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1-1: 召喚の儀

始まり始まり~。

私の名前はヤッコ。魔法使いの家系であるリセンダ貴族の生まれ。

リセンダ貴族では、12歳の誕生日を迎える人に、使い魔を授ける儀式を行う風習がある。


そして、私にとっては、今日がその日。


「ヤッコ。お前ももう12歳か。長かったような、短かったような。私は嬉しいぞ」

私の父上が私の頭をなでて、ほほ笑みながら言った。

正直、私もワクワクしてる。私以外の貴族が(たずさ)えている使い魔はみんな強そうなんだもん。

グリフォンだったり、キツネだったり、シャチだったり。それぞれ個性的で、主人と連携して魔法を繰り出す姿はずっとあこがれだった。

特にリセンダ貴族の中で最強と(うた)われているオーガさんの使い魔は、なんとドラゴン!使い魔と並んで立つオーガさんの姿は、魔法使いと使い魔、というより、主従(しゅじゅう)関係を築いたドラゴン使いみたい。

オーガさんのことは、たまに横暴(おうぼう)なところもあるけどカッコいいと思うし、私が目標としている(あこが)れの人だ。


しかし、使い魔は誰でも好きな種族を選べるわけじゃない。

前から聞いている話によると、呼び出した本人の素質に見合った使い魔が召喚されるのだとか。

しかも、最初に召喚された使い魔がどんなに気に入らなくても、2匹目を授かることはできない。

つまり、ドラゴンを召喚できたオーガさんは飛び抜けた素質を持っていたことになる。実際オーガさん自身もかなり強いし、誰と戦っても使い魔の出番無く相手を倒してしまう。

逆に言うと、弱い種族が召喚されてしまったら、本人の素質の無さが露呈(ろてい)することになるのだけれど……。

「ヤッコ、君は我が誇りのあるリセンダ貴族の生まれだ。心配することはない。ヤッコは日頃からの鍛錬(たんれん)の成果もあり、君は非常に優秀だ。君の使い魔も、他の皆と劣ることのない優秀な種族であろう」

私のわずかな心配を察したのか、父上が励ましの言葉をかけてくれた。

「はい。私もこの日を待ちわびていました。結果がどうあろうと(おご)ることなく、日々精進します」

「うむ、その心意気だ。さぁ、前に進むが良い」

父上がそう言って、私の(そば)から離れる。

私の後ろには、この日の為に集まってくれた親戚たち。

ざっと20人くらいだろうか?オーガさんもいるし、私とよく遊んでくれた親戚たちや、よく教えてくれた叔父もこの場にいる。皆、期待の眼差しで私を見ている。

所用(しょよう)でどうしてもここに来れなかった親戚もいるのだけれど、それはもうしょうがない。後で見せてあげよう。

前を向けば、少し歩いた先に大きな魔方陣が描かれていた。父上が展開した、使い魔召喚用の魔方陣だそうだ。

ああ、どうしよう。昨日もドキドキで眠れなかったというのに、今この瞬間、これ以上ないほど胸が高鳴っている。

えーっと……、ここまで来たら、次、何するんだったっけ?

「ヤッコ、両腕を前に伸ばし、目を閉じて、念じるのだ。自分のなりたい姿、理想、そして、これから召喚される使い魔を迎え入れる信念をもって、目を開けなさい」

ああ、そうだった。後ろから父上が助言をくれた。

私は両腕を前に伸ばして、目を閉じた。

自分のなりたい姿、理想。うーん、オーガさんみたいに強くなりたいのはもちろんだけど、私はこの屋敷でいろいろな優しさにも触れてきた。

強くて、優しくて、誰かの役に立てるような、存在。

たとえ多数から称賛されることがなくても、私の手を差し伸べた人の救いになれば、私はたぶん満足。

……なんてね。

えっと、こんな感じで良いのかな?

その時、魔方陣の中心から広がるような疾風が吹き荒れた。

まるで竜巻を思わせるほどの勢いがあったにもかかわらず、至近距離にいる私は何故か平然とその場に立っていられた。

私は過去にも、他の親戚が使い魔を召喚している光景を何度か見たことがあるが、多分その時と同じ光景なのだろう。

そんな時間がおよそ30秒……?うん、体感30秒続き、やがて風は収まった。

いつもなら、もう使い魔は召喚されているはず。目を開ける前だというのに、目の前にいるであろう使い魔の気配を感じる。

ひんやりと冷たい空気が私の肌をなでる。魚介系かな?少なくとも、毛を持つようなキツネやフクロウではなさそう。

イルカ?カメ?同じく毛を持たない種族と言えば……、トカゲ、……ドラゴン!?

そんな淡い期待をしながら、尚且つ胸を躍らせながら、恐る恐る、目を開けた。


「……」


私は思わず目を疑った。


私の目の前、魔方陣の中心にいたのは、ドラゴンでも、トカゲでも、カメでも、イルカでも、フクロウでも、キツネでもなかった。

私が抱えていた唯一の心配事が、現実になってしまった。

期待に満ちていたはずの私の表情は、徐々にその輝きを失い、絶望の色に染まっていった。

「え?」「何だ、あれ?」「どういうこと?」

後ろにいた親戚たちがざわつき始めたのと同時に、私は膝から崩れ落ちた。

「……あっ、ヤッコ!」

即座に父上が駆けつけてくれた。そして父上も、この現状を至近距離で確かめざるを得なくなる。


私の使い魔として選ばれたのは、スライムだった……。

スライムでした。


お読みいただき、ありがとうございます。もし気に入っていただけたなら、評価とブックマーク登録をしてくださるとうれしいです。

感想もお待ちしております。お気軽にどうぞ。

それでは、次話でまたお会いしましょう。

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