2-10: ベルの新能力
……。
……?
いつまで経っても、炎は私の身体を燃やさなかった。
熱風は感じているというのに、全く熱くない。
どういうことか分からないまま、私は目を開けた。
見てみると、確かに火炎魔法は私たちに向けられていた。でも、目の前にいる何かがそれをすべて吸い込んでいた。
クーくん?いや、違う。
ベルだ!!
ベルがクーくんの前に出て、ベルが大きな壁のような形になって火炎をすべて吸い込んでいる!
さっきまで私の前で立ちふさがっていたクーくんも、困惑した様子で広げていた腕を降ろしていた。
吸い込んでるっていう表現に違和感を覚えるかもしれないけど、本当にそう見える。
ロブロから放たれた火炎魔法が、すべてベルの身体の中に吸い込まれている。
ロブロの火炎魔法が終わると、ベルは元の小さい姿に戻った。……戻ったけど、ベルが燃えてる。えっと、平気なのそれ?
てか、そうだ。まだベルがいたんだ。すぐにベルに頼るまいと考えていたせいか忘れてた。
ごめんベル。色々と。あとはもうベルが頼りだ。
そう考えていると、なんとベルがクーくんの肩の上に飛び乗った。え、燃えてるけど、大丈夫?……クーくん熱がってないみたいだから大丈夫らしい。
クーくんとベルの目が合ったその時、
「……!?」
クーくんの目が見開かれ、驚いたような表情を見せる。ベルが何やら魔法を使ったらしい。
あれは、身体強化の魔法!?しかも、クーくんが使っていたのとは比べ物にならないくらい強力な魔法!
魔法をかけ終わったベルがクーくんの肩から降り、私の隣に立った。ベルを包んでいた炎は消えていた。
あっ、今のでしっかり私の魔力も消費されてる。ベルが魔法を使うときも私の魔力に依存か……。
クーくんは自分にかけられた身体強化の魔法に驚いている様子で、自分の両腕を見つめていた。身体から発せられる魔力オーラはけた違いだった。
しかし、恍惚としている余裕はない。私たちが無事だとわかったロブロはクーくんに突進を繰り出していた。それに気づいたクーくんはその突進を受け止めようと身構えた。
ドスゥン!
「……!?」
衝突したその時、なんとロブロが後ろに押し返され、転倒してしまった。クーくんも勢い余って前に転んでしまう。
クーくん自身も、自分のあまりのパワーアップのしように驚いていた。しかし、同時に自信も湧いていたようだ。
今ならいける。クーくんは拳を握り締め、ロブロに追撃を始めた。ロブロもすぐに起き上がり応戦するが、強化されたクーくんに苦戦し始め、表情にも余裕がなくなってきた。
ロブロの攻撃は防がれ、クーくんの攻撃は確実にダメージを与えている。形勢は圧倒的にクーくんが優勢。
バチィ!!
突然、ロブロがクーくんに電撃を放ってきた。クーくんは一瞬ひるんだ様子を見せ、ロブロはその隙を逃すことなくクーくんに空刃を放ってきた。
ザクッ!
空刃はクーくんの脇腹に命中し、切り傷が増えてしまった。しかし、クーくんはそんなことは気にもせず、ロブロにも爪の斬撃を繰り出した!
強化されてるとはいえ、あのダメージはかなり痛いはず……。我慢してるんだ、クーくん。
そしてついに、クーくんがロブロを殴り倒し、ロブロに馬乗りになった。クーくんが腕を振り上げ、トドメの一撃を繰り出す、その直前だった。
ボォォオオオ!!
ロブロが口から炎を吐き出した。その炎は至近距離でクーくんの身体を焼いた。
私は唖然とした。そんな、良いところまで行ってたのに……。思わず、クーくんの名前を叫ぶところだったけど、そもそも声が出なかった。
しかし、それは杞憂だったことに気づいた。炎の中でクーくんが揺れ動く。クーくんは両腕を大きく広げ、そのまま振り下ろしてロブロの首元を掻き切った。
ザッシュ!!
ロブロの頭が落ちた。そして時間を空けて、ロブロの身体と頭は魔力霧になって消えて行った。
クーくんはしばらくその場に立ち尽くし、そして、
「グオオオオォォォォォ!!!」
勝利の雄たけびを上げた。その表情は達成感に満ちていた。
……やった。勝ったんだ。クーくん、凄いよ。そして、ベルもありがとう。
まったく、ベルも意地悪だなぁ。自分で倒すことだってできただろうに、わざわざクーくんに任せるなんて。
クーくんが私の方を見る。今すぐにでも感謝の言葉をかけたいけど、ゴメン、声でないや。
やがてクーくんは私のところに駆け寄ってきて、心配している様子であちこちから私の状態を見始める。私が怪我を負ってることは分かってるのだろう。
ポスッ
痛っ!!
クーくんが私の身体を軽く叩くと、激痛が走った。クーくんも私が痛がっていることに気づいて、おどおどしながら私から離れた。
どうしようかと困っている様子のクーくん。すると、突然私の身体が浮き始めた。
え、何?と思ったけど、原因はすぐにわかった。ベルが私の身体を物体操作の魔法で浮かせているのだ。
あの、人体を動かすのって相当神経使うはずなんですけど?本人も動こうとするし、いや、私は今動いてないか。
気が付けば、私の身体はクーくんの目の前に移動していた。クーくんが私の下に腕を差し出すと、ゆっくりと私の身体がその腕に降りていく。たった今、私はクーくんに抱えられている状態だ。
ちなみに、今ので私の魔力はほぼ尽きた。多分ベルもこれ以上行動できない。
クーくんは私をしっかりと抱えて、隠れ家のところへと走って行った。
ん、え、あ、待って、痛い、痛い、揺らさないで、お願い。
……。
私が痛がる様子に気づいたクーくん、動きがゆっくりになった。
ゆっくり、ゆーーくりと……。




