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気に入らない想い

瑠璃を包んでいた青い光が空間に溶けて消えると、祈りを捧げるように膝を付いていたが彼女が立ち上がった。


「行きましょう。汚染犯は時計塔の下にいる」


三人はヤクシジと一緒にトラックへ乗り込み、アキーバに戻る。その途中で、瑠璃は汚染犯の目的を語った。トラックを運転しながら、瑠璃は荷台に座るアナトの表情を窺うが、彼は流れる景色を眺めるばかりで、何を考えているのか少しも分からない。


「なるほどねー」


代わりに、というわけではないが、相槌を打ったのは翡翠だ。



「強度な電子ロックを解除するために、アンドロイドのメモリを情報処理装置として利用して、ハッキングを仕掛けるわけだ」


「そういうこと。こんな祈りが成就してしまったら、ノモスは大地を腐敗させてしまう。絶対に食い止めないと」


「コーラルの魔女、腕の見せどころだー!」



狭いトラックの中、控えめに拳を突き上げる翡翠。瑠璃も不敵な笑みを浮かべるが、その前にガーネットが眠る施設について、少しでも情報が欲しかった。



「ヤクシジ、時計台の地下施設について何か知っている?」


「あそこに入るつもりか?」



確認するヤクシジの目には「信じられない」と書いてある。



「だとしたら、気を付けた方がいい。あそこはロステク時代のセキュリティが張り巡らされているらしい。この噂が本当だとしたら、生半可な覚悟で潜入すると、怪我では済まないぞ」


「上等じゃない。で、どんなセキュリティなの??」


「あくまで噂ではあるが……」



ヤクシジが聞いたところによると、攻撃用のドロンやロボットが配置され、ガーネットがいる深層部にたどり着くのは、かなり困難なことらしい。



「ロステクによるセキュリティだとしたら、それは遺跡の復元と同じくらい危険なことだ。それでも、お前たちだけで行くのか?」



瑠璃は頷く。


「正しくない祈りが成就されたら、大地の腐敗が進んでしまう。それは、もちろん止めなければならないことなんだけど……」


どこを見ているのか、瑠璃の鋭い目が何かを貫く。



「何よりも、気に入らないのよ」


「気に入らない、とは?」


「人の意思を捻じ曲げて、自分の想いを遂げようとする、その考えが……私には許せない」



ヤクシジの自宅にトラックを預け、三人は時計台に向かう。正面のゲートには「これより危険エリア。立ち入り禁止」の文字があった。



「……アナトくん。ここからは危険だから、貴方は待っていて」



ロステク時代のセキュリティを抜けるのだ。足手まといを連れて、深層部にたどり着くことは不可能だろう。ただ、アナトと言う男は――。



「いや、行く」


「そうよね、あんたならそう言うと思ってた……」



ここ数日の付き合いでしかないが、嫌と言うほど分かっている。彼は異様に頑固な男なのだ。待てと言われて待てるわけがないだろう。



「翡翠、私はセキュリティの破壊に集中する。貴方はアナトくんの守りをお願い」


「えー? 逆がよくない?? 瑠璃のシャルヴァ(魔力光線)って当たらないじゃーん」



翡翠による悪意のない煽りに頬を引きつらせる瑠璃だが、決戦の前に喧嘩するわけにもいかない。



「私の防御魔法がどんなものか分かって言ってるでしょ? 自分を守ることすら危ういのに、他人のこと気にかけていられないんだから」


「そっかー。瑠璃はシャルヴァ(攻撃)しか脳のないポンコツ魔女だもんね。しょうがないなぁ。アナトくん、翡翠さんが守ってあげるから安心してねー!」



そう言って、翡翠はアナトの腕に自らの腕を絡める。しかも、アナトも微笑みを浮かべてそれを受け入れているではないか。そんな二人を見て、瑠璃は得体のしれない動揺に襲われる。


なぜだろう。あ、分かった。同年代と思われる男女が密着しているところが珍しかったのと、何よりも翡翠が自分以外の人間に、これだけ親しみを見せる姿が初めてだったからだ。


そう言い聞かせ、二人に背を向けてゲートの方を見る。



「さぁ、行くわよ」



まだ二人は腕を組んでいるのだろうか。気になるが、振り返ったら負けな気がして、前だけを見た。


ゲートを開く。これも首だけになった五体のアンドロイドを利用して、ロックを解除したのだろうか。その先は暗闇が伸びていた。出かける前にヤクシジが貸してくれたライトで、アナトが行く先を照らしてくれるが、やや心もとない。


瑠璃は右手に魔力放出補助装置の黒いグローブを装着すると。青く発光する球体を作り出し、自らの傍らで浮遊するように追従させた。狭い廊下を抜けると、やや開けた空間に出て、突き当りに巨大なエレベーターが現れる。



「……ダメね、動かない。翡翠、ハッキングできる?」


「うーん、無理だね。壊れているみたい」


「あっちに階段があるぞ」



アナトがライトを向けた方に、闇の底へ(いざな)うような階段が。どこか心もとないため、別のルートも探してみるが、あれしかないらしい。



「仕方ない。行きましょう」


数えきれないほどの階段を降りるが、まだ底が見えてこない。


「ここで攻撃されたら――」



と翡翠が言いかけた、そのときだった。


『侵入者を発見。攻撃開始』


瑠璃の頭上でマイクを通した音声が。見上げると攻撃ドロンが浮遊し、ボディの中央から銃口らしきものを突き出すところだった。



「まずい! シャルヴァ!」



すぐさま迎撃を試みる瑠璃。事前に翡翠が「当たらない」と指摘しただけあって不安があったが、見事な直撃でドロンは破砕した。得意げな顔で振り返る瑠璃を翡翠は笑顔で迎えるが、すぐに慌てた様子で正面を指さす。


そこに浮遊していたのは、三体の攻撃ドロン。瑠璃はすぐさま魔力光線で応戦するが……。



「ダメ、全部は落とせない!」



撃ち漏らしたドロンが、瑠璃と同じ魔力光線を放つ。瑠璃は回避に成功し、背後にいた翡翠はアナトを背にバリアを展開して攻撃を防ぐ。が、ドロンがさらに二体現れ、三人の足元を攻撃した。


「階段が……崩れる!!」


三人の体は宙に放り出されてしまうのだった。

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