凍る海
夏にはあれほど触れたがった水が、今はガシャガシャと顎を鳴らし、私を食いちぎろうとする。
バヌアツでもあれば今頃は心安らぐほどに温かいであろう海も、投げ込んだ餅を弾くほどの硬さで、私の体温を奪おうとする。
病は私の内側から現れ、魂の在り処を明確にする。
私は死に物狂いであの子を探した。
こたつでぬくぬく笑いながら、ぬいぐるみと遊んでいた、かわいい私のあの子を。
南南東微南とは何のことなのかさっぱり知らないが、私は其処をめざす。
凍る海の上を渡り、今はもうこの世にいないあの子に会えることを信じて、歩いて進む。
足下からガシャガシャと、顎を鳴らして海が喰らおうとするが──
しゃらくさい
私は海を凍らせる女王──
この世を私のものにすることに決めた。




