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悪役令嬢と、ニンジャと、二人の恥じらい。


「というような経緯があったのでござるが」


 ニンジャは、ミスティカにそう告げた後、さらに説明を重ねた。


 皇国に帰って、ミスティカの傷のことを伏せて二人の少女に対して感じたことを伝えると、ニンジャの父である皇帝陛下が目の色を変えたらしい。


「父上は(それがし)の感じ取ったスイ嬢が秘めたる力を〝天照(あまてら)す巫女〟の力ではと推察したのでござる。どうやら正しかったようでござるな」

「……それがつまり、こちらで言う〝女神の聖女〟ということか」

「左様にござる。父上は、それを王国側に秘匿したまま話を進めようとしたのでござるよ」


 そこで、ニンジャと皇帝陛下は意見を違えたそうだ。


 『隠し事をしたまま話を進めては義に背く』というニンジャと。

 『元々提示された婚約者であり、伝える必要はない』という皇帝陛下。


「見抜けぬは王国側の落ち度と、父上は譲らなかったのでござる」

「……それは、その通りだな」


 カーシィ殿下は、ニンジャの言葉に苦笑する。

 そうして意見が合わないまま、皇帝陛下がこっそり裏で話を進めていることを掴んだニンジャは、自らこの地に赴いたのだと。


「何故そのまま進めなかった? 国益を考えれば、スウィ嬢と婚姻を結んだ方が、皇国としては有益だろう?」

(それがし)はミスチカ・サンの方が好みでござる。そもそも、スイ嬢を得たところで民が豊かになるという訳でもなく。皇国は既にして十分に強大故、巫女を得る名誉以上の意味がないのであれば」


 ニンジャはそこで、ミスティカの方に目を向けてきた。

 相変わらず、その黒い瞳は何を考えているのか読めず、落ち着いた色合いをしている。


「某は、誉高(ほまれだか)さにおいて、ミスチカ・サンがスイ嬢に劣るとは思わぬでござる」


 迷いのない言葉に、カーシィ殿下が深く頷いた。


「そうだな。で、それで何で誘拐することになる?」

「うむ、それに関しては、まず書状を出した後、しばらく状況を見守っていたのでござるが」

「ああ」

「何やらミスチカ・サンが不味そうだったので、とりあえず身柄を確保した次第」


 するとニンジャの返答に、カーシィ殿下が深く眉根を寄せた。


「それにしては、やり方が強引過ぎるだろう! 普通に名乗り出て、場を収めれば良かったのではないのか!?」

「ニンジャに素性を明かして出てこいと言うのでござるか!? なんたる御無礼!」

「ド派手に登場していたように見受けたが!? 顔と名を隠していただけだろう! おかげで外は大騒ぎだぞ!」


 カーシィ殿下が吼えるが、ニンジャは全く動じず、さらに言い返した。


「某は人見知りなのでござる!! 一人二人ならまだしも、あんな大人数のいるところで、顔を明かして名乗りを上げる度胸はないのでござる!」


 全く理屈が分からない。

 黒装束で顔を隠していたら誘拐や会話が出来るのなら、それは人見知りとは言わないのではないだろうか。


「それに、そなたらには頭を冷やす時間が必要であったでござろう? 一旦場を収める手段として最適であると自負しているでござる。ニンニン」

「全く収まってもいなければ、むしろ騒ぎが広がっていると言っているんだ!」

「む。そうなのでござるか?」


 ニンジャがキョトンとして、スウィやイスネの方に目を向けた。

 

「ええと……そうですね。王国がひっくり返るくらいの大騒ぎになっております……」

「皇太子殿下といえど、ニンジャはちょっとやり過ぎですぅ〜!! ムッツリスケベですしぃ〜!!」

「ムッツリスケベは違うでござる。しかしミスチカ・サンが戻れば問題ないのでござろう?」

「問題はあるが、先ほど言った通り父王に説明して正式な手続きを踏めばある程度は収まるだろう。ミスティカ嬢、君の気持ちを聞いていなかったが、それで良……ミスティカ嬢?」


 カーシィ殿下が、こちらにそう問いかけて来たのだが。

 途中で言葉を途切れさせると、訝しげな顔になる。


 すると他の面々も気づいたのか、徐々にこちらに視線が集まってきた。

 

 二人の会話の間、全く口を挟まなかったミスティカは、スウィと体を離して顔の前に扇を立てていた。


「……見ないで下さいまし」


 注目されると非常に困る。

 何せ今、ミスティカは自分でも分かるくらい顔が真っ赤なのだから。


「な、泣いてるの? ミスティカ?」


 スウィの心配そうな声音に、ミスティカは首を横に振った。


「……違うわ」

「でも、耳が……目も潤んでるわ」

「言わないで」


 スス、と扇を上げて目元まで覆うと、次はカーシィ殿下の心配そうな声が聞こえた。


「どうした? クサナギ殿下との婚約に、何か問題が……?」

「……他に、選択肢などないでしょう」


 スウィがカーシィ殿下と婚約を結ぶのであれば、ミスティカが皇国に嫁ぐのは決定事項に等しい。

 ここで断れば、元々の婚約打診を反故にした上に代わりを出さないという形になり、国家関係にカドが立つのは避けれないのだから。


 するとミスティカの発言をどう受け取ったのか、ニンジャが言葉を重ねた。


「某との婚約が嫌であれば、無理にとは言わぬでござるが。国同士の関係を気にしているのであれば……」

「ああもう! 全員鈍いですねぇ〜!!」


 そこで声を張り上げたのは、イスネだった。

 流石に、ミスティカのことを一番理解している侍女……と言いたいところだけれど、今は不味い。


「黙りなさい、イスネ」

「良いですかぁ〜! 今お嬢様はぁ〜!!」

「イスネ」


 しかし、彼女は黙らない。

 多分、多分だけれどイスネは今、悪ノリしている。


 生真面目な顔をしながら、内心ニヤけているに違いない。

 案の定、二度の制止にも拘らず、彼女は『その事実』を告げてしまった。



「昔ニンジャに口付けされていたことを知って、恥ずかしくて真っ赤になっているのですぅ〜!!」


 

 シーン、と音が聞こえるくらいの静寂がその場に訪れた後。


「「は?」」


 と、ニンジャ、カーシィ殿下の声が重なる。

 そして、一息遅れてスウィのちょっと恥ずかしそうな声が聞こえた。


「言われてみれば……」

「……全員、お黙りなさい……」


 恥ずかしい。

 何故、こんな辱めを受けなければならないのか。


 ミスティカは扇を断固として下さないまま、言葉を重ねる。


「と、殿方に、唇を奪われたのなら……!! その方に嫁ぐ以外の選択肢など、ある筈がないでしょう!! もう! もう!!」


 知らない間に。

 それも、カーシィ殿下とイスネの見ている前で。


「こっちを見ないで下さいまし!!」

 

後一話で、第一話エピローグです♪


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