チェリャビンスク-XX(トゥエンティ)の沈黙
【注意・免責事項】
※本作品は生成AI(Gemini)を活用して執筆・構成されたフィクションです。
※本作は架空戦記であり、実在の人物・団体・国家・史実とは一切関係ありません。作中の描写は物語上の演出であり、特定の政治思想や戦争行為を称揚・助長する意図はございません。
※作中には戦争描写、残酷な描写が含まれます。
序章 崩壊の前奏曲
一九八〇年代後半。 かつてプロレタリア独裁の理想を掲げたソビエト社会主義共和国連邦は、巨大な沈没船のように、自らの重みで軋み声を上げていた。
モスクワの空は低く、重い鉛色の雲が、食料配給を求めて行列を作る市民たちの背中を圧迫している。 新冷戦の再燃――「悪の帝国」と断じたレーガン大統領によるSDI(戦略防衛構想)への対抗策として、クレムリンは乏しい国家予算をさらに軍事へと傾斜させていた。
アフガニスタンの峻険な山岳地帯からは、毎日のように「沈黙の貨物」――亜鉛の棺に納められた兵士たちの遺体が届く。 国家の末端はすでに壊死を始めていたが、軍事という一点においてのみ、この帝国は依然として世界を滅ぼすだけの爪を研ぎ続けていた。
だが、運命という名の神がいるとするならば、彼は唯物論を奉じるこの国家に対し、最も非科学的な形で最後の一撃を見舞うことに決めたようだった。
***
【戦闘記録:一九八X年十月十四日】
〇三:一五(カザフ・ソビエト社会主義共和国) カザフの荒野に位置する秘密閉鎖都市『チェリャビンスク-XX』を震源とする、震度五相当の局地的地震を観測。地質学的な予兆は一切なかった。 同時刻、当該都市に配備されていたKGB第8局の通信センターより、一分間の激しいノイズに続いて不可解な音声記録が届く。
「……空間が、燃えている」
その断片的な報告を最後に、通信は途絶した。
〇三:二五(防空軍方面司令部) 消失した都市を中心とした半径五十キロ圏内の軍用回線、レーダー網が完全沈黙。 参謀本部は、米軍が極秘裏に開発した高高度核爆発(EMP攻撃)による奇襲、あるいはサボタージュを疑い、核報復システム『死の手』の稼働ステータスを「黄色」へ引き上げた。 ソ連全土のICBMサイロに、戦慄が走る。
〇三:四五(モスクワ・シェレメーチエヴォ軍用飛行場) 状況確認のため、ウラル軍管区より高高度偵察機『M-17』が緊急発進。 パイロットのボリス大尉は、高度二万メートルから「地表に口を開けた、光を吸い込むような暗闇」を目撃する。
直後、ボリス大尉の絶叫が無線機に響く。
「翼を持つトカゲだ! 冗談じゃない、あれは生き物だ! 時速五百キロを超えている、こちらに来る――!」
それが、M-17から発信された最後の通信となった。
***
午前四時。クレムリン、ゴルバチョフ書記長の執務室。
深夜の冷気に包まれた部屋には、安物の煙草「パピロス」の重い煙が充満していた。 ゴルバチョフは、震える手で赤い電話の受話器を置き、眼前の二人に目を向けた。
KGB議長クリュチコフと、ヤゾフ国防相。 彼らは、ソ連という国家の暴力装置を司る双璧であったが、今、その顔には一様に、かつて見たことのない「根源的な恐怖」が張り付いていた。
「……議長、もう一度言ってくれ」
ゴルバチョフの声は、掠れていた。
「我々の秘密都市が消えた、というのは比喩ではなく、物理的な事実なのか?」
クリュチコフ議長は無言で数枚の写真をテーブルに滑らせた。偵察機が消失直前に自動送信した、超高高度赤外線写真だ。
写真の中央、最新鋭の軍需工場が並んでいたはずの場所には、円盤状の「完全な虚無」が横たわっていた。 そして、その穴の縁から、蟻の這い出しのように「何か」が溢れ出している。
「写真解析の結果は……絶望的です、書記長同志」
国防相のヤゾフが、苦々しく口を開く。
「穴から這い出しているのは、身長三メートルを超える二足歩行の生物。そして空を舞っているのは、MiG-21を炎で焼き落とした翼竜です。……私は軍人だ。西側のステルス機や巡航ミサイルなら戦いようがある。だが、童話の化け物相手に、どうやって戦略を立てろと言うのですか?」
「これはアメリカの工作ではないのか?」
ゴルバチョフの問いに、クリュチコフが首を振る。
「CIAがドラゴンを飼い慣らしているという情報はありません。……これは、別の何かが、我々の世界に蓋を開けたのだと考えるべきです」
沈黙が部屋を支配した。 壁にかかったレーニンの肖像画が、神をも恐れぬ不信心な後継者たちを見下ろしている。
もしこの事実が漏れれば、西側諸国はソ連の「脆弱性」を突いてくるだろう。あるいは、国内の民族主義者たちが「神罰だ」と騒ぎ立て、帝国は自壊する。
「……作戦を承認する」
ゴルバチョフが、重い決断を下した。
「カザフ全域を封鎖。事態は『大規模な工業事故によるガス漏れ、および地殻変動』と発表せよ。その間に、五個師団を現地に叩き込む。最新鋭のT-80、シルカ機関砲車、化学防護兵団……持てるすべての火力を投入し、その『穴』を物理的に塞ぐのだ」
国防相が頷き、立ち上がった。
「作戦名はどういたしますか?」
ゴルバチョフは、窓の外の暗い空を見上げた。
「……『赤き雷鳴』だ。ソビエトの科学が、中世の迷信に負けることは許されん」
こうして、一九八九年の幕開けとともに、人類史上最も異質で、最も凄惨な戦争の火蓋が切られた。
だが、派遣される兵士たちはまだ知らなかった。 彼らが戦うことになる「豚の顔をした巨人」たちが、五・四五ミリ弾を数発受けても笑いながら突撃してくる、地獄の使者であることを。
続きが気になる方は、ぜひブックマーク登録をお願いします!
書き溜めがあるので1日二本投稿でお送りします。




