2-7: 師弟関係?
当たり前ですが、クーくんはヤッコより強いです。
「うわっ!!」
私はとっさに横に飛び退き、クーくんの突進を間一髪避けた。
ってか、この洞窟狭い!最初は広すぎるって思ってたけど、クーくんがいる今、しかも動き回るとなると狭い!
私は急いでクーくんの方に身体を向ける。クーくんの表情はどこかリラックスしていて、その場でこちらの様子をうかがっている。
えっと、あくまで傷つける戦いじゃないってことで良いですか?てか、そうでないと死んでしまうのですが。思わず敬語になっちゃった。
それなら、私が今やることは自分の力を見せること。私は魔法球を作り、魔力を集め始めた。
この魔法球は殺傷能力がない柔らかいボールのような物。でも高速でぶつけられたら普通に痛いし衝撃も伝わる。
よくこれを使って屋敷の人と模擬戦をやってた。お互い傷付かないし、こういう時は便利な魔法だ。
魔法球をクーくんに向けて放つと、クーくんはそれを前足で弾き飛ばしてしまった。魔法球はかき消されて、今度はクーくんが私に突撃してきた。
クーくんが私に前足を振り下ろし、私はそれをなんとか避けた。……これ、手加減してるね?私でも避けれるくらい遅かったよ?
この前の木を揺らして木の実を落としてくれた時の一振りとは桁違いに遅い。やっぱりこれは模擬戦なんだね?
とか考えている間にもクーくんは次の攻撃を繰り出してきた。それもかろうじて避けれるけど、これだとこっちが攻撃できない。
後ろに飛んで距離をとっても、クーくんはすかさず前に詰めてくる。なるほど、これがクーくんの戦い方か……。こんなことされたら攻撃のしようがない。
思えば、屋敷の人と模擬戦をしたときも、近くに詰められて押し負けることがあった気がする。これを改善しないと実戦でも同じ負け方をしてしまう。しかも、森の中の実戦での負けは、死を意味する。クーくんやベル頼みではだめだ。
でも、どうする?攻撃の合間を縫って私も攻撃する?でも正直避けるので精いっぱいでその隙が無い。って──
ドスッ!
「きゃっ!」
避けられなかった!クーくんの横振りが私の肩に命中し、軽く吹っ飛んでしまった。
やっぱり強いよクーくん!ちょっとは手加減して!……いや、手加減してるね。手加減してないときのクーくん知ってるもん。
飛ばされて地面に倒れてしまった私を見たクーくんが、慌てた様子で私に駆け寄ってきた。
かなり心配そうな表情で、でも何かするわけでもなく、私の一歩手前で両手を軽く上げて動揺していた。
……人間の私の扱いが分からないのかな?でも、私は大丈夫だよ。
不意打ちになるかもしれないけど、私は至近距離で魔法球をクーくんに投げつけた。
魔法球はクーくんの胸元辺りにぶつかり、反動でクーくんは一歩後ろに押された。そして、顔を上げたクーくんの表情は笑っていた。
それからは、クーくんとの模擬戦が再開された。ほとんどが、至近距離の攻防だった。クーくん、というよりは、クーゲルベアーは遠距離の攻撃手段がないから、そうなっても仕方ない。
私としても、安全に実践訓練ができるのは助かる。なんだか、クーくんに助けられてばかりだ。いつかお返しができたらいいな。
うえぇ、さすがに疲れた。
多分30分も経ってないと思うんだけど、激しく体を動かしたせいで疲労感が半端じゃない。
洞窟の壁近くで息を切らしながら座り込んでる私をクーくんが心配そうに見てる。大丈夫、疲れただけだから。
多少の擦り傷はあるけど、こんなの時間たったら治るし。
……あ、直らないのあった。服だ。
思えば、屋敷から追い出されてからずっとこの服だ。ところどころ汚れてるし、ちょっと破けてる。
えっと、これどうしようかなぁ……。替えの服なんて持ってないし、着れなくなるまでボロボロになったときめちゃくちゃ困る。裸で生活したくないよ。
自分の服を見ながらそんなことを考えていると、ベルが私の身体に乗ってきた。
「ベル?」
ベルは服の破けたところに覆いかぶさると、その場でじっとした。すると、半透明なベル越しに破けた服が段々と元通りになっていく様子が見えた!
「ええ!?ベル!?」
私は驚きの声を上げる。ベルってそんなこともできたの!?
なんだか、私が覚えていない魔法をベルは知ってるような気がしてきた。もしかして、新しい魔法はベルから教えてもらえばいいのでは?
服の修理が終わった後、ベルは私の身体から降りた。服は傷一つない元の状態に戻っていた。ついでに、傷の周囲にあった汚れもそれなりに取れていた。
私の魔力は、減っている気はしない。いや、恐らく少なからず消費はされているのだろうけど、そんなに多くはないのだろう。
その様子を見ていたクーくんも驚いたような顔をしていた。相変わらずベルにはいつも驚かされる。
こうして見ると、私って本当に未熟だなぁ。ベルは私の魔力に依存しているとはいえ万能すぎるし、クーくんはこの森で暮らしてきた先輩だ。
助けられてばかりじゃダメだ。私も強くなって、二人の負担を軽くしなきゃ。
ベルが万能すぎて作者的に扱いが難しいです。




