余裕はないため、ソ連軍は光学式のセオドライト(経緯儀)と写真測量機、そして大量の計算尺スライドルールを携えた測量班を同行させた。地平線の一点から三角測量を行い、泥臭く白地図を埋めていく他ない。


 第三は、生物学的ハザード。  地球の医学が通用しない未知の菌に対し、ソ連が用意したのは、軍事機密扱いの実験用広域抗生物質の大量投与と、息苦しいゴム製の化学防護服(OP-1)、そして炭素フィルター式のガスマスクであった。


 第四は、言語の壁。  カイルとの対話で判明したアステリア語は、依然として断片的だ。ソ連側は、カイルが発した単語をカード化した**「対照単語集」を数千枚**作成し、言語学者がそれを手作業でめくりながら、現地の平民と言葉を繋ぎ合わせる計画を立てた。


 五月一日、午前六時。  赤い回転灯が激しく点滅し、重厚な油圧の音が石棺に響く。  カイルを乗せた先導の装甲車BTR-80が、黒煙を吹き上げながら、虹色の歪みを放つゲートへと突っ込んだ。


「……物理障壁通過。気圧、〇・九八気圧。重力、地球とほぼ同等」


 アレクセイがハッチから身を乗り出すと、視界を埋め尽くしていた無機質なコンクリートの壁が、瞬時にして黄金色の輝きへと書き換えられた。


 最初に鼻を突いたのは、石棺内のディーゼル排気の臭いではなく、濃密な「草の匂い」だった。


 そこは、見渡す限りの草原であった。  頭上には、大小二つの太陽が不気味に並び、地球よりわずかに濃い大気が、防護服のフィルターを通じて兵士たちの肺に流れ込む。


「……汚染なし。魔物反応、近距離に確認できず」


 観測班が、針式のメーターを見ながら無線で叫ぶ。


「繰り返す、転移先は『安全』だ。大気開放を許可する。……同志諸君、我々はアステリア大陸に到着した」


 兵士たちが慎重にマスクを外すと、そこには見渡す限りの地平線が広がっていた。  しかし、感動に浸る間もなく、巨大なクレーン車がゲートから吐き出され、黄金の土を掘り返してコンクリートの杭を打ち込み始めた。  彼らが最初にしたことは「冒険」ではなく、「建設」だった。


 装甲車のハッチから降り立ったカイルは、数ヶ月ぶりに吸う故郷の空気に、深く目を細めた。しかし、その瞳に喜びの色はない。  彼の背後では、学者たちが土壌をスコップで採取し、アナログの高度計で気圧を測り、この世界のすべてを「書面」へと還元しようとしている。


 カイルには分かっていた。  この「調査団」が持ち帰る写真フィルムと磁気テープの情報が、数ヶ月後には、地響きを立てて進軍してくる数百万の赤軍と、大地を埋め尽くす巨大なコンクリート建築を呼び寄せる呼び水となることを。


 ソビエトは救世主として来たのではない。  彼らはこの世界の理を、自らの五年計画という規格に適合させるために来たのだ。


 同じ頃、モスクワ・クレムリン。  ゴルバチョフ書記長の元には、暗号化された第一報が届いていた。


『到達成功。資源濃度、極めて良好。……これより、計画「赤き福音」をフェーズ2――恒久的橋頭堡の建設へと移行する』


 ゴルバチョフは報告書を閉じ、傍らに置かれた世界地図を見つめた。


「ナポレオンはエジプトの砂に埋もれたが、我々はアステリアを失わない。……あそこを、地球で実現できなかった完璧な管理社会にするのだ」


 一九九〇年、五月。ソビエト連邦は、地球という狭隘な揺りかごを飛び出した。  それは人類の飛躍であったが、同時に異世界にとっては、科学という名の「逃れられぬ管理」が始まった日でもあった。


 ***


『初期のソ連調査団が最も時間を費やしたのは、三角測量による白地図の作成であった。  彼らは魔法という未知を恐れず、むしろ未知を「計測不能なデータ」として嫌った。  彼らが最初に打ち込んだコンクリートの杭は、異世界の土壌に科学という名の「枷」をはめた瞬間でもあった』  (二〇三四年刊:『次元を超えた赤い足跡 ― 魔導ソ連初期史』より抜粋)

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