2-8: 水辺を発見!
なんだかんだ言って、野宿生活も板に付いたようです。
あれから何日か経ったある日。多分、屋敷追放から1週間後。森での野宿生活にだいぶ慣れてきた。
食用になる草もいくつか種類は見つけたし、クーくんもラドックを1匹獲ってきてくれた。……くれたんだけど、流石にラドックを一人で全部食べきれなかった。丸々1匹って量が多すぎる!
結局、ちょっと前に言ってたベルから新しく魔法を教わる試みは失敗した。そもそも言葉通じないし、私が一方的にまねしようとしても難しすぎて無理。
それと、未だに屋敷が見つからない。いったい私はどれだけ遠くに逃げてしまったのだろう……。
この日はクーくんが私の手を引いてどこかに連れて行こうとしていた。
どこに行くんだろうと思っていたけど、その答えは着いてから分かった。
「川だぁ!」
そう、川だった。早速クーくんも水浴びを始めているし、ベルは……、川の中に潜ったまま微動だにしない。大丈夫なのかな?と思ってつついてみたけど、こっち見て目を細めて笑ってたから大丈夫そう。
実を言うと、森生活を始めてから一度もまともに体を洗えていなかった。ベルが汚れを取る能力があることは知っていたけど、その様子が汚れを食べているように見えて申し訳なくなって頼んでいなかった。
一応何度か水辺を見つけたことはあったのだけど、汚れてたり、小さかったりで実用性がなかった。でもこの川は割ときれいで、多分飲んでも大丈夫そうだ。
そうと決まれば私も久しぶりのお風呂だ。お風呂っていうか、冷水だけど。川に入るために服を脱い、で……。
……脱ぐ前に、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。外で裸になるの?でも、他に人間はいないし、あ、クーくんとベルがいる。
でも、あれ?クーくんもベルも元から裸だし、なんなら魔物ってみんな裸だし(例外いるけど)、そこって気にしないの??
あ、そういえば読者も見てる。いや、さすがに読者に向けてみだらな描写は見せないよ?この小説全年齢対象だし。
え?そういうの待ってる人がいる?知らないよ。お約束でしょそんなの。って、何を言ってるんだ私は。
まぁいいや。そういうの気にしてたらいつまで経っても水浴びできない。服を脱いで、服をキレイに畳んで、パンツだけ履いて川に入ろう。上半身は、もう気にしない。そんな大きくないし。
う、冷たい!でも入れなくはない。川の深さは私の胸辺りが漬かるくらい。川の冷たさに慣れる頃には逆に心地よく感じるようになった。
こう考えると、水って大切なんだなぁ。屋敷にいた頃に『水魔法?水が欲しかったら水道から取ればいいじゃない』とか言って水魔法を覚えようとしなかった私をぶん殴りたい。
あ、いや。魔法で氷作って溶かせば、少なくとも魔力を含む水はできたのか。やっちゃったなぁ。まぁいいや。
それはそうとこの川の水、普通の水とは違う気がする。これ多分魔力も溶け込んでる?まぁ、そもそもこの森の空気は魔力濃度も高いし、川も同じなのかな?
そんなことを考えていたら、川に入る前より体がきれいになった気がする。軽く腕を撫でてみるとすべすべしてた。やっぱりお風呂って大事、いや、冷水だけど。
ザパァアン!
んえ?
何か大きな音がしたと思ったら、クーくんが川の中の魚を獲っていた。……川で魚採り、クマらしいなぁ。
あ、そうだ!森の食糧確保でまだ分からないことあったんだった!
ちょっと前にラドックがネズミを捕まえて食べてた件、なんで倒した魔物が霧にならなかったのか、まだ解明できてないんだ!
実際、クーくんが獲った魚も霧になってない。あれは、まだ生きてるから?でも、死んでるのもいるなぁ。
食料にするつもりで殺せば霧にならないとか?そんな感情論で霧になるかどうか決まるって流石にありえなくない?
まぁいいや、とりあえず私もやってみよう。私は川の様子を見て魚を探した。
……あれ、かな?魚くらいの大きさの影が5m先のところにある。
私はその影を指差し、魔鉄砲を放つ構えを取った。
魔鉄砲は、指の先に魔力を集め、鉄砲のように放つ魔法だ。弾は刃のように鋭く、当たれば普通に鉄砲と同じかそれ以上の威力だ。おまけに、放つ魔力量はかなり少ないのでコスパも良い。
私は影に向けて狙いを定め、ここぞというタイミングで撃った!
