歪み
渡しはしないよ
私の…可愛い可愛い愛華
『お父様っ』
「なんだい愛華」
『これお父様の為に摘んできたお花よ』
「ああ綺麗だね愛華」
私に小さな花を一輪手渡す
可愛い可愛い小さな手で
愛華は私の大事な一人娘
誰にも渡しはしないさ
あれから10年
愛華は16歳
高校一年生になった
『ただいま』
「おかえり愛華」
『お父様っ』
まだ可愛い笑顔を私に向けてくれる
「学校の入学式はどうだった?私は出席できなくて悪かったね」
『いいのよ、忙しいんだもの』
少し下を向き、笑顔に戻る
『今日お友達ができたのよ』
「どんな子だい」
『とっても優しくていい人よ』
楽しそうに話す愛華
ああ…なんて可愛いんだ
『生徒会長の弟さんなんですって』
…?
弟さん?
私の聞き間違いだろうか
「お友達とは…男の子なのか?」
『ええそうよ。優香のお友達なんですって』
優香ちゃん…
あの子はいつも…愛華に害を及ぼすね
『お父様もきっと気に入るわ』
愛華…本当に言っているのかい?
私が愛華の周りの男の子を気に入る訳がないだろう
「そうか…じゃあ今度お食事会にご招待しなさい」
『いいのっ?お父様ありがとうっ』
にっこり笑う愛華
その笑顔は…私のものだ
【はじめまして…遠田和樹といいます】
「遠田くんか。座りなさい」
この子が愛華と釣り合うとは思わないがな…
それから他愛のない話をした
二時間程経った頃…
【僕はそろそろ…失礼します】
『あら…帰っちゃうの?』
「愛華、わがままを言うんじゃないよ」
『そう…じゃあお車呼ぶわね』
自然と寄り添い歩いていく2人
愛華…君はお友達と言ったはずだね
私に嘘をつくとは…お仕置きが必要だね
10分程して愛華が戻ってくる
『今日は疲れちゃった。お部屋で休んでくるわ』
「愛華。待ちなさい」
『なあに、お父様』
「遠田くんと…お付き合いしてるのか?」
顔を赤らめはにかむ愛華
『ええ…一週間前に交際を申し込まれて…』
「私に言わなかったのは何故だい?」
『ごめんなさい…言いそびれてしまったのよ』
困った顔をする愛華
仕方ない…
私の手に入らないのなら…
殺 す し か な い な
「まあいいよ。お茶でも飲んで話でもしようじゃないか」
メイドに紅茶を持ってこさせる
その中に睡眠薬を入れる
愛華…君が悪いんだよ
『お父様…一杯いただいたら休んでもいいかしら』
そわそわしている愛華
手には携帯をにぎりしめて
仕方のない子だね…愛華?
一口口に含み、怪訝な顔をする愛華
『お父様…?』
眠りに落ちる愛華
愛華…よく眠りなさい
私の胸で…永遠にね
目を覚ますことのない愛華
手首から流れ出る綺麗な血を風呂の中に溜めた水に混ぜる
ああ…可愛い愛華
綺麗な顔をずっとずっと私に見せてくれ
もう笑いかけてはくれないけど私の側を離れもしない
愛華はずっと私のものだ
それにしても…外が騒がしいな
サイレンの音が響いている
私と愛華の時間を…邪魔しないでくれ