止まらない暴走
瑠璃が駆けつけると、アナトは倒れたままで、翡翠は首を傾げながら飛び去って行くドロンを見つめていた。
「どうなっているの!?」
問いかけると、翡翠は腕を組みながら、右へ左へと首を傾げる。
「よく分からないんだよねー。あと少しで脅威を排除できるはずだったのに、急に動きを止めたかと思うと、二百メートル先に新たな脅威を発見したって、向こうに行っちゃった。私の命令もまったく受け付けないんだよね」
翡翠が指をさす方を見てみる。二百メートル先には何があるだろうか……。
「あっちってスクールがある方向じゃない!!」
距離的にも一致しているはずなのに、翡翠は状況を理解していないらしい。
「スクールに敵が近付いているってこと??」
「違う。向こうで何かあれば、先生が合図を送ってくるはずでしょ!」
「じゃあ、どういうこと??」
「だから……あのドロンは故障して暴走しているの! さっきから言っているでしょ!?」
「……ってことは」
「子どもたちが危ない!!」
二人は走り出すが、その後ろでアナトが起き上がる気配に気付きもしなかった。
「……あれ? 僕は助かったのか??」
アナトがゆっくりと起き上がって辺りを見渡すが、何が起こったのか理解せず、間の抜けた呟きを漏らしていたことも、二人は気付いていないようだった。
瑠璃は見た。青空の下、机を並べて学習に励む子どもたちの姿を。ただ、休み時間なのか藍田の姿がない。
「もう、あのポンコツ教師! なんでいないのよ!!」
すると、ミラとゾルがいち早くドロンに気付いた。
「なにあれー!」
「ロステクだと思うけど……翡翠のものかな?」
好奇心に目を輝かす二人の頭上で、ドロンが音声を発する。
『脅威を発見しました。攻撃を開始します』
そして、子供たちに向けられる銃口。やはり暴走しているのだ。
「まずい! 翡翠、あれ壊すからね!」
「えーーー! でも、仕方ないかぁ……!!」
翡翠の答えがどんなものであろうと、壊すことは決定していた。瑠璃は右手に魔力が集中させ、青いエネルギーに変換する。先程の狙撃よりも距離は近い。今度は撃ち落とせるはずだ。
「シャルヴァ!」
青い閃光が浮遊するドロンを襲う。が、風に舞うようにしてドロンは回避してしまった。
「な、なんで!?」
自信があっただけにショックは大きかったが、翡翠が冷静に解説した。
「さっきの戦いで瑠璃の攻撃を学習したんだよ。もっと切れのある攻撃じゃないと落とせなよー?」
「呑気に言っている場合じゃないでしょ!? あんたが何とかしなさいよ!!」
「いやいや、あれは私のサポートドロンだよ?? 私の攻撃はオートで避けるようプログラムされているんだから」
「はぁ!? だとしても何とかしなさい! 私の師匠なんだから!!」
「人のことを責めるより先に攻撃!!」
「あー、もう……!! シャルヴァ!」
連続して放たれる瑠璃の攻撃だが、ドロンはひらひらとすべて回避してしまう。そして、回避しながら攻撃準備に入った。
「なんでもいい。お願い、当たって!!」
最後の望みを乗せて、魔力光線を放つが、それもむなしく回避されてしまう。もうダメだ。間に合わない。瑠璃の脳裏に子どもたちの無残な姿が過った。
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