パシュッ!
当たった!その影はプカッと浮かんできて川から姿を現す。やっぱり魚だ。
その魚は霧にならずに、川の流れについていくように流れていく。
「あ、待って」
私はその魚を物体操作の魔法で私に引き寄せた。
うん。どう見ても見慣れた魚だ。っていうか、これって魔物じゃなくて普通の魚では?こんなところにもいるんだ。
ふと横を見ると、クーくんがこちらを見ていた。なんだか意外そうな表情だった。
私がこうやって魔法で誰かを倒すのって、クーくんには初めて見せたね。ちょっと驚かせたかな?
さて、もう少し実験だ。相手を霧にせずに倒す方法を探ってみよう。
倒したのは15匹くらいだろうか。うち6匹が霧にならずに収獲できて、残りは全部魔力霧になって消えてしまった。
収獲できた魚は全部、見たことあるような普通の魚だった。一方で、魔物と呼ばれるような魚は全部魔力霧になって消えた気がする。
多分だけど、普通の動物は倒しても遺体が残るけど、魔物は倒すと霧になって消えるってことなのかな?思い返せば、ラドックが仕留めていたネズミも、魔物じゃない普通のネズミだった気がする。
ちゃんと調べたら他に分かることがあるかもしれないけど、ひとまずこの理論で考えてよさそうだ。
「……」
クーくんが大量の魚を抱えて私に見せてきた。あーー、これ、私の分もあるのかな?でも、今私が獲った分でお腹いっぱいになっちゃうよ。
あ、ベルが川から上がってきた。……水を吸ったからなのかいつもより瑞々しい気がする。気のせい?
さてと、せっかく魚もあるし、ちょっとお料理してみようかな。料理といっても、焼くだけなんだけど。
左手の上に魔法で炎を作って、右手で魚を持って炎の上に、って、やっぱ熱い!右手が!
……よくよく考えたら、なんで左手の方は大丈夫なんだろ?確かに左手でも熱は感じてるけどさぁ。あ、待って、左手も熱くなってきた。終わりだ。消火。えいっ。
しょうがない、炎はどこか適当に地面燃やしとこうか。ここの森は燃えないから火事は気にしなくて良いし。
ほぼほぼ焚火みたいな場所が出来上がったところで、魚を焼き始めよう。
クーくんが物珍しそうに魚を焼いてる様子を見てた。やっぱり魔物にとっては料理って馴染みがないのかな?
ちなみに、今焼いてる魚は3匹。全部私の物体操作魔法で炎の上で浮かせている。でも、これが結構しんどい。
ちょっと前に物体操作は2つが限界って言ったけど、あれは動かす場合。単に空中に制止させるだけなら3つまで大丈夫。結構ギリギリだけど……。まぁ、これも魔法の修行ってことで。
ボトッ
「あっ!!」
……あーあ、1匹火の中に落ちちゃった。慌てて火から出したけど、ちょっと炭っぽくなっちゃった。
しょうがない。これはこれで調理完了ってことにしとこ。後で私が食べ……、ベル?その魚は焼きすぎたやつだよ?炭っぽいよ?モグモグ食べちゃってるけど、良いの?
目を細めて笑ってるからどうやら良いらしい。良いんだ。
さて、他の2匹は良い感じに焼けてきたから私とクーくんで分けよう。ベルの分もまた焼いてあげよう。
私は焼き魚を一口食べた。ちょっと熱い。でも美味しい。こんなにおいしいの食べたの久しぶりだなぁ。屋敷の料理には劣るけど、いまさらそんな贅沢言ってられない。
クーくんも美味しそうに焼き魚を食べてた。口が大きいから一口で平らげちゃったね。絶対足りないだろうし、まだまだ焼いてあげよう。
ガサガサッ
ん?……あっ。しまった。
魚の匂いにつられてやってきたのか、大型の魔物が寄り付いてしまった。
私たちはとっさに戦闘態勢に入る。
食事中って結構隙だらけだよね。




