2-14: これからの目的
洞窟に帰ってきました。
さて、本当にどうしよう。これからの目的がなくなってしまった。
今後クーくんと一緒に野宿生活を続けるのも良いけど、なんだか腑に落ちない。
何のために、何をするために、生きてきたんだろう……?
思えば私は、屋敷にいること自体が、生き甲斐のような生活をしてきた。屋敷の人たちはやさしくて、魔法の修業にも積極的に協力してくれた。
屋敷の人たちと一緒にいることが良かったのかな?でも、それはもう叶わない。
それとも、魔法の修業をすることが生き甲斐だったのかな?でも、何のために修行をしてきたんだろう。
修行をして成果を出せれば、屋敷の人に褒めてもらえる。……うーん、結局屋敷の人に行きついてしまうなぁ。
私はもう、クーくんやベルと一緒にこの森で暮らすしかないのだろうか?
……それも悪くないかな?この森について知らないことは山ほどある。
話に聞いていることはたくさんあるけど、今までその話とは違うことが何度も起こっている。
この森の冒険者になってみるのもありかなぁ?
今のところ、この森での生活はうまくいってる。生命の危機に遭遇したときは、申し訳ないけど、ベルやクーくんに助けてもらう。その代わり、私もベルやクーくんの役に立つように一層修業に励む。
とりあえず、それでしばらく過ごしてみよう。また何か思うことがあったら、その時に考えよう。
ん?ベル?
ベルが父上からもらった鞄をツンツンとつついている。
あ、そうだ。これのこと忘れてた。私の私物と役立つものが入っているらしいけど、何が入ってるんだろう?
っていうかこの鞄、よく見たらヴァンダルバッグだ。見た目以上に物を入れることができる魔法の鞄だ。
まず出てきたのは、私の服。あ、やった。もういい加減に服替えたいところだったんだ。
そして、私が愛用していた杖も入ってた!これもほしかったやつ!フードロープの木を加工して作った、長さ70cmくらいのリセンダ貴族お手製の杖。
さらに、魔法の教科書が数冊、私の携帯電話、小さめの保存食が1か月分、……トップバリアアーマーまで入ってる。
トップバリアアーマーって、確か充填した分の魔力量の約2倍に相当する攻撃を無効化する鎧だよね?普通のバリアアーマーなら、魔力量と同じ分だけ。
父上、こんなものまで私にくれるの?私が小さいころからそうだけど、本当に手厚いなぁ。
他にも、自分の今の魔力量を色で可視化してくれる腕輪、付近の魔物の位置を示してくれる水晶、何の変哲もない方位磁針、……特に効果のないただの髪飾り。これ、私がダサいって言って付けたがらなかったやつ……。
方位磁石に関しては、この森の中では少し使いづらい。北と南が分かったところで、工夫して使わないと余計に道に迷うだけだ。
……あと、私が大好きなアイドルの写真集まで入っていた。え?バレてたの?本棚の隅の方に、さらに全然違うブックカバーまでつけて隠してたはずなのに。
あれ?お金まで入ってる。金貨75枚。給料1か月分と同じくらいの額だ。いまさらお金なんて意味ないのに……。それに、リセンダ貴族の身分証まで。
次々と中身を取り出していく私を、クーくんが珍しそうに見ていた。うん、そうだよね。見慣れないものばかりだよね。
ちなみに、マーズサーチがしっかりクーくんを察知している。効果は確かなようだ。
さて、これで中身は全部かな。……ん?
最後の最後に、手紙のようなものが入っていた。
なんだろう、これ?私は中を開封し、読んでみる。
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ヤッコへ
これを読んでいる頃には、ヤッコは2度目の追放を経験しているだろう。
この手紙は、ヤッコが最初に追放された後、私がこっそり書いたものだ。
そして、ヤッコは必ず戻ってくると信じて、筆を執っている。
まず、ヤッコに素っ気ない態度をとり、一方的に追放を言い渡したことを詫びる。本当に申し訳ない。
私もあの場では監視されている故、下手なことは言えなかったのだ。
ヤッコの追放を受けて、屋敷では少なからず動揺が走っている。
屋敷内で追放賛成派と反対派で分かれ、対立こそ起きておらぬが、小さな亀裂が広がっている。
数年にわたるオーガの独裁管理が続いたこのリセンダ貴族に、転機が訪れようとしている。
私は、リセンダ貴族の命は残りわずかだと見ている。
そんなところにヤッコを引き戻すことは、もはや愚策。衰退していくリセンダ貴族の中に置いておくのは拙い選択だ。
ヤッコ、君は別の場所に世話になってもらいなさい。
鞄の中に、方位磁針があるはずだ。それは、この屋敷から一番近い街、トムジャックの街の方向を指し続ける。
まずはそこに向かいなさい。街の門番には、すでに話を通してある。あとは彼らの指示に従うと良い。元リセンダ貴族の者として、丁重に扱ってくれるだろう。
しかし、時間が経つほどその地位の価値も落ちていくだろう。可能な限り、急ぎなさい。私の手持ちの中でヤッコに必要そうなものは、すべて鞄に詰め込んだ。
ヤッコ、思うところは山ほどあるだろうが、少し早い独り立ちだと思って、これからはリセンダ貴族のことは忘れなさい。
尤も、私はヤッコのことは忘れないがな。
私もそのうち、ヤッコのところへ顔を見せに行くと思うが、そうすぐには叶わぬだろう。
最後に、言いたいことがある。
ヤッコ、君は誇りのある私の娘だ。心配することはない。ヤッコは普段からその頭の良さを生かして、どんなに厳しい課題もクリアしてきた。
使い魔が最弱種のスライムであったことはショックだろうが、私には、使い魔では測れぬ才能が隠れていると信じている。
強く生きろよ。
ガーナより
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……父上。やっぱり私のことを思ってくれていたんだ。しかし、屋敷内でそのような事態になっていたなんて。
リセンダ貴族のことは忘れなさい、かぁ。そう簡単に割り切れるかな……?
そうだ、方位磁針。特定の街を指し続けるって、そんなことが可能だったんだ。これも魔法かな?
父上は、街に向かわせようとしているんだ。そうなると、一緒にお金と身分証も入れてくれてた意味も分かる。
……可能な限り、急ぎなさい。
この場に残ってクーくんと過ごすか、別れを告げて街に向かうか。
もし街に向かうのであれば、明日にでもこの場所を発たねば。
父上もある種の被害者です。




