2-6: 熊さんと探索
くまさんと一緒にお散歩です。
森の中は、意外にも目印になるような箇所がいくつもあった。
2本並んだ双子のような木とか、妙に斜めに生えてきている木とか、誰かが壊したであろう木っ端みじんになった木とか、
黄色い花が乱立している茂みとか、青いキノコが生えている地帯とか、地面が丸く抉れてる場所とか、誰かのデッカイ糞とか……。
こうしてみると、誰かが人工的に作った変わり映えの無い規則正しい配置の道に比べたら、結構わかりやすいかもしれない。
そしてベルは、そこら辺にあるキノコとか草を食べていた。そういえば、使い魔にもご飯いるのかな?だとしたらそれも考えないといけないね。
ちなみに、こうしている間にもクーゲルベアーくんは私の後ろをつけてきていた。っていうか、距離も近い。だいたい5mくらいしか離れていないけど、クーゲルベアーくんが大きいから近くにいると錯覚してしまう。
クーゲルベアーくんはじっと私を見てきていて、たまに周囲を見渡す。私もそのクーゲルベアーくんの様子をチラチラ見ていたけど、ちょっとわかったことがある。
私を見るときと、周囲を見るときで、クーゲルベアーくんの目つきが違う。私に向けられる視線は、どこか優しさを感じるような視線だけど、周囲を見るときのクーゲルベアーくんは、私のイメージ通りの威圧感のある風貌。
もしかして、私のこと心配してくれてる?でも、私は人間だよ?魔物と人間が共存するお話は絵本で呼んだことはあるけど、あれってフィクションでしょ?
現実でそう言うことがあったっていうニュースは聞いたことがない。歴史は、どうだろう?流石に私もそこまで調べてないや。
今から調べることもできないし、深く考えるのはやめよう。
ガサッ
「えっ?」
突然、クーゲルベアーくんが私の前に立ちふさがり、私を止めるように腕を横に差し出した。
そのクーゲルベアーくんは緊張した面持ちである一点を見つめていた。私がその方向を見ると、別のクーゲルベアーがこちらに向かって歩いて来ていた。
向こうのクーゲルベアーもこっちを見ていた。いや、こっちというよりは、こっちのクーゲルベアーくん……、
もうクーくんで良いや。クーくんの方を見ているようだった。
クーくんも相手のクーゲルベアーを見ているけど、その目つきは厳しく、息も多少荒くなっていることが分かる。場の空気は不安定で、わずかな刺激でこの場は戦場に変わってしまいそうだった。
クーゲルベアーは群れない習性があるし、お互い不干渉なことは本を読んでて知っているけど、ここまで険悪なものなの?
そして相手のクーゲルベアーがすぐ傍まで近づいてきて、そのまますれ違った。
……あれ?あのクーゲルベアー、大きくない?すれ違う時に気づいたけど、クーくんより相手のクーゲルベアーのほうが頭2つ分くらい大きかった。
クーくんが前屈みになっていることを考えても、明らかに相手の方が大きかった。
相手はクーゲルベアーのボス的存在だったのかな?だからクーくんもあんなに睨んでた?でも、クーゲルベアーにそういうカーストのような強弱関係はないって聞いてるけど……。
クーくんが相手のクーゲルベアーがよそに行ったことを確認すると、ほっと一息ついて私の方を見た。
……あ、そうだ。これ、助けてもらったんだ。クーくんがいなかったら、間違いなくさっきのクーゲルベアーと戦闘になってた。
「ありがとう、かばってくれて」
人間の言葉は分からないと思うけど、ほほ笑みながら伝えた。
あ、またクーくん頬染めてそっぽむいちゃった。あれ、言葉通じてる?ちょっと試してみよう。
「今のって、誰なの?クーゲルベアー達って、いつもあんな感じなの?」
「……」
「……」
クーくんは困ったように目線を動かしてる。
あ、そっか。これじゃ言葉を理解できていても返事ができないや。そうだなぁ。
「どこか、水辺みたいなところってある?知ってたら連れて行ってほしいな」
「……」
「……」
うーん。これは人間の言葉を理解できてないみたい。さっきのありがとうは、表情を見たのかな?
今度は言葉を言わずに笑顔だけ見せてみた。
あっ、笑い返してくれた。え、まって、クーくんの笑顔ってこんなにかわいいの?これだと私が頬染めちゃうじゃない!
私は恥ずかしさの余り、そっぽを向いてまた歩き始めた。
さて、隠れ家への帰り道を見失わないようにしつつ周囲を探索してみたけど、屋敷の手掛かりになるようなものは見つからなかった。
てか疲れた!歩くだけなのにこんなに体力使うものなの!?
隠れ家に着いた私は、洞窟の床で仰向けで寝転がっていた。
今思えば、私って屋敷から出る機会なんて滅多になかったんだなぁ。出たら危険だし、屋敷の中でもこんなに歩くことはなかった。
多分、2時間くらいは歩いたんじゃない?それだけで足が疲れてもう動けない!
でも、探索はできた。多分周囲2kmの地形は把握できたと思う。忘れてなければ、ここから広げることもできるはず。
ちょっと長めに休んで、足の疲れも引いてきた。
……そういえば、一度も例のクーゲルベアー以外の魔物に会わなかったなぁ。こんなに遭遇率低かったっけ?
ふとクーくんが私の傍に近づいてきた。
……あ、そりゃそうだ!魔物はクーくんが全員追い払ってたんだ!
クーゲルベアーをわざわざ相手取る魔物はそんなに多くない。ムーナウルフとか一部の魔物は構わず交戦しちゃうけど、それ以外は逃げちゃう!
あちゃー。困ったなぁ、これじゃ実戦練習がまともにできないぞ?かといってクーくんに来ないように言う方法が分からないし、そもそもそういうことをするのも野暮だし……。
どうしよう、うーーん。
うん、どうしようもないね。しょうがない。せめて洞窟内での特訓だけでも欠かさずにやらなきゃ。
私は起き上がり、魔法の特訓を始めた。
この前やった修行と同じようなことをやっているけど、クーくんがずっとその様子を見てる。
クーゲルベアーは攻撃手段のほとんどが物理攻撃、魔法を使うときも身体強化がほとんど。
私が炎とかの物質を発生させて魔法を使う様子は珍しいのだろうね。
……ん?クーくんが立ち上がって私の目の前に立ってきた。
えっと、そこにいると危ないよ?とか思ってると、クーくんは片足を開いて手招きしてきた。
……。
あのー、つまり、かかってこいって?
とか考えてたら、クーくんから突進してきたぁ!!??
レディー、ファイト!!




