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第19話 彼氏っぽい

「七瀬さん、よかったら俺たちと一緒に文化祭回らない?」

「すいません、えっと、約束している人がいるので......」

「えー、いいじゃん。それならその子が来るまでちょっと一緒に回ろうよ」


 11時過ぎごろ、当番を終えた俺は心陽と待ち合わせていた場所に向かった。

 そして着いてみたら心陽は男2人に絡まれていた。


 制服を着ているので外部の人ではないが、なんというか変わらない。

 聖女様はいつどんな時でも人気のようだ。

 みた感じ同級生ではないだろう。先輩だろうか。


「お待たせ、心陽」などと言って退けさせようと考えていた時だった。


「は、離してください......!」


 1人が心陽の手首を掴んだ。


「別にいいだろ〜。俺らと文化祭回ろうぜ」


 流石にボディータッチは無しだろ。


 俺は急いで駆けつけて、掴んでいる男の手首を掴み返した。


「ゆ、柚李くん......」

「あ? なんだよ、お前? 邪魔すんなよ。何? 助けようとか思ってる訳? 自意識過剰すぎ......」

「流石にボディータッチは無しだろ。それに怯えている顔が見てとれないのか?」


 少し語気を強めて睨み返せば、心陽の手を離して俺の手を振り解いた。


「もう行こうぜ、冷めた」


 そうして男2人は去っていった。

 あまり大事にしたくなかったのだろう。


 はぁ、と俺は安堵のため息をついた。

 

「心陽、大丈夫か? 掴まれた手首痛まないか?」

「はい、大丈夫です......助けていただいてありがとうございます......ですがちょっと怖かったです」

「ごめんごめん」


 そう言うと、心陽はむうっと頬を膨らませた。


「(まあ......かっこよかったですけど)」


 何を言ったのかは聞き取れなかったが頬を赤らませて視線を逸らしている。

 何度目だろう。うん、それは心臓に悪いからやめてほしい。


「じゃ、じゃあそろそろ回るか」

「はい、そうですね」


 一難あったものの、俺たちは文化祭を一緒に回り始めた。

 もうすぐお昼ということでまず最初に外の屋台から回ることにした。

 

 しかし、思っていたよりも一般客含め、人が多い。

 これでは逸れてしまうだろう。


 俺は心陽に手を差し出した。


「逸れるといけないし、手繋ぐか」

「て、手ですか? えっと、そ、そうですね」


 心陽は俺の手を握った。

 

 心陽の華奢な手からは暖かい感触が伝わってくる。


「柚李くんの手、冷たいです」

「まあ、かき氷作ってたしな」

「なら私が温めてあげます」


 心陽はぎゅっと再度俺の手を握った。


「ほんじゃあ最初どこ行く?」

「そうですね......あ、射的やってみたいです」

「射的か、いいな」


 どうやら目に見えるところにあるようで、心陽は指差した。


 人混みの中、移動すると家族連れで射的をしている人たちがいた。


「やったやった! お母さん取れたよ〜」

「はい、どうぞ。あとこれお姉ちゃんからのおまけね」

「え? いいの!? ありがとう! お姉ちゃん、じゃあね、バイバイ!」

「ばいばい」


 その様子を見て聖女様に近いようで違う笑顔をした。


「なんだか微笑ましいですね。家族に囲まれて暮らすって幸せなんですね」


 心陽の母の一件もあちゃので羨ましさに近いものを覚えてしまうのだろう。

 心陽は俺の手を少し強く握った。

 

「さて、では順番も来ましたしやりましょうか」

「いらっしゃいー、色んな景品あるからね......って七瀬っちじゃん。こんちゃー」

「こんにちは。射的の店を出していたんですね」

「うん、そうそう......ってそっちはカレピ? 案外イケてんじゃーん」


 射的の屋台の店主が誰かと思えば前に心陽に絡んでいた『The ギャル』だった。

 しかしこの前のように心陽が苦戦している様子は見られない。いつのまにか仲良くなったのやら。

 

 さっき子供の相手をしていたのもこのギャルだろう。

 やはりギャルだから嫌な人と決めつけるのは間違っているのだろうが......少しトラウマがあるから苦手だ。


 ただ、イケてると言われたのは素直に嬉しい。いや、彼氏ではないけども。


「か、彼氏じゃないですよ! 友達ですっ! 友達ですから!」


 心陽は俺の手を離して全力否定した。

 ......そこまで否定されると普通に心にダメージがくるが、まあ実際友達なので何も間違ってはいない。


「ふーん......あ、なるほどね」

「は、早く射的やりましょう! ゆず......つ、調月くん!」

「お、おう」

「ほい、まいど〜」


 俺たちはギャルにお金を手渡し、銃を手に持った。


 射的は得意な方だ。なんて言ったってゲームで鍛えられた腕がある......。

 と言っても最近はリアルの方で充実してきているのでそんなにゲームはしていないのだが。


 狙うなら1番の景品だ、いわば特賞だ。

 狙いを定めて......引き金を引く!


 しかしかなり大きく、重いので、狙い定めた位置に当たりはしたが、倒れなかった。

 もう一度打ったもののやはり微動だにしない。......無理ゲーか。


 コルクは残り一発。


 一方、心陽はというと、コルクがもうなかった。


「......うう、一度も当たりませんでした?」

「何を狙ってるんだ?」

「ぬいぐるみのキーホルダーです。ただ結構小さくて......」

「あれ、俺が取ってもいいか?」

「え? 良いですけど......調月くんは良いのですか?」

「俺は狙いの商品があったけど動かなかったから諦めた。まあ任せとけ」


 さてと、啖呵を切ったからには落とすまではいかなくても当てなければカッコ悪いよな。


 俺は最大限まで集中力を高めた。銃の位置を調節し、標準を合わせる。

 そして引き金を引いた。


『パン!』


 見事俺の予想通りの軌道でコルクが飛んでいき、ぬいぐるみのキーホルダーに当たった。



「す、すごいです、調月くん。一発で当てるなんて......」

「まあ、たまたまだ」

「すごいじゃん。はい、これ景品」

「貰ってもいいですか?」

「もちろん、七瀬のために取ったんだし」


 そう言うと心陽は満面の笑みを浮かべた。


「ありがとうございます!」

 

 ......やっぱりこの笑顔には慣れない。


「じゃあ次の店行くか」

「そうですね、あ、ありがとうございました」

「はーい。七瀬っちじゃあね。お幸せに〜」


 ......お幸せに?


 少し言い回しに違和感を覚えたが、深く気にすることなく俺たちは屋台を回った。


 


 


 


 




 



 


 


 


 




 



 

このギャルはモブキャラです。多分。

そういえば気になってる子と話す時に将来のこと、例えば子供は何人作りたい、とか話すと自分のことを意識してもらえるのだとか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 未完結で終了ですか?面白かったのになあ。残念。
[良い点] 結構ハマるストーリーですね! [一言] 続きはもう書かないのでしょうか?
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