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クシェトラのスクール

 森を抜けると、開けた場所に出た。いくつもテントが張られ、さらにその奥には小さな民家も並んでいる。自然と人の文明が共存した、小さな村がそこにあった。



「ようこそ、ここが私が住む村のクシェトラよ」


「……いいところだ」



 表情に乏しいアナトだが、本当に感動しているようだ。これまでとは違った、目の輝きがある。正直、田舎から出てきたから常識も知らないのか、と思ったが、クシェトラの自然豊かな景色に感動しているところを見ると、そうではないのかもしれない。そんなことを考えていると、テントの前で遊んでいた子どもたちが瑠璃に気付いた。



「あ、瑠璃ー!」


「瑠璃、お帰り!」



 駆け寄ってきた二人の子供は瞬く間に瑠璃を包囲し、ダンスを踊る天使のように彼女の周りを回る。


「ミラ、ゾル。ただいま」


 二人の名前を呼び、その頭を順に撫でると、二人とも心地よさそうな笑顔を見せた。


「早かったね。お仕事は終わったの?」


 活発な印象の女の子、ミラの質問に瑠璃は決まり悪さを覚える。



「えーっと、もう少しかかるなぁ。ところで先生はどこ?」


「分かんない。それよりさぁ、お仕事早く終わらせて一緒に遊ぼうよ!」


「ちょっとミラ。私はまだ仕事中なんだって!」



 子供のペースに巻き込まれそうになる瑠璃だったが、大人びた雰囲気の男の子、ゾルがミラを制止した。



「ミラ、ダメだよ。瑠璃は仕事中なんだって。ほら、僕とあっちで遊ぼう」


「えええ……。うーん、わかったよ。またね、瑠璃!」


「うん。終わったら遊ぼうね」



 子どもたちが去ると、アナトの真っ直ぐな目に気付く。今までとは違った側面を見せてしまったことに、どう思われたのだろうか、と想像すると、なんだかムズムズしてしまった。



「な、なに?」



 また「いいやつ」などと評価されたら、どんな顔をしていいのか分からないではないか。しかし、アナトは平坦な調子で心持ちを口にした。



「いや、子どもが珍しかったから」


「あー、うん」



 そっちか、と瑠璃は安心しながら説明する。



「クシェトラでは、身寄りのない子どもたちを引き取っているの。コーラルでは親を知らない子や事情があって親と離れなければならない子もたくさんいるでしょ? そういう子を見つけたら、できるだけ引き取っていることもあって、他の村に比べたらクシェトラは子どもが多いの」


「なぜ、子どもを引き取るんだ?」


「それはね、放っておけないこともあるけど、私たちがここでスクールを運営しているからよ」


「スクール?」


「そう。子どもたちが勉強する場所」



 それでも釈然としていないアナトに説明を加える。



「子どもに対して、色々な知識を教えているの。コーラルで生き抜くためには、多くの知識が必要でしょ。一般的に必要とされるのは、農業の知識になってくるだろうけど、汚染で土地を失うこともあるから、それだけだと、貧困のスパイラルから抜け出せなくなってしまうパターンもあるわ。だったら、魔力の扱いを学んで、ネットワークの知識もつければ、色々な仕事に就ける可能性もあるし、選択肢の幅が広がる。そのためにも、スクールでその辺りの知識を蓄えてもらうわけ」



 理解してくれたのか、アナトの表情が明るくなる。


「なるほど、訓練の場、ってことか」


 納得するアナトを見て、なぜか瑠璃も嬉しくなった。



「それだけじゃない。子どもたちの成長によっては、コーラルをより良い環境に変えられる技術や事業を生み出してくれることも考えられるの。つまりは、コーラルの未来のためにも、子どもたちに私たちの知識を共有しているってこと」

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