1-4: スライム君の無双
弱そうな子が実は強いって言う展開好きだったりします。
ドラゴンの身体から冷気が噴き出してくる。ムーナウルフがその寒さに耐えられず後ろに飛び退く。
……ってさむ!? 真下にいる私にも影響及んでるんですけど!?
とか思っている間にドラゴンは前に飛びかかり、寒さで動きが鈍っているムーナウルフを巨大な前足で3体ほど踏みつぶした。
そこにいたはずのムーナウルフはそれだけでかなりのダメージを負い、灰と魔力霧になって消えてしまった。
てか、ドラゴンの動きが速い。寒さで動きが鈍っていたとはいえ、ムーナウルフの速度に追いつくなんてとんでもない。
とか感心してる場合じゃない。ドラゴンが私の傍を離れた隙に、別のムーナウルフが私に襲い掛かろうとしている。
私は身を翻して攻撃を避ける。それと同時に、私の真横を何かが通り過ぎた。見てみると、水色の半透明な物質がムーナウルフの頭に覆いかぶさっている。
ムーナウルフは前足で半透明な物質を追い払おうとするがなかなか取れない。やがて息苦しそうに悶え始め、そのまま倒れてしまった。灰と魔力霧になって消える。
私は思わず苦笑する。こういうエグい倒し方もするんだ。窒息死って。
その後もドラゴンの快進撃は止まらない。尻尾で弾き飛ばしたり、ツメ(?)でひっかいてみたり、相手を丸呑みにして体内に閉じ込めて窒息死させてみたり。
ムーナウルフはドラゴンのあまりの強さに逃げ出す個体が現れ始め、ついに最後の1匹になった。
にしても、強い。まだ確証は持ててないんだけど、これ、私の使い魔のスライム君だよね?
スライムがこんなに強いなんて、そんなことある?最弱種だよ?私は自分の目で見ているはずの光景を疑わざるを得なかった。
実は、このドラゴンは全く関係ない別の個体で、ふと横を見たら私のスライム君がいたりしない?私は横を見る。そこには地面しかなかった。
何はともあれ、私はこのドラゴンのおかげで窮地から脱することができた。助かった……。
……ん?
私は違和感を覚えた。私はさっき色々、長々と思考を巡らせていたわけだけど、その間ドラゴンは微動だにしなかった。
ドラゴンの様子を見ると、わずかにその身体が揺れていることが分かった。
するとその時、ドラゴンが地面に倒れこみ、みるみるうちに身体が小さくなっていく。そしてそこに残ったのは、私の使い魔のスライム君の姿だった。
「……ええ?」
私は駆け寄りスライム君の様子を見る。まるで液体のように溶けていて、ぐったりと疲れた様子を見せていた。
「……ちょっと?」
この疲れ方、ただの疲労感じゃない。まるで、人間が熱を出して寝込んでいるときの疲れ方だ。
私は顔を上げると、そこには1匹のムーナウルフ。
そのムーナウルフが私に飛びかかってきた。
1対1。
正直、『最後の1体も倒してよスライム君!』って思ったけど、多対一だった前の状況に比べたら数十倍希望が見える。
ムーナウルフの攻撃をギリギリかわし、私は炎の魔法を唱える。
ボォッ!
「ギャン!」
よし、直撃した、って、あれ!?私、魔力が尽きかけてる!?なんで!?
逃げる時は魔力消費の少ない霧魔法を連発してたくらいで、今の炎魔法もそんなに魔力を消費しないはずなんだけど!?
気づかないうちに他の魔物に魔力を吸い取られたかなぁ……?魔力を吸い取るだけして姿を現さない魔物、いるからなぁ。
ムーナウルフも今の私の炎魔法が効いたのか、だいぶ動きが鈍くなっている。
……ん、いや。そうじゃない。このムーナウルフはすでに他の傷を負っていた!
多分さっきのスライム君の攻撃で受けた傷だ。さっきからムーナウルフにしては動きが遅いと思ったら、こういうことだったんだ。
もう一押しだ。そう思った私は再び炎魔法を繰り出した。
シュバッ!
「あっ!!」
しまった、油断してた。同じ魔法を繰り返していては対応されるんだった。
私の炎魔法は避けられてしまい、ムーナウルフの突進が私の腹に直撃する。
私は押し倒されてしまい、ムーナウルフに頬っぺたをひっかかれてしまう。あぶなっ、もうちょっと上にずれてたら失明するところだった。
でも、まだ危機は去っていない。私は押し倒され、ムーナウルフが馬乗りになっている。
ムーナウルフのよだれが1摘垂れたかと思ったその時、私の頭めがけて口を広げてきた。
……ここまで来て、死んでたまるか!
私はムーナウルフの牙に自分の腕を差し出した。
ガブゥ!
痛い!めっちゃ痛い!でも、頭を噛み砕かれるよりマシだ。
それに、想定よりも近くに物体があったムーナウルフはあっけにとられ、顎に力を入れることを忘れている。
私はその隙を付いて、自分の身体から電気魔法を放出させた!
いくらムーナウルフが素早くても、密着してたらその素早さは意味がない!
バリバリバリッ!
ムーナウルフはしばらく痙攣したかと思うと、その場に倒れて灰と魔力霧となって消えた。
……あ、はは。やった。私。ムーナウルフを倒したんだ。
今の電撃で魔力をほぼ使い切って、かなりの疲れを感じているけど、それ以上に達成感に満ちている。
地面に寝転がったままの私に、スライム君が近づいてくる。
ビー玉みたいな黒い目玉が2つ、私を見ていることが分かる。
「……キミもよく頑張ってくれたね。ありがと」
ペチペチペチペチ……
え、ちょ、痛い痛い。なんで叩いてくるの?
スライム君が私の身体を包むように引っ張って(?)、茂みの深いところに隠した。
……あ、そうだ。ムーナウルフを倒したからと言って、危機が去ったわけじゃないんだ。
この森には他にも強い魔物がいる。私もスライム君も疲れ切っているみたいだし、こんな状況でまた魔物に出会ったらもう"死"しかない。
急いで身を隠せる場所を探さないと。
透明化の魔法、使えるかな?うん、魔力が足りない……。見つからないように、コソコソ……。
コソコソと、ね?




