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悪徳令嬢は奸臣に無双する フェーズラッド編  作者: 如月いさみ


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10/16

その10

 シャール・トンプソンから意外な話を聞いたフィオレンティーナであった。

 が、最優先の問題はフェーズラッドの現状を回復することである。


 フィオレンティーナは暫く沈黙を二人で守った後にふわりと風が流れると己を取り戻したように

「それで、私はどのようにお力になれば良いのですか?」

 と聞いた。

「何かのために私のような人間をサラアさんを通じて侍女にしたのでしょ?」


 シャールは頷くと

「取り合えず、食事を済ませてしまおう」

 と言い、綺麗に詰められているサンドイッチを手にした。

「フィオレンティーナ、お前も食べろ」


 フィオレンティーナは笑むと

「ありがとうございます」

 と答えた。


 館の中では『気難しい』と称されているが恐らくこれからわかるだろう策を講じるために注意深くなっているからそう見られているのだろうとフィオレンティーナは感じた。


 そうでなければ己の弁当を『一緒に食べろ』とは言わないだろう。


 風が流れ、湖面の上を揺らしていく。

 フェーズラッドの王宮が燃えて恐らく王都では大変なことになっているだろう。

 なのにそれを感じさせない落ち着きようである。


 二人が食べ終わると少しして馬に乗って三人の若者がやってきた。

 何れも20代前後の若い青年でフィオレンティーナは彼らを前にシャールから紹介を受けて頭を下げながら

「恐らく全員が侯爵子爵などの息子ね」

 と心で呟いた。


 シャールは三人の左側の青年から

「こいつがアンダーソン侯爵の息子のジミーだ」

 その隣がロドリゲス男爵の息子のマーティー

「そして、こっちがホール子爵のミラーだ」

 と告げた。


 ジミー・アンダーソンは綺麗に一礼し

「見たらわかると思いますが背は低いですが武術は一番優れています」

 年齢も一番年上なので

 とにっこり笑った。


 マーティー・ロドリゲスは笑いながら

「俺は武術よりは開発などが得意でね」

 と告げた。


 最後のミラー・ホールは眼鏡を軽く押し上げて

「俺は雑用で」

 とさっぱり告げた。

 が、それにシャールは

「ミラーは計画を立てるのが上手いのでフィオレンティーナには俺とミラーが立てた計画の伝達を頼みたい」

 と告げた。

「俺たちは今王都を占拠して王に成り代わろうとしている裏切り者の宰相ワルダーを倒してフェーズラッドを安定させようと思っている」


 フィオレンティーナはそれに

「しかし、その計画に皆さんの父親である領主が入っていないのは何故かしら?」

 と聞いた。

「トンプソン子爵を見れば何となくの想像はできますけど」

 領主で宰相に逆らおうとしている者がいないか

「ほとんどいないか」


 それに彼らは顔を見合わせた。

 フィオレンティーナの言う通りだからである。


 フィオレンティーナは業と

「と言うことは、フェーズラッドの王は臣下や民に良く思われていなかったということではないのでしょうか?」

 つまり君主として問題があったと

 と告げた。


 それにミラーが腕を組むと

「それは違う」

 我が領民はいま動揺しているし王の身を案じている

「それに父は口にこそ出さないがワルダーに関して良く思っていない」

 ただ父はオズワンドと組んでいるワルダーに逆らうと全てを失うと思って逆らないでいる

 と告げた。

「今まで王がフェーズラッドを戦乱のない国にしてくれていたので何を差し置いても戦いを避けようとしている」

 臆病と言えば臆病だが


 それに全員が視線を下げた。


 ジミーはフィオレンティーナを見ると

「俺たちはそれでもこのまま何もしなければ領民も所領も全てが恐らくオズワンドの好き勝手にやがてはされるだろうと思って立ち上がる決意をしている」

 王都を奪還して王と王女に戻っていただくつもりだ

 と告げた。


 マーティーは肩を竦めながら

「我々が奪還しても王でなければ納められないから」

 別に俺たちが成り代わろうと思って立ち上がるわけではない

 と告げた。


 フィオレンティーナは彼らを見回して微笑むと

「トンプソン子爵は風見鶏だと思っておりました」

 と言い、全員がぎょっと彼女を見た。


 ズバッと言ってくるのにびっくりしたのである。


 フィオレンティーナは真っ直ぐ彼らを見つめ

「皆様の決意と皆様のお心には尊敬いたします」

 フェーズラッドはまだ地に落ちていないと思います

 と言い、一旦言葉を切ると

「ですが」

 恐らく皆さまだけだと計画は絶対に失敗いたします

 と言い切った。


 それにシャールは驚いて

「何故!?」

 と聞いた。


 ジミーやマーティーもフィオレンティーナを見つめた。


 フィオレンティーナは冷静に

「皆様は『いつか』領主となり実権を手に入れるでしょう」

 ですが今はまだ何の力もない

「つまり4人だけが剣を持って大軍と戦うことになるということです」

 現実はそうです

「兵を動かす力がないということです」

 と告げた。


 ミラーは大きく息を吐き出すと笑みを浮かべた。

「貴女は聡明な女性だ」

 しかも現実を見る力もある

「尚且つ真実を口にする勇気もある」


 それに三人はミラーを見た。

 ミラーはフィオレンティーナを見ると

「では、貴女はどうすれば良いと?」

 と聞いた。


 フィオレンティーナは微笑んで

「皆様の父上を動かすしかありません」

 そして動かすための策を練るべきです

 と告げた。

「策はあります」


 シャールはフィオレンティーナを驚いた表情で見つめた。

最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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