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魔女は何を教えたのか

「……今更だけど、邪教徒って何者なんだ?」



再出発すると、荷台からアナトが質問してきた。どっちが説明するべきか、と二人は目を合わせたが、結局は瑠璃が話すことになった。



「昔から、コーラルはノモスと言う絶対的な信仰対象があったけど、魔女戦争の終盤にオリジナルウィッチのマーユリーが自らの教えを広めた。それが始まりと言われているわ」


「なぜ、邪教と呼ばれるんだ? どんな教えか知らないけど、何を信じるかは人によって違うのは当然だと思うけど」



指摘されてみると、至極真っ当な意見である。コーラルの生活に慣れた瑠璃にしてみると、マーユリー教が邪教であることは当然なので、逆に説明が難しかった。



「あくまで、ニルヴァナ教の視点から邪教ってことなのでしょう。コーラルでは、圧倒的にニルヴァナ教徒が多いから。教徒でない家庭も、生活様式や道徳はニルヴァナの教えに沿ったものが根付いている。そうなると、ニルヴァナ教の他に教えが出てきたら、邪教と捉えられても仕方がないでしょ。でも、何よりも正しくない教えを広めようとしているところが大きいんじゃないかしら」



正しくない教え、という言葉もアナトにしてみると違和感があるらしく、眉を寄せて、困惑しているようだ。だから、瑠璃は先回りして説明を続ける。



「正しくない教え、というのもニルヴァナ教の主観によるかもしれない。けれど、正しくない教えから正しくない祈りが生まれると言われているわ。だから、マーユリー教はコーラルの大地を腐敗させる存在であり、それが邪教と言われる大きな原因になっている、ってわけ」


「だとしたら、僕たちの価値観はノモスによって左右されているみたいじゃないか……」



アナトの呟きは危ういものだった。捉えようによっては正しくない教えに傾いている、と言ってもおかしくないほどに。



「でも、大地を腐敗させる教えを積極的に広める、っていう意味では、マーユリー教は間違っていると思う。いったい何が目的なんだ?」



アナトの考えにほっとしながら瑠璃は説明する。



「昨日も話したかもしれないけど、彼らが何を一番の目的としているのか、そこはよく分からないの。正体不明なところも邪教らしいと言えば、そうなんじゃないかな」


「よく分からないものなのに、信じる人が多いっておかしくないか?」



アナトの続けざまの質問に、さすがの瑠璃も苦しくなり始める。



「それは、ノモスに捧げられないような祈りを持った人たちにとっては、大きな拠り所になっているから、何とも言えないところよ」


「そこはちょっと補足しちゃうけど」



翡翠が唐突に入ってくる。



「マーユリー教徒は、ノモスに拒絶された人だけではないんだよ。魔女戦争時代から信仰を続けるアンドロイドや、そういう家系で生まれ育った教徒だっていう人間もいる。マーユリー最初の教えってやつに感化されて、彼女に賛同した最初の世代と、その末裔ってことだね」


「最初の教え?」


「そう、魔女戦争を終わらせた教え、と言われているんだけど、その内容を知っている人間はほとんどいないの」


「教えが戦争を終わらせた、というのは?」


「……うーん。それは魔女戦争の話になってしまうのだけれど」



翡翠はどこか抵抗感を見せながら、過去に行われた戦争の成り立ちを話した。



「魔女戦争は大きく分けると、ノモスを守る人々が率いるアンドロイドとオリジナルウィッチによる戦いだったんだけど、戦いは泥沼化して、いつまでも続くように思われていたの。だけど、ある日のこと、マーユリーがラストナンバーズに接触して、最初の教えと呼ばれる何らかの情報を伝えた。そしたら、ラストナンバーズはすべてのアンドロイドに戦いをやめるよう指示し、オリジナルウィッチの方も破壊行為を一切行わなくったの。結果、戦いの結末はあやふやになって、ニルヴァナ教を中心とした戦後の時代が始まった……って感じかな」



説明を聞き終えたアナトだが、余計に混乱したようだった。



「最初の教えがどういったものか、正確に知っているのは、オリジナルウィッチとラストナンバーズと呼ばれる、八人の魔女だけってことか……」


「そういうことになるね」



子どものように好奇心が強いアナトだったが、さすがに考えることに疲れてしまったのか、それ以上質問することはなかった。

